妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

潤花さんのヒロイン感が薄い?宙組公演『カジノ・ロワイヤル』(やや辛口感想③)

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


さすがに真風涼帆さんの退団公演だけあ
って、真風さんの魅力全開の『カジノ・
ロワイヤル』なのですが、同じく、今回
の公演で退団する宙組トップ娘役の潤花
さんのヒロイン感が薄いと感じたのは、
私だけでしょうか?


この宙組公演『カジノ・ロワイヤル』の
年代設定は、公演プログラムによると、
1968年になっています。
一方、原作の『カジノ・ロワイヤル』が
発表されたのは、1953年です。
間に、15年間もの開きがあります。


その理由は、フランスで5月革命が起き
たのが、1968年5月だから。
つまり、このフランスの5月革命のエピソ
ードを入れるために、年代設定を1968年
にしたという訳です。


この5月革命に絡む登場人物がトップ娘
役の潤花さんと宙組3番手の桜木みなと
さんです。
桜木みなとさんは、パリ学生連盟のリー
ダーのミシェルで、その恋人が潤花さん
のデルフィーヌ。二人はデモに参加し、
警官に追われているところを、デルフィ
ーヌをボンドが助けます。


「冷戦」でさえ、解説が必要なのに(ち
なみに、「冷戦」は、他の方のブログに
書かれているような民主主義対共産主義
ではありません)、「五月革命」は、さ
すがに私でもピンときません。
小池修一郎氏の趣味で入れたエピソード
としか思われず、話をよりつまらなくし
ています。


そこへ、取ってつけたようなデルフィー
ヌがロマノフ家の後継者というポジショ
ン。カジノでボンドに大敗を喫した(ら
しい)ル・シッフルが今度は、ロマノフ
家の財産を狙います。


どうも、小池氏は、このロマノフ家の話
をメインにしたかったようです。
以下、公演プログラムから。
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以前、MI6の前身であるSISに興味を覚え
調べていて、ロシア革命時にニコライ2世
の従兄弟・ジョージ5世が皇族救出の為に
密使を送り込んだと言うエピソードを読
み、劇化を考えたことがある。その企画
は実現しなかったが、今回の話のバック
ボーンとした。
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ということです。


そして、今更、意味不明のロマノフ家の
戴冠式。(遺言で家長がデルフィーヌに
決まっているのなら、ただのセレモニー
にしか見えません)


で、その戴冠式にミシェルが招待される
はずもなく、代わりに招待されるのは、
何故か、ボンド。


一方で、ミシェルは、ル・シッフルが経
営するクラブ「メゾン・ダムール」に潜
む間に、ル・シッフルの思想に感化され
ていきます。


で、デルフィーヌは、ミシェルという恋
人がありながら、戴冠式を前にして、次
第にボンドに心惹かれていきます。


というのが、第1幕。


第1幕、というより第2幕の途中までは、
ミシェルが一応、デルフィーヌの恋人で
あるため、ボンドの恋人、つまりヒロイ
ンではない、という形になっています。


これが、デルフィーヌのヒロイン感を薄
めている原因ではないかと思われます。


その後は、ル・シッフルの古城から二人
でパラシュートで脱出したり、一生忘れ
られないようなキツーイ息が止まるほど
(でしたっけ)、長い
キスをしたりして、
ヒロイン感は出て来るのですが、結局は、
再会することを約束して、「Aieu」と言
って二人は別れていく。


何か、トップコンビ退団作品なのに、二
人の関係があっさりし過ぎに思えるので
すが……。


原作のヴェスパーの方がヒロイン感があ
るだけに、この展開は少し残念です。


やっぱり、「五月革命」のエピソードは、
不要だったのでは……?
そうすれば、ミシェルとデルフィーヌが
恋人という設定も必要なく、そのまま、
デルフィーヌが自分をル・シッフルの手
から守ってくれるボンドに恋をするとい
う形にスッと入れたと思うのですが……。