壽々の雑記帳

観劇のコメントや日々の出来事・時事問題などについて綴ります。

これは、本当に良かった!!花組公演『うたかたの恋』小柳バージョン!!

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、10年に1度の大寒波の中、宝塚
大劇場へ遠征してきました。
寒いからと思って、それなりの備えをし
たつもりでいたのですが、想定を上回る
寒さでした。
しかも、JR新大阪駅で宝塚行きの普通を
待っていたら、踏切異常とかで9分電車
が遅れてきました。
ホームは、吹きっさらしですから、寒か
ったこと。
でも、行きは新幹線も遅れることなく、
宝塚線の9分遅れだけで、無事、宝塚大
劇場へ到着しました。


問題は、帰り。どうも山陽新幹線が遅れ
ている様子。丁度、新大阪駅始発ののぞ
みがあったので、それに乗りましたが、
名古屋駅に47分遅れで到着。結局、倍の
時間が掛かりました。
でも、とりあえず、行きでなくて良かっ
たし、劇場で後ろの席に座っていた人達
は、どうも北陸方面から来ていた様子。
無事に帰れたんですかね。


ただ、劇場の席は、前から8列目のセン
ターブロック。ほぼ、SS席で舞台が良
く観えました~!!


さて、本題に入ります。
まずは、一応、公演プログラムからあら
すじです。( )内の配役は私が追記。
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 1889年1月26日、ウィーンにあるドイ
ツ大使館では、皇帝一家臨席のもと舞踏
会が催されていた。大勢の貴族が一堂に
会する中、皇太子ルドルフ(柚香光)が
男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(星風ま
どか)の手を取り、踊りだす。人々の視
線を一身に集め、幸せそのもののように
踊るルドルフとマリー……しかし、うた
かたの恋に終止符を打つ時の訪れを悟っ
ていた二人は、愛を貫くべくある決意を
固めていたー。
 皇太子ルドルフは、次代のヨーロッパ
を担う才知に長けた後継者として他国に
もその存在が広く知れ渡る青年であった。
しかし、その生活は決して心安らかなも
のではなく、皇太子として果たさなけれ
ばならない公務や守るべきしきたり、そ
して政略結婚で結ばれた妻との冷え切っ
た関係が、彼に重荷となってのしかかっ
ていた。一方、ルドルフの従兄弟である
ジャン・サルヴァドル(水美舞斗)は、
同じハプスブルク家の青年でありながら、
平民の娘を恋人に持ち、人生を謳歌して
いた。自分もジャンのように何にもとら
われずに生きる事が出来たなら……心密
かにジャンの生き方に憧れを抱いていた
ルドルフ。だが、皇太子にそのような自
由が許されるはずはなく、むしろルドル
フのささやかな願いは次期皇帝の座を彼
から奪おうと目論む者に利用されていく。
 そんな時、ルドルフとマリーは出会っ
たのだったー。マリーの初々しい姿は鮮
やかな印象をもって、ルドルフの心に深
く刻み込まれる。マリーもまた、微笑み
を湛えながら時折物憂げな表情を見せる
ルドルフに強く心惹かれ始めていた。
 マリーへの抑えきれぬ想いに身を焦が
したルドルフは、彼女を秘かに王宮の自
室に招く。やがて逢瀬を重ねるようにな
った二人は、許されざる恋に身を投じて
いくのだった。マリーと幸せを掴むため
なら、妻との離婚、更には皇太子の地位
を手放すことも厭わないとルドルフは覚
悟を決めるが、ハプスブルク家がそのよ
うな行動を許すはずがなかった。
 ルドルフの人生に彩りを添えたマリー
との恋……しかし、それは政治的な思惑
にも巻き込まれ、次第にルドルフの望ま
ぬ方へと向かっていくー。
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さて、この『うたかたの恋』は、私は、
前回の紅ゆずるさん主演の星組公演を、
名古屋の中日劇場で観劇しているのです
が、最後の場面以外は、全く、記憶にな
く、ただ、なんとなく、古臭くて、退屈
な作品(失礼!)としか思っていなかっ
たのですが、今回の小柳奈穂子バージョ
ンは、イメージがガラッと変わっている
のではないかと思います。


