国連の皇室典範に対する勧告は、「内政干渉」か?①(シニア雑記)
今晩は、壽々(じゅじゅ)です。
国連の女性差別撤廃委員会が10月29日、
日本政府に対し、皇室典範の改正などを
勧告する最終見解を発表したことに対し、
日本政府は「皇位につく資格は基本的人
権に含まれないことから、女子に対する
差別に該当しないというわが国の立場を
表明するとともに、強い遺憾の意を伝達
した。それにもかかわらず、最終見解に
記述がなされたことは大変遺憾であり、
委員会側に対して強く抗議するとともに、
削除の申し入れを行った」と反発しまし
た。
今回は、この皇室典範に関する問題につ
いて考えてみたいと思います。
まず、この人の発言から見てみましょう。
「皇統を守る国民連合の会」会長の葛城
奈海氏です。
発言の部分だけを抜き出すと、
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「天皇は祭祀王だ。ローマ教皇やイスラ
ムの聖職者、チベット仏教最高指導者の
ダライ・ラマ法王はみな男性なのに、国
連はこれを女性差別だとはいわない。な
ぜ日本にだけそのように言うのか」
「世界にはさまざまな民族や信仰があり、
それぞれ尊重されるべきだ。内政干渉す
べきではない」
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この葛城氏の発言を踏まえて、今度は、
ヒューライツ大阪の記事を見てみます。
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「世界には大小190余りの国がありま
す。力の強い国、弱い国、豊かな国、貧
しい国と様々です。これらの国が集まっ
ているのが国際社会です。そこでは国同
士が守らなければならない「きまり」が
あります。国際法です。第二次世界大戦
後にできた国際連合(国連)では、様々
な国であっても、それぞれ独立して、互
いに平等であること、自国のことはほか
の国に干渉されないでその国が決めるこ
とを、すべての国連加盟国が守るべき原
則として定めました。
簡潔にいえば、人権侵害の情報が根拠
のある確かなものである限り、他国の人
権に懸念を表明したり批判することは内
政干渉とは考えられません。
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つまり、国連が人権問題に関して、加盟
国に対して勧告するのは、過去の経緯が
あるからです。
したがって、今回の国連の女性差別撤廃
委員会が女性差別撤廃条約の締結国であ
る日本政府に対し、同条約に基づいて、
皇室典範の改正などを勧告したのは、皇
室典範の規定が男女平等という人権の侵
害になると考えたからです。これを「内
政干渉だ」という葛城氏は、国連の過去
の経緯を見ていないことになります。
次に、11月22日付PRESIDENNT Online
の記事を見てみます。
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(略)
一部に、ローマ教皇やダライ・ラマ法王
がみな男性なのにそれは問題視しないで、
日本の天皇の男系男子限定だけを女性差
別とするのはフェアでない、といった意
見もあったらしい。しかし、ローマ教皇
を首長とするバチカン市国やダライ・ラ
マ法王が率いるチベット亡命政府は、国
連に加盟していないし、もちろんこの条
約も締結していない。だから、そもそも
委員会の勧告対象ではないという、初歩
的な事実を見落とした主張だ。
(略)
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ということです。
更に、「天皇は祭祀王だ」(だから男性
天皇でなければならない)という発言は、
過去に日本に女性天皇がいたという事実
を見落としています。
推古天皇、皇極天皇、斉明天皇、持統天
皇、元明天皇、元正天皇、孝謙天皇、称
徳天皇、明正天皇、後桜町天皇は、全て
女性です(なお、皇極天皇=斉明天皇、
孝謙天皇=称徳天皇です)。
つまり、8人の女性が天皇になっているの
ですから、女性が天皇になって祭祀王に
なっても構わない事になります。
ここで、問題となっている皇室典範の条
文を見てみましょう。
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第一条
皇位は、皇統に属する男系の男子が、こ
れを継承する。
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国連が「男子」を不平等だと言うのは分
かりますが、「男系」の方も改正を求め
るのは、何故でしょうか?
という事で、長くなったので、②に続き
ます。