妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

月組公演『応天の門』の事前予習用に、原作から主な登場人物をまとめて紹介~!!

今日は、壽々(じゅじゅ)です。


今回は、今までの原作の登場人物紹介を
何回かに分けて掲載していた記事を、観
劇の事前予習をする方のために、まとめ
て掲載することにしました。
なお、原作の方の人物紹介ですので、宝
塚の舞台に登場する人物とは、多少違う
ということをご了承ください。
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まずは、主人公の菅原道真です。
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まず、ウィキペディアの記事から引用し
ましょう。
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文章生。長谷雄からは「菅三殿」(菅原
家三男の意)、屋敷の女房からは幼名の
「阿呼さま」と呼ばれている。普段は冠
を被っているため隠れているが、病で亡
くなった兄・吉祥丸に負わされた傷痕が
額にある。
学問に秀で洞察力もあるため、業平に度
々事件への協力を頼まれている。おびた
だしい数の書籍を父・是善と共に所蔵し
ている。権謀術数はびこる都の政に嫌気
が差し、遣唐使として大陸に渡ることを
目標に精進している。一度聞けば大抵の
ことを記憶するなど秀でた才を持ち、大
学寮にはほとんど通っていない。貴重な
書物・墨に目がない。人と馴れ合うこと
が嫌いなため、屋敷に閉じこもりなこと
が多い。また、年若いため貴族社会の理
不尽さには憤りを感じている。リアリス
トで物の怪・怨霊などの迷信は全く信じ
ていない。厄介事に巻き込まれるのを嫌
い常に相談者へ突っ慳貪な対応をとるが、
頼られることや尊敬されること感謝され
ることに対しては度々喜びを隠し切れな
いでいる。相手の心理を汲み取り応じる
優しさもある。
兄の死の原因となった藤原家を憎んでい
る。是善に抗議するために数日間断食し
たり、現実逃避のために出奔したりする
など頑固で行動的なところもある。
普通の貴族と違い民衆とも分け隔てなく
接するが、家柄のせいで下級貴族や貴族
でない人間からは特別視されてしまい葛
藤している。
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ずいぶん長い人物紹介ですが、ちょっと
解説が必要かと思います。


まず、「文章生」です。「もんじょうし
ょう」と読みます。
原作の単行本の第1巻に解説が載ってい
ます。
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この時代、貴族が学ぶべき学問が定めら
れていて、そのトップに位置するのが
「紀伝道(きでんどう)」なのです。紀
伝道は中国の歴史と漢文とを学ぶ学科で、
教員は2名の文章博士。学生は文章生
20名、擬文章生20名(文章生の予備
生)という構成になっていました。
多くは貴族の子弟が試験(大学寮の寮試)
を受けて合格すると、擬文章生になりま
す。勉学を積んだ擬文章生がまた試験
(式部省の省試)を受けて合格すると、
文章生になります。このとき、成績優秀
者は、給料学生と呼ばれて、給料が支給
されました。また特に優秀な2名が文章
得業生になり、秀才試(方策試・対策と
も)を受験する資格を得ます。これは方
略策(国家戦略)を作成させる試験で、
優秀な答案を作成した者は官職に任じら
れ、栄達への道が開かれたのです。
==================
ということです。


この『応天の門』に登場する菅原道真は、
文章生ですので、実際の菅原道真に照ら
し合わせると、18歳~23歳の間の話
であるということになります。
なお、この『応天の門』は、東京大学史
料編纂所教授の本郷和人氏が監修してい
ますので、創作部分もかなりありますが、
かなり、史実に沿った作品になっていま
す。


学友である紀長谷雄から「菅三殿」と呼
ばれるのは、菅家の三男であるためで、
上の二人の兄はこの物語の時点では、既
に死んでいます。
ただ、吉祥丸という菅家の長男は、道真
の回想の形で出てくるので、その時の話
は、宝塚の舞台でも出てきます。