最初に、ルドルフとマリーが主題歌「う
たかたの恋」をデュエットで歌い、そこ
からウィンナ・ワルツに乗せての舞踏会
の華やかな場面。
そして、ドイツ大使館での舞踏会の場面
へと切り替わります。


とにかく、冒頭からの演出が見事です。
そして、オーストリア皇帝フランツ・ヨ
ーゼフ(峰果とわさん)、皇后エリザベ
ート(華雅りりかさん)を始め、貴族た
ちがずらりと居並ぶ中、中央から、皇太
子ルドルフ(柚香光さん)がゆっくりと
歩み出てきて、中央に立ち、左手にいる
男爵令嬢マリー・ヴェッツェラ(星風ま
どかさん)に手を差し延べて、皆が見守
る中、二人で踊りだすまでの流れがスム
ーズです。
それは、ルドルフとマリーがマイヤーリ
ンクで死ぬ直前の最後の舞踏会。
そこから、9カ月前の二人の出会いの場
面へと時間を遡ります。


語り手役は、ジャン・サルヴァドル(水
美舞斗さん)。ルドルフの従兄弟で親友
でもありますが、自由主義者で暴動を起
こそうとしています。
ルドルフは、ジャンの平民の娘ミリー・
ステュベル(星空美咲さん)を恋人に持
つ、その自由な生き方に憧れるのですが、
武力革命にだけには、反対します。
ルドルフが理想とするのは、穏健な方法
によるヨーロッパ共同体。この話、『エ
リザベート』にも出てきますよね。『う
たかたの恋』は、皇太子ルドルフについ
て、『エリザベート』とは別の面から見
た物語になっています。『エリザベート』
の方には、マイヤーリンクの話は出てこ
なくて、トートに唆されて、一人で自殺
した形になっています。


ところで、このジャン・サルヴァドルと
ミリー・ステュベル。二人は結婚して、
船で南米に向けて就航するのですが、途
中で行方不明になったそうです。
遭難したのでしょうね。


もう一人のルドルフの友人フェルディナ
ンド大公(永久輝せあさん)。公演プロ
グラムの配役を見て、「ああ、これ死ぬ
人だと」。『うたかたの恋』では、死に
ません。最後に、フリードリヒ公爵(羽
立光来さん)の命令で、兵を引き連れて、
マイヤーリンクの山荘を取り囲みます。
ルドルフには、こっそりと逃げ道を教え
るのですが、ルドルフは拒否し、ハプス
ブルク家はフェルディナンドが継ぐよう
にと、言います。


実際に、ルドルフの死後は、フェルディ
ナンド大公が引き継いで皇位後継者とな
り、恋人のソフィー・ホテック(美羽愛
さん)と結婚するのですが、サラエボと
いう場所で、二人は暗殺されます。
この事件が第一次世界大戦の発端となる
ので、世界史の教科書にも載っています
(サラエボ事件)。


ルドルフの周囲は、自身も含めて、不幸
しかないですね。
皇后エリザベートも暗殺されるし……。


『うたかたの恋』も『エリザベート』も
共に、第一次世界大戦前夜のオーストリ
ア帝国ハプスブルク家が崩壊していく姿
を描いた作品でもあります。


さて、話は戻って、9カ月前の話。
1888年4月。ウィーンのブルク劇場では、
「ハムレット」が上演されていました。
観劇に飽きていたルドルフが別のバルコ
ニー席に目を移すと、そこには、ヴェッ
ツェラ男爵夫人(凛乃しづかさん)一家
の中に、マリー・ヴェッツェラの姿が……。


