妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

この二つの作品を比べるのは、どうかと思うが……。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


どうも、以前の記事の「現代のトップオ
ブトップ候補生が誰かと言えば、星組の
礼真琴でしょう。」の続きの記事のよう
です。


その記事では、元花組の明日海りおさん
を「トップオブトップ」の例として挙げ
て、その出演作で「5作目『金色の砂漠』
がヒット、自身のお気に入りの役と出会
う。」と書いています。


そもそも、明日海りおさんの『金色の砂
漠』がヒットしたのかが?ですが、『金
色の砂漠』を引き合いにして、礼真琴さ
んの5作目の『ディミトリ』も運命の大
傑作になると予測するのは、ちょっと、
牽強付会が過ぎるのではないか、と思い
ます。


第一、『金色の砂漠』の演出家は、上田
久美子氏で、オリジナル作品。
『ディミトリ』の演出は、生田大和氏で、
並木陽氏の「斜陽の国のルスダン」が原
作。
同じような作品になろうはずもありませ
んし、生田大和氏が『金色の砂漠』を意
識していたとも思えません。


しかも、原作を読まずに『ディミトリ』
を観劇していますから、感想がなんだか
ちぐはぐです。


以前にも、私が書いた通り、『ディミト
リ』のストーリーは、原作にほぼ忠実で
す。これは、『金色の砂漠』が架空の物
語であるのに対して、『ディミトリ』が、
ある程度、史実を踏まえざるを得なかっ
たことによると思われます。


「逆にこの身分違いの恋は、もっとしっ
かり時間を割いて描いて欲しかったです
ね。少なくともディミトリの中でその葛
藤があってこそ、後の気持ちの移り変わ
りがもっとドラマティックに演出出来た
はずなのに。そしてこれはギオルギ(綺
城ひか理)とバテシバ(有沙瞳)の関係
性も同じで、なぜ結ばれてなぜ別れを選
んだのか、観客がその過程を理解してこ
そリフレインが生きると思うのですが…。」
←ほぼ原作通りの演出ですし、むしろ、
原作では、ほとんど出てこないバテシバ
を、ちゃんと出演させて、バテシバのギ
オルギに対する想いやギオルギがバテシ
バと別れる理由をちゃんと説明していま
す。
また、「身分違いの恋」と書かれていま
すが、『金色の砂漠』の王女と奴隷の関
係を引き摺っているような……。
ディミトリは、人質であるとはいえ、ル
ーム・セルジュークの王子であって、奴
隷ではありません。つまり、身分が違う
のではなく、立場が違うのです。でなけ
れば、ギオルギが死ぬ間際に、ルスダン
の王配として、ディミトリを指名するは
ずがありません。


「瀬央ゆりあ演じるジャラルッディーン
率いるホラズムが台頭」←違いますね。
ホラズムは「台頭」するのではなく、モ
ンゴル軍に敗れて土地を失い、モンゴル
軍に対抗するための拠点として、ジョー
ジア王国にやってきます。だから、作品
紹介に「亡国ホラズム」と書かれている
訳です。


「彼は後にルスダンの不貞の相手となり
ます。が、正直この流れにはビックリし
ました。ルスダンがときめくには、もっ
と直接的な、例えば盗賊に襲われたルス
ダンを命からがら助けたとか、そういう
段階を踏まねば女王の愛は傾かないので
は?」←原作通りです。だから、原作者
は、ルスダンが不倫をする理由として、
ディミトリが敵側と内通する(ルスダン
の誤解ですが)という話を創作したので
す。ここのストーリーを変えては、史実
に反します。こういう誤解をする人がい
るから、この場面は削った方がいいと思
うのですが……。そもそも、ミヘイルに
「ときめいて」ルスダンは不倫したわけ
ではありません。


「自分を裏切ったと誤解します。この流
れはスリリングでしたねー。」←ここも
原作と同じです。原作を褒めているんで
すかね。


「もっと余韻のある終わり方あるでしょ
うに。あんなスタスタと普通に歩かせん
でも……。」←ここは、原作と違って舞
台で付け加えられた部分です。原作では
その手前、ルスダンの手にリラの花びら
が降り注ぐところで終わっています。
ここは、原作通りに、そこで、終わって
いた方が良かったと思います。


原作とその後書きを読んでから観劇して
いたら、もう少し感想が違ったのではな
いかと思いますが……。


まあ、『ディミトリ』が礼真琴さんにと
って、飛躍するような「運命の大傑作」
でない事だけは確かです。
次の6作目も再演物ですしね。
7作目で、「運命の大傑作」に巡り会え
るのでしょうか?
ただ、『金色の砂漠』の上田久美子氏は、
退団して、もういませんし、『蒼穹の昴』
の演出家も不祥事で退団してしまったし、
小柳奈穂子氏は、ルーチェで失敗してい
るし、他に誰かいますかね?


何か、無理矢理、礼真琴さんを「トップ
オブトップ」にしたくて、柚希礼音さん
や明日海りおさんと同じ道をたどるよう
に考えているのではないか、と思います。


別に、礼真琴さんが「トップオブトップ」
にならなくても、いいのではないかと思
うのですが……。