「兄の死の原因となった藤原家を憎んで
いる。」と書いてありますが、第14話の
「道真、明石にて水脈を見る事」では、
業平から「藤原が憎いか?」と訊かれ、
「…憎いのは藤原じゃありません。父
でもない。私には何も出来ないことが憎
い。」と答えています。


なお、原作漫画の単行本では、冒頭で
菅原道真を、
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学者を多く輩出する菅家の子息。文章生
という宮中で学問の研究をする職につい
ているが、もっぱら自宅の書庫にひきこ
もり唐からの書物を読みふけっている。
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と紹介されています。
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次に、在原業平です。
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まず、ウィキペディアの記事から引用し
ましょう。
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左近衛権少将。
都の守護を務める役目柄、都で起こる怪
奇事件の捜査に当たる。好色漢として有
名で、数々の貴婦人と浮名を流している
が、本人はかつて関係を持っていた高子
のことを忘れられないでいる。 白梅から
好意をもたれておりそれを度々利用して
いるが、宣来子からは警戒されている。
女性の香を聞くだけで誰のものか分かる
特技をもつ。根っからの人たらし。 血筋
としては平城天皇の孫であり、反藤原派
との宴会を度々ひらいている。
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菅原道真と比べると、随分、短いです。
菅原道真と同様に、ちょっと、解説をし
ます。


「都の守護を務める役目柄」とあります
が、原作の人物紹介では、在原業平は、
「検非違使(けびいし)(現在の警察)
を率いて都の安全を守る役職に就く。」
と書かれています、また、宝塚の作品紹
介にも、「検非違使の長・在原業平」と
書かれています。検非違使の長官は「別
当」といいますが、原作には業平が「別
当」であるという記載はありません。
ウィキペディアでも、実際の在原業平が
検非違使の別当であったという記述はあ
りません。
ただ、その兄の在原行平という人物は、
検非違使別当になっているので、業平=
検非違使の長は、この人物になぞらえた
原作者の創作の可能性があります。
そうでないとしても、推理小説によくあ
る警察が私立探偵に謎解きをしてもらう
という構図になっているのは、確かです。


原作の単行本の冒頭の人物紹介では、
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平城帝の血を引き、都中に名を馳せる歌
人。無類の女好きとしても知られる。検
非違使(現在の警察)を率いて都の安全
を守る役職に就く。
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と書かれています。
確かに、多くの女性と関係があって、原
作漫画の単行本第13巻の終わりの方に、
女性の所へ業平が出掛ける場面があるの
ですが、次々と断られて「これで7人目
だぞ」と言う所があります。つまり、少
なくとも7人の女性と関係があるという
ことです。


ところで、この話の時の業平の年齢です
が、原作では文章生である道真の20歳年
上ですから、40歳前後ということになり
ます。


「本人はかつて関係を持っていた高子
のこと忘れられないでいる。」とありま
すが、「関係を持っていた」は、ちょっ
と誤解される言葉で、原作に従い、正し
く言うと「駆け落ち未遂した」です。


「高子」というのは、藤原高子のことで、
左大臣藤原良房の姪で、清和帝に嫁ぐた
めに父親の良房によって屋敷に幽閉され
ている女性です。


「白梅」は、第4話、第5話の「都を賑わ
す玉虫の姫の事」で、道真、業平と出会
った森本の翁に仕えた女房で、森本の翁
の死後は、菅家に仕えています。業平の
ことを慕っています。


「反藤原派との宴会を度々ひらいている」
と書いてありますが、原作に出てくるの
は、1回だけです。その宴会に道真を招
いて、道真が中座したことで、ちょっと
二人の仲が気まずくなる時があります。
その時に、「百鬼夜行」の事件が起きる
ので、この時は、業平ではなく、藤原常
行が業平の代わりに、道真と一緒に「百
鬼夜行」に出会うことになります。


