壽々の雑記帳

観劇のコメントや日々の出来事・時事問題などについて綴ります。

では、コロンブスは世界史の教科書にどのように書かれているのか?調べてみました。ーMrs. GREEN APPLEのMV炎上問題⑤

今日は、壽々(じゅじゅ)です。


Mrs. GREEN APPLEのMV炎上問題も遂
に、5回目になりましたが(本当は、も
っと多い)、メディアの方もしつこくて、
NEWSポストセブンが、昨日の記事で、
Mrs. GREEN APPLEの「過去の問題」を
取り上げています。


MVの炎上問題とは、余り、関係がなさ
そうに思うのですが……。


さて、本題に入ります。


Mrs. GREEN APPLEの「コロンブス」の
MVが炎上した批判コメントの内容は、
記事によって若干ニュアンスが異なりま
すが、大体、次の点になりそうです。
==================
①類人猿が先住民を模しているのでは
②白人を想起させる人物が類人猿に人力
 車を引かせたり文明を教えたりしてい
 るような表現は不適切では
③植民地主義と奴隷制の肯定
④世界史を勉強した人が関係者に一人も
 いなかったのかな?

⑤奴隷商人だったコロンブスを賛美する
 内容はいかがなものか
⑥類人猿は先住民をなぞらえているのか
⑦完全にアウトだろ
⑧人力車を引かせる場面が奴隷制を想起
 させる
⑨明らかな人種差別表現で植民地支配を
 容認している
⑩関わった人に、世界史を学んだ人はい
 なかったのか?

⑪世界史を勉強した人は誰もいなかった
 のか?

⑫植民地主義を肯定している
⑬人種差別をエンタメ化している
⑭コロンブスは奴隷制度を作ったり先住
 民を奴隷にしたと言われている人なの
 で、コロンブスの格好をして猿に文明
 を教えているような描写はMVでも倫理
 的にどうなの
⑮高度な文化の西洋人という印象
⑯類人猿と先住民とを重ねているのでは
⑰最初から最後までアウト
⑱誰もこれを止めなかったのがむしろ驚
 き
==================
重複している内容もありますが、各記事
から引用すると大体、こんな感じです。


今回、取り上げるのは、④⑩⑪の「世界
史を勉強した人が関係者に一人もいなか
ったのか」というコメントです。


イギリスのBBCもこのコメントを取り上
げました。


それでは、イギリスはともかく、日本の
高校の世界史の教科書では、「コロンブ
ス」はどのように書かれているのか、と
いうのが私の疑問です。


私が世界史を勉強したのは、もう50年も
前の話ですから、最近は「コロンブス」
の教科書での扱いも変わっている可能性
があります。


ということで、最近の高校の世界史の教
科書を参照してみることにしました。


参照したのは、帝国書院社の令和5年2月
20日発行の「新詳 世界史B」です。


索引で検索すると、「コロンブス」は、
147ページと152ページに載っています。


152ページの方は「コロンブスの交換」
の話ですから、今回の件とは直接の関係
はないので、147ページの方に書かれて
いる内容を引用します。


147ページには、「コロンブス」について
こう書かれています。
==================
「アメリカの発見」


西方に航海することで、アジアをめざしたスペイン
は、偶然、アメリカ大陸を「発見」し、ポルトガル
との間で、地球の分割をはかった。


 スペインのイサベル女王らもポルトガ
ルに対抗してアジアをめざし、ジェノヴ
ァ生まれの航海者コロンブス(コロン)
を支援した。コロンブスは地理学者トス
カネリの地球球体説をもとに、西からア
ジアをめざしたが、1492年にカリブ海の
サンサルバドル島に到達した。彼はアメ
リカへの航海を4回行い、のちにはアメリ
カ大陸にも上陸した。
 コロンブスは到着した場所をアジア(イ
ンディアス)の一部と考えていたが、彼に
続くアメリゴ=ヴェスプッチやバルボアの
探検によって、そこがヨーロッパ人の知ら
なかった「新大陸」であることが明らかに
なった。(以下、略)
==================
これだけです。


この世界史の教科書の記述から「コロン
ブス」が先住民に対しておこなった暴虐
を知れ、というのは、到底、無理でしょ
う。


参照したのは、帝国書院の教科書だけな
ので、もしかしたら、他の出版社の教科
書には、「コロンブス」が先住民に対し
て行った暴虐の記載があるのかもしれま
せん。


ただ、少なくとも、この帝国書院の教科
書で世界史を勉強した人は、「コロンブ
ス」が先住民に対してなにを行ったかは、
他の書物などでも読まない限り、知らな
いはずです。


つまり、「世界史を勉強した人が関係者
に一人もいなかったのか」というコメント
は、的外れであることになります。


一方で、この教科書の150ページには、
こんな記述があります。
==================
「スペインによるアメリカの開発」
==================
スペイン人はアメリカで鉱山開発やさと
うきび栽培を進めたが、それは先住民や
黒人奴隷の過酷な労働によって行われた。


 コルテスやピサロをはじめとした、成
功を夢見たスペイン人の「征服者」は、
次々と「新大陸」に渡った。彼らの征服
によって、現地の文明はおおかた破壊さ
れた。
 おもにポルトガル人が進出したアジア
では、現地内部の貿易がさかんで、大規
模な貿易ネットワークが形成されていた
のに対して、主としてスペイン人が進出
したアメリカには、文明をこえた交易ネ
ットワークがなく、香辛料のようにすぐ
世界に通用する商品もなかった。このた
めスペイン人は、エンコミエンダやプラ
ンテーションで先住民を強制的に働かせ、
銀山の開発やさとうきびの栽培を始め、
利益の高い生産をした。先住民は、新た
に持ち込まれた病気や過酷な労働のため、
人口が激減した、ラス=カサスらの反対
もあり、先住民にかわる労働力として、
アフリカの黒人が奴隷として導入された。
==================
ここに「コロンブス」の名前があれば、
批判も正しいと言えるのでしょうが、残
念ながら(?)ここに名前が載っている
のは、コルテスとピサロだけです。


こうして、実際に検証してみると、SNS
のコメントがいかに的外れのものである
かが、よく分かります。


一般の日本人にとって、「コロンブス」
が先住民に対して行った暴虐は、常識で
もなんでもないからです。


そのようなコメントをそのまま記事とし
て取り上げるメディアやジャーナリスト
らの見識も疑われると思います。