妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

『哀しみのコルドバ』は宝塚王道の作品と思うこと

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


9月12日は、花組の神奈川県民ホール公演『哀しみのコルドバ』『Cool Beast!!』の
ライブビューイングを観に映画館へ行ってきました。


本日は、『哀しみのコルドバ』についての私の感想です。


私は『哀しみのコルドバ』は宝塚王道の作品だと思いました。
(あくまでも私の個人的な見解です)


『哀しみのコルドバ』の幕が上がると、スポットライトを浴びて肩に赤いマントを掛けた一人のマタドール(エリオ=柚香光さん)が後ろ向きに立っています。そしてギターが情熱的な調べを奏でます。
マタドールがゆっくりと振り返り、そして、前へと歩みだします。
肩のマントを手にしたマタドールは、そのマントを華麗に捌きながら激しく踊ります。
そして、4人のマタドールが加わって5人でのマントを捌きながらの踊りになります。
さらに、スパニッシュの男達、女達が加わって、主題歌に合わせた群舞となっていきます。


柚香光さんのマタドール姿が格好いい!!柚香光さんを中心にした5人のマタドールの踊りも格好いい!!そして群舞もいい!!
このプロローグで観客のテンションは上がり一気に物語の世界へ引き込まれていきます。
プロローグからいかにも宝塚の王道を思わせる演出です。さすが柴田侑宏先生。見事です。


『哀しみのコルドバ』はそのタイトルが示すように悲劇です。宝塚の作品にはハッピーエンドもありますが、悲劇も多いように思います。
最近の作品では、『桜嵐記』『ロミオとジュリエット』『マノン』『ヴェネチアの紋章』など、宝塚ファンは悲劇が好きなようです。


『哀しみのコルドバ』は、主人公である闘牛士の情熱的な恋が破滅的な道へと進み、しかも思いもしない障害により悲劇として終わる。この物語の構成が『哀しみのコルドバ』を宝塚王道の作品たらしめていると思います。


舞台はスペインでも南部に位置するコルドバ。そしてスペインには、常に死と隣り合わせの日々を送る闘牛士たちがいます。


激しく情熱的で、しかも破滅的な恋の物語にこれほどふさわしい舞台設定はないでしょう。


そして、二つの情熱的で破滅的な恋を軸として物語は展開します。


一つは、主人公のエリオと同門の闘牛士ビセントと司法長官セバスチャン伯爵の妻メリッサとの恋。


もう一つは、エリオとエリオのかつての恋人で今はロメロという恋人を持つエバとの恋。


どちらも、マタドールとしての地位も名誉もすべて捨てて情熱的な恋への道を選びます。
そのような情熱的で破滅的な恋に、時として人は魅了され、あこがれるのかもしれません。


そして、エリオはエバへの愛のために命を懸けてロメロと決闘する道を選びます。今まさに決闘が始まろうとしたその時に、エリオとエバの母親であるマリアとパウラは必死に決闘を止めようとします。


その理由を厳しく問いただすエリオに母親達は、ついにエリオとエバの出生の秘密を明かします。その秘密を知って深く嘆き悲しむエリオ。この嘆きをエバに味わわせるわけにはいかないと思うエリオ。
二人の恋は人の道に外れる許されない恋。決して成就することがかなわない恋。
この時、エリオは二人の出生の秘密を永遠に葬るために自ら死を選ぶことを決意します。


最後の闘牛場の場面。
華麗なマント捌きで猛牛をかわし続けるエリオ。
しかし、突然、マントを手から離します。
そこへ猛牛が突進してきてその角がエリオの体にささり、エリオは命を落とします。


柴田侑宏先生の素晴らしい脚本と演出。粋な台詞の数々。そして寺田瀧雄先生の名曲。


『哀しみのコルドバ』には、宝塚の王道と言っていい要素がいっぱい詰め込まれていると
私は思いました。

それが宝塚ファンの心をとらえ、何回も再演を重ねてきた所以ではないでしょうか。

今回、全国ツアーではありますが、花組においてこの作品が再演されたこと、そして、
柚香光さんを始め花組の皆さんがこの作品を素晴らしいものにしてくれたこと、心から
嬉しく思います。