このあたり、宝塚の舞台では省略してい
ます。


なお、在原業平は貴族ですから、基本は
移動は、牛車になるのですが、舞台上に
牛を登場させる訳にもいかないので、徒
歩で登場です。
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次は、昭姫です。
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ウィキペディアでは、昭姫のことを次の
ように紹介しています。
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都の遊技場を束ねる女主人。唐からやっ
て来た渡来人で唐物に詳しいため、唐物
が関わる事件の際には道真が相談に訪れ
る。以来、何かと頼りにされる。
長谷雄のことを「御得意様」として懇意
にしているが、長谷雄からは苦手意識を
持たれている。元は、唐の後宮の女官で
あった。
==================
まず、昭姫は、実在の人物が数多く登場
するこの作品において、架空の人物です。
ただ、菅原道真が昭姫の名前を聞いて、
「ずいぶん俗な昭姫がいたものですね」
と言っているように「昭姫」自体は、実
在の人物です。
本当の名前は「蔡琰(さいえん)」。字
(あざな)が「昭姫」で、「中国後漢末
期から三国時代にかけての詩人。才女の
誉高く、博学かつ弁術に巧みで音律に通
じ、数奇な運命を辿った。」とあります。
(「三国時代」とは、中国が、「魏」
「呉」「蜀漢」の三つの国に分かれて争
った時代です)


なお、原作に出て来る「昭姫」の本当の
名は「昭(ジャオ)」です。


『応天の門』に出てくる「昭姫」も、博
識で、唐から来た人ですから、特に、唐、
中国関係の知識があり、また、「昭姫」
を名乗るほどですから、才女でもありま
す。また、商売上、市井の事情にも詳し
く、従って、道真や業平が事件解決をす
るのに欠かせない人物となっています。
なお、ウィキペディアには、「都の遊技
場を束ねる女主人」とありますが、これ
は、『応天の門』の最初の話で道真と昭
姫が「双六」の賭け勝負をするからであ
ってどちらかというと、唐渡りの品を扱
う女店主、です。遊技場の方は副業のよ
うで、最初の「双六」の場面にしか出て
きません。


なお、上の「双六」とは、原作の解説に
よると、「盤双六」というもので、二人
で遊ぶボードゲームであり、古い形のバ
ックギャモンの一種。盤上に配置された
双方15個の石をどちらが先に全てゴール
させることができるかを競う、というも
のです。
盤双六はゲームの進行に際してさいころ
を使用するので、偶然の要素が大きいた
め、賭博に用いられたようですが、高い
戦略性を帯びた頭脳ゲームでもあったよ
うです。
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次は、紀長谷雄です
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まず、ウィキペディアには、こう書かれ
ています。
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業平の妻の縁者で、道真の学友。博打や
女に目がなく、文章生試験にも消極的で
落第し続け、度々問題を起こしては道真
に助けを求めているため、道真には突き
放された物言いをされることが多い。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
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道真の親友であり、業平の親類でもある
青年。気は弱いが知りたがりのため、よ
くトラブルに巻き込まれている。
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どちらも、余り、いい書かれ方をしてい
ないのですが、まあ、軽薄というか、調
子がいいというか、臆病なくせに知りた
がりというか。この人物の存在・行動・
キャラがこの作品の話を面白くしている
面があります。


ウィキペディアの解説には、「道真の学
友。」とありますが、道真と同じ大学寮
に在籍しています。
「文章生試験にも消極的で落第し続け」
とあって、いかにも劣等生のような書か
れ方(実際に、文章生である道真にはそ
う言われていますが)をされていますが、
一応は、大学寮の寮試を受けて合格した
擬文章生(定員20名)です。
ただ、真面目に勉強せず、遊んでばかり
います。


「博打や女に目がなく」は、確かに、長
谷雄は、業平ほどではないですが、女に
は目がありせんが、博打の方は、昭姫の
店で「米二百石」の借財を負ってからは、
懲りたようで手を出していません。