そして、ロビーで二人は、言葉を交わし
ます。マリーの清らかな面影は、ルドル
フの心に深く刻まれ、マリーも、ルドル
フの凛々しい姿と言葉を交わすことの出
来た喜びに心をときめかせます。
そりゃ、マリーでなくても、柚香光さん
には、心ときめくでしょうけどね。


その後も、物語はテンポ良く、サクサク
と進められ、皇太子ルドルフと皇帝フラ
ンツとの間の溝は、ゼップス(和海しょ
うさん)らの逮捕もあって、ますます、
深まっていきます。その間に、暗躍する
のは、フリードリヒ公爵らの一味。
ゼップスも確か、『エリザベート』にも
出てきますよね。


そして、決定的になるのは、ルドルフが
ローマ法王へ送った皇太子妃ステファニ
ー(春妃うららさん)との離縁について
のローマ法王からの返答。フリードリヒ
公爵がルドルフへの私信にも関わらず、
皇帝フランツの許へ届けます。


その内容に、怒ったフランツは、ルドル
フを皇位継承者から外そうとしますが、
それでも、構わないと言って立ち去ろう
とするルドルフに、フランツは、マリー
を修道院に送る命令を下したとルドルフ
に告げます。


マリーと共に生きる希望を閉ざされ、絶
望に陥るルドルフは、ある決断を下しま
す。それは、死によって二人が永遠に結
ばれる事。


皇后エリザベートの口添えもあって、二
人は、ドイツ大使館で開かれる舞踏会で
もう一度だけ会う事を許されます。


そして、再び、ドイツ大使館での舞踏会
の場面。そこで、ルドルフは、マリーに
二度と帰ることのないマイヤーリンクへ
の旅に誘います。その意味を悟ったマリ
ーは喜んでルドルフと運命をともにする
事を誓います。


ここまで観て思うのは、オーストリア皇
帝フランツのハプスブルク家の伝統と権
威を保とうとする異常なまでの執念です。
自由主義運動を弾圧し、貴族とはいえ、
最下級の男爵家との皇太子ルドルフとの
交際を認めないのは、このためです。


フランツがエリザベートに、湖畔で、
「帰ってきておくれ」と懇願しても、エ
リザベートが帰ろうとしない理由も分か
るように思います。目指す港が違うので
すから……。
「すべての不幸は、ここから始まる」の
です。


今回の、小柳奈穂子氏の潤色・演出は、
今までと、どこが違うのかがよく分かり
ませんが、観ていて古臭くもなく、退屈
でもありません。よく出来ていると思い
ます。
ルーチェはダメなのに、こういうのは、
大丈夫なんですね、この方は……。


で、②に続きます。


その前に、ショーの方を一部だけ。
(ネタバレになります)
いかにも花組らしい華やかなショーなの
ですが、第4章のニューヨークの場面で、
柚香光さんが白いハットを被って、白い
スーツに黒シャツ、細身の赤いネクタイ
という、普通の人がやったら、絶対に似
合わないという格好で出てきます。
そのNYCガイSの柚香光さんの後ろに白
い壁のようなものに黒い文字で、「N°11
MADOKA  NEW YORK  PERFUME」
と書かれています。


何だろう?と思っていると、それが扉で、
途中からドアボーイが扉を開いて、中か
ら、金髪のかつらを付けて、白いドレス
を着て、赤い靴を履いた星風まどかさん
が飛び出してきます。まるで、マリリン
・モンローみたいだと思っていると、星
風まどかさんがスーツケースの上に乗っ
て、ドレスがフワリと風で捲り上がりま
す。まさしく、映画のマリリン・モンロ
ーのシーンの再現なのですが、柚香光さ
んがそれを見て、目線を手に持った帽子
で隠します、が、もう見てしまってます
よね。
観客席からもバッチリ見えています。


で、『うたかたの恋』②へと続きます。