ところで、紀長谷雄は実在の人物です。
本当に、この原作に描かれているような
人物だったのでしょうか?
宝塚の舞台とは関係ないですが、紀長谷
雄はどんな人物だったのかをウィキペデ
ィアから引用します。
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 平安時代前期の公卿・文人。官位は従
三位・中納言。『長谷雄草紙』の主人公。
 若い頃より学問を志し、18歳にして文
章をつづることを会得したが、有力な援
助者はなく、紀伝道の名家であった菅原
氏・大江氏などとは異なり、学問を指導
し取り立ててくれる人物にも恵まれなか
ったという。
 貞観18年(876年)32歳にしてようや
く文章生に補せられ、字を紀寛と称した。
 元慶5年(881年)文章得業生となるが、
このころ長谷雄は次第に菅原道真の人柄
に引かれ、道真と同門の党を結ぶように
なった。
 元慶7年(883年)対策に丁科で及第し
て三階昇進し従七位下に叙せられた。そ
の後、讃岐掾・少外記を経て、仁和4年
(888年)従五位下に叙爵するが、道真
の推挙によるものとも想定される。
 宇多朝前半は、図書頭・文章博士・式
部少輔を歴任する。寛平6年(894年)に
従五位上・右少弁に叙任されると、寛平
7年(895年)正五位下、寛平8年(896年)
従四位下と宇多朝後半は急速に昇進を果
たし、この間の寛平7年(895年)に式部
少輔・大学頭・文章博士を兼ねて三職兼
帯の栄誉に浴し、寛平9年(897年)には
式部大輔兼侍従に任ぜられた。
 長谷雄の知識や政務能力、そして人柄
は宇多天皇からも早くから嘱目されてお
り、宇多上皇が醍醐天皇に与えた御遺戒
の中でも、藤原時平、菅原道真、藤原定
国、平季長と並べて、長谷雄を「心をし
れり、顧問にも、そなわりぬべし」ある
いは「博く、経典に渉り、共に大器なり」
と評して推挙されている。
==================
文章生になった年齢は32歳と遅かったも
のの、ちゃんと、文章得業生にもなって
いて、かなり優秀な人物であったことが
伺えます。
なお、『長谷雄草紙』には、長谷雄は双
六の名手として、朱雀門の鬼と双六勝負
をする話が載っており、原作漫画は、こ
の逸話を基にして書いたものと思われま
す。


ということで、原作漫画は、実在の人物
をそのままでなく、上手く利用して、原
作者が創作しているのだということが分
かります。
==================
次は、白梅です。
==================
まず、ウィキペディアには、こう書かれ
ています。
==================
森本の翁に仕えた女房。翁の元で漢学を
学び、翁の死後は道真に仕える。識字に
長け、道真父子の書倉の整頓・管理を任
されている。玉虫姫の一件を業平から知
らされている高子から玉虫姫とも呼ばれ
ている。宣来子とは読書を通じて友人関
係となり、時には道真との恋の相談も聞
く。他人の筆跡を真似る特技がある。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
==================
都を騒がせた「玉虫姫」事件で道真たち
と出会った女房。道真にその学才を買わ
れ、事件の解決と共に菅原家に仕えるこ
とに。
==================
「森本の翁」は、原作の第4話、第5話
の「都を賑わす玉虫の姫の事」に出てく
る盲目の老学者です。その孫娘が玉虫姫
です。
 この玉虫姫の話は、宝塚の舞台には出
てきません。玉虫姫はとっくに亡くなっ
ていて、森本の翁に仕える女房達が役割
分担して、玉虫姫を生きているかのよう
に見せかけます。その一人が白梅で、玉
虫姫に寄せられた恋文の返書を書く役割
をしていました。その森本の翁が亡くな
って、白梅は、道真に学才を買われて、
菅原家に仕える事になります。
で、菅原家は学者の家柄ですから、書庫
に沢山の書物があります。白梅は、その
書庫の管理を任されている、という事で
す。


「高子」とは、藤原高子のことで、昔、
在原業平と駆け落ち未遂した人です。
藤原良房の姪で藤原基経の妹で、清和
帝の許に入内する予定になっています。
この駆け落ち未遂の話は、回想の形で宝
塚の舞台に出てきます。


「宣来子」とは、島田宣来子で、道真の
師の島田忠臣の娘で道真の許嫁です。
宣来子も忠臣も宝塚の舞台には出てきま
せん。


で、白梅ですが、架空の人物です。
ただ、なぜ、「白梅」なのか?
これは、お気づきでしょう。「飛梅」で
す。


「飛梅」は、太宰府天満宮の神木として
知られる梅の木の名称で、樹齢1000年を
超えるとされる白梅です。「本殿前の左
近(本殿に向かって右側)に植えられて
おり、根本は3株からなる。」
とのことですが、私は、一度だけ、太宰
府天満宮に行ったことはあるのですが、
「飛梅」は見たかな?記憶にないです。


「飛梅伝説」とは、こんな話です。
==================
左大臣・藤原時平との権力争いに敗れた
菅原道真公は、突然の左遷によって、家
族との別れを惜しむ間もなく、京都を離
れることになります。その際、梅をこよ
なく愛していた菅原道真公は、自宅にあ
った梅の木に別れを告げる歌を詠みまし
た。


「東風吹かば 匂ひおこせよ 梅の花 
あるじなしとて 春な忘れそ」


「東風(こち。春風のこと)が吹いたら、
香りをその風に託して大宰府まで送り届
けておくれ、梅の花よ。主である私がい
ないからと言って、春を忘れてはならな
いよ」という意味のこの和歌には、菅原
道真公の梅に対する愛情と、梅の木を置
いて行かなければならない悲しさや寂し
さが込められています。その想いは梅の
木にも伝わっていたようで、主とともに
ありたいと願った梅の木は、一晩にして、
都から菅原道真公が住む大宰府の屋敷の
庭へ飛んできたと言います。
==================
紀長谷雄とこの白梅が脇役となって、道
真と業平に関係することで、話が面白く
なっています。
==================
次は、藤原基経です。
==================
まず、ウィキペディアには、こう書かれ
ています。
==================
左近衛中将、参議。良房の甥で、高子の
同母兄。良房の養子となり、英才教育を
受け育ち朝廷内の実力者となる。
良房同様に冷徹な人物で、兄の国経や遠
経のことまで内心見下しており、高子か
らは良房以上に恐れられている。良房同
様、高子のことで業平を警戒している。
幼少期に吉祥丸と面識があり、道真へも
興味を持っている。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
==================
良房の養子で高子の兄。良房の補佐をし
ながら宮中の勢力に目を光らせている。
島田忠臣を配下におき、善男暗殺を謀る。
==================
「良房」は、藤原良房で太政大臣。藤原
北家を率いる朝廷の実力者で、清和帝の
外祖父です。


「高子」は、藤原高子で良房の姪です。
清和帝に嫁ぐために良房によって屋敷に
幽閉されています。過去に在原業平と駆
け落ち未遂をしています。


「国経」「遠経」は、藤原国経、藤原遠
経で、基経の異母兄です。


「良房同様、高子のことで業平を警戒し
ている。」と書かれていますが、基経の
方が業平より官位が上ですので、むしろ
過去の駆け落ち未遂の件で、業平に「釘
を刺している」と言った方がいいでしょ
う。


「吉祥丸」とは、菅原道真の兄で、ある
事件で亡くなっています。


「島田忠臣」は、道真の師匠ですが、宝
塚の舞台には、出てきません。代わりを
「黒炎」が務めています。


「善男」は、伴善男で正三位の大納言で
す。反藤原氏勢力の筆頭で、原作では、
基経に毒殺されそうになります。
舞台では、藤原常行がその代わりになり
ます。


なお、この基経の長男が藤原時平で、菅
原道真を讒言で大宰府へ左遷、失脚させ
た(昌泰の変)とされる人物です。


「鬼退治」どころか、道真が退治されて
います。
==================
次は、藤原高子です。
==================
ウィキペディアには、こう書かれていま
す。
==================
良房の姪。良房の権勢拡大の策として、
年若い帝に入内することになっている。
かつて業平と駆け落ちしたことがあり、
今でも業平に想いを寄せ、時折文を送り
合っている。大胆な行動を躊躇いもなく
起こすことがあり、また道真の性格を見
通して物で釣って協力させたことなどか
ら、道真から「強烈な姫」と評される。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
==================
良房の姪。帝に嫁ぐため、良房によって
屋敷に幽閉されている。基経の同母妹。
過去に業平と駆け落ち未遂をしたことが
ある。
==================
私は、海乃美月さんが藤原高子かと思っ
ていましたが、月組娘役NO.3の天紫珠
李さんが藤原高子役になって、海乃美月
さんは昭姫役になりましたね。
あれだけ、昭姫の活躍する場面が多いの
で、これは仕方がないですね。
なお、月組娘役NO.2の彩みちるさんは、
菅原家に仕える女房の白梅役です。これ
は、主人公が菅原道真だからでしょう。
やはり、登場場面が多いからだと思いま
す。


「良房」は、藤原良房で太政大臣。藤原
北家を率いる朝廷の実力者で、清和帝の
外祖父です。


「年若い帝」は、清和帝で、良房の娘の
藤原明子の子。原作では、13歳です。


「かつて業平と駆け落ちしたことがあり」
 ←原作の人物紹介の方が正しいです。
「駆け落ち未遂」です。


「今でも業平に想いを寄せ、時折文を送
り合っている。」←前半は正しいですが、
後半の「時折文を送り合っている」は、
違うと思います。業平から高子に対して
は、高子が屋敷に幽閉されているため、
外での出来事を時折文で送っているので
あって、高子から業平には、屋敷に物の
怪が現れて、そのことについて、内密に
文を送った、ということです。
で、業平に代わって高子の屋敷に来たの
は、白梅です。


白梅では事件の解決が出来ないので、高
子が希少な壺を割って、白梅のせいにし
て、道真を詫びに来させます。
その時に、「一本御書所の山海経」とい
う貴重な書物と「唐煙墨」という墨の一
級品で道真を釣ったのが、「また道真の
性格を見通して物で釣って協力させた」
の部分です。


で、道真の高子に対する感想が「想像以
上に喰えない姫君だな……」です。
事件解決後に、道真は業平に対して、
「……しかしあんな強烈な姫とは思いせ
んでした。よくあんな方を攫って逃げた
りしましたね」と言います。


なお、ウィキペディアでは、高子の兄の
基経について、「高子からは良房以上に
恐れられている」と書かれていますが、
確かに、高子が基経について、「血を分
けた兄妹とはいえ、私は叔父上より兄上
が恐ろしい」と思っていますが、「恐れ
ている」というよりも、今更、高子に対
して業平について釘を刺す基経のことを
「恐ろしい人物」だと思っているという
ことです。


以上の話は、原作の第7話、第8話の「藤
原高子屋敷に怪の現るる事」に出てきま
すが、宝塚の舞台では、省略されていま
す。
==================
次は、藤原多美子についてです。
==================
ウィキペディアには、こう書かれていま
す。
==================
良相の娘で、常行の妹。父親の画策で高
子を出し抜く形で入内したが、本人はま
だあどけなく従姉の高子を慕っている。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
==================
右大臣・藤原良相の娘で帝への入内が決
まった。常行の異母妹にあたる。
==================
花妃舞音さん、106期生ですが、かなり
推されているようですね。
『今夜、ロマンス劇場で』で、 新人公演
初ヒロインです。
で、『応天の門』でも、藤原多美子とい
う、かなり、重要な役です。


この藤原多美子が清和帝の許に入内する
話が、宝塚の舞台ではメインの話になり
ます。


その話は、原作の第34話~第39話の「藤
原多美子、入内の事」に出てきます。
その前の第33話の途中から話は始まりま
すので、6話強のかなり長い話ですが、
さすがに全部は、出てきません。
ここに「百鬼夜行」が出て来て、藤原多
美子を殺そうとします。
==================
次は、藤原良房についてです。
==================
ウィキペディアには、こう書かれていま
す。
==================
太政大臣。藤原北家を率いる朝廷の実力
者で、今上帝の外祖父でもある。自身と
藤原氏の権勢を強めることに執着し、そ
の妨げになる人間は一族の者であっても
容赦しない。
娘の明子に続き、姪の高子を入内させよ
うと画策しており、かつて高子と関係を
持っていた業平を警戒している。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
==================
藤原北家の筆頭。伴善男と敵対し、太政
大臣として幼い帝の代わりに宮中を牛耳
ろうと目論んでいる。
==================
「藤原北家とは、右大臣藤原不比等の次
男藤原房前を祖とする家系。藤原四家の
一つ。藤原房前の邸宅が兄の藤原武智麻
呂の邸宅よりも北に位置したことがこの
名の由来」だそうです。
ちなみに、他には、「藤原南家」「藤原
式家」「藤原京家」があります。


「今上帝」「幼い帝」とは、清和帝のこ
とです。


「その妨げになる人間は一族の者であっ
ても容赦しない。」←多分、第1話~第
3話の「在原業平少将、門上に小鬼を見
る事」にでてくる藤原親嗣のことかと思
われます。ただ、藤原親嗣は、宝塚の舞
台には登場しません。


「娘の明子」とは、清和帝の母親の藤原
明子です。この人物も、宝塚の舞台には
登場しません。


「姪の高子」とは、藤原高子です。
==================

最後は、藤原常行についてです。
==================

ウィキペディアには、こう書かれていま
す。
==================
良相の息子で、基経とは従兄弟。基経と
同時期に参議に任ぜられたが、身分の低
い女の許へ通うため夜道を微行し"百鬼
夜行"に遭遇。
==================
原作の人物紹介には、こう書かれていま
す。
==================
藤原北家の右大臣・藤原良相の長男。右
近衛権中将として、同い年の従弟である
基経と共に参議に召し上げられる。型破
りな性格だがその本心は……。
==================
「藤原常行」は、「ふじわらのときつら」
と読みます。


「良相」とは、「藤原良相(ふじわらの
よしみ)」で、藤原良房の弟です。


「参議」とは、日本の朝廷組織の最高機
関である太政官の官職の一つで、納言に
次ぐ官職です。宮中の政(朝政)に参議
するという意味で、朝政の議政官に位置
します。


「百鬼夜行(ひゃっきやぎょう、ひゃっ
きやこう)」とは、日本の説話などに登
場する深夜に徘徊をする鬼や妖怪の群れ、
および、彼らの行進です。
「今昔物語集」などに記述が見られ、
「尊勝陀羅尼の験力によりて鬼の難を遁
るる事」(巻14の42)には、
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貞観年間(859~877)、右大臣藤原良
相の長男、大納言左大将藤原常行が愛人
のもとへ行く途中、美福門周辺で東大宮
大路の方から歩いてくる100人ほどの鬼
の集団に遭遇。常行の乳母が阿闍梨に書
いてもらった尊勝仏頂陀羅尼(尊勝陀羅
尼)を縫いこんであった服を着ていたの
で、これに気がついた鬼たちは逃げてい
った。
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という話が載っています。
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以上で、『応天の門』から宝塚の舞台に
も登場する主な人物を紹介しました。
拾い読みでもいいですし、斜め読みでも
いいですが、観劇の際のお役に立てれば、
と思います。