妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

5人兄弟が夢を叶える、雪組公演『ライラックの夢路』2回目観劇感想。①

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


雪組公演『ライラックの夢路』の2回目
観劇の感想です。


やはり、冒頭の5人兄弟が揃う場面がい
いですね。衣装もそれぞれ違っていて、
素敵です。


長男のハインドリヒ(彩風咲奈さん)は、
ライラックの花の色でしょうか?濃い紫
色の衣装です。普通の人は、こんな色の
服を着ても似合わないと思うのですが、
彩風咲奈さんが着るとよく似合っていて、
素敵です。


次男のフランツ(朝美絢さん)は、紺の
縦じまの上着にグレーのパンツ。手にス
テッキを持っています。
役所に勤め、ドロイゼン家の財務を担っ
ています。


三男のゲオルグ(和希そらさん)は、軍
人で緑色の上着に黄色のパンツにブーツ
の軍服姿。ハインドリヒの経営する製鉄
所を支えています。


四男のランドルフ(一禾あおさん)は、
薄い青色の上着に薄いベージュのパンツ
の衣装。ベルリンで官僚の秘書として、
働いています。


五男のヨーゼフ(華世京さん)は、薄い
黄色の上着に下は青(?)のパンツの衣
装。音楽家です。


5人兄弟が揃ったところで、長男のハイ
ンドリヒが自分の夢を語ります。それは、
これからの産業である鉄道事業を始める
ということ。広大な農地で作物を作るだ
けでは、時代遅れだと。


驚いたのは、ドロイゼン家の財務を担当
するフランツ。鉄道事業には、莫大な資
金が必要だが、その資金を一体どうする
のかと。


夢と理想を追い求めるハインドリヒに対
して、次男のフランツは、兄さんは俺た
ち兄弟を振り回して、いつも好き勝手な
ことをやっていると責めます。


で、ここで、理解して頂きたいのは、ド
ロイゼン家は、ユンカー(領地所有の貴
族)ではあるのですが、それを継承でき
るのは、長男のハインドリヒだけである
ということ。
ですから、ハインドリヒは、領地の農民
が作る作物の売り上げで生活しているの
に対して、他の兄弟たちは「貴族の御曹
司」ではあっても、それぞれの職に就い
ている訳です。


領地を持っていることで生活が保障され
ているハインドリヒに対して、その保障
がないフランツ達。フランツが不満を兄
ハインドリヒにぶつけるのは、ある意味
当然でしょう。また、夢ばかりを追い掛
けていると。


ただ、ハインドリヒのような夢を追い求
める者がいなければ、世の中はいつまで
も発展しません。鳥のように空を飛ぶこ
とを夢見る者、馬よりも早く走りたいと
夢見る者、地球を飛び出して宇宙へ行き
たいと夢見る者。そうした人たちがいた
からこそ、私たちは文明の恩恵を享受で
きるのです。


この物語は、そのような夢である鉄道事
業を19世紀初頭のドイツで叶えようと
した5人兄弟の感動の物語、のはずなん
ですが……。


演出家の謝珠栄氏の作風なんでしょうか?
どうも、好みが分かれるようです。
前にも書いたように、私は、好みなんで
すけどね。


この物語の時代背景については、公演プ
ログラムに大阪大学大学院教授の鴋澤歩
氏の解説に出てきます。


ドイツは、まだ、統一されてなく、それ
ぞれの地域国家がそれぞれに税を課して
いました。
だから、港で5ターラー(でしたっけ?)
の物が自分たちの所(プロイセン王国)
に着いた時には、30ターラーにもなる
というセリフが出て来るのですが、そう
いう現象が起きるのです。


この地域国家間の関税を撤廃し、関税同
盟を結成し、鉄道の導入を訴えたのが、
物語の話にも出て来るF・リストでした。


さて、「鉄」のような硬い話が続いたの
で、物語に戻りましょう。


末弟のヨーゼフが長兄のハインドリヒに
会って欲しい人がいると連れて行った酒
場で、ヴァイオリンを弾いていたのは、
エリーゼ。
ただ、エリーゼは、ヨーゼフの恋人では
なく、ヨーゼフに音楽を教えてもらって
いると話します。


ここで、ちょっと疑問。
これをきっかけに、ハインドリヒとエリ
ーゼは恋に落ちるわけですが、何で、ヨ
ーゼフは、エリーゼをハインドリヒにわ
ざわざ会わせたのかが謎。
こんな女性もいるんだということを知っ
てもらいたかったから?


また、エリーゼの鉄製のペンダントがハ
インドリヒの目に留まり、そこから、エ
リーゼの幼友達の製鉄技術を持つ職人の
アントン(縣千さん)に繋がるのですが、
何か都合が良すぎ。
資金面では、困難に直面するのですが、
他の面では都合よく話が進んでしまうの
で、物語としては、物足りなく感じるの
かもしれません。


これが、この作品の評価を下げている原
因の一つになっているように思われます。


ところで、女性がピアニストなら良くて、
ヴァイオリン奏者ならダメという理屈は、
一体、どこから出てきたんでしょうね?


ともかく、女性であるのにヴァイオリン
奏者になることを夢見るエリーゼにハイ
ンドリヒは、共感を覚えます。


で、思うのですが、夢白あやさんは、こ
ういう自分の信念を持った芯の強い女性
という役が良く似合っていると思います。
今後の作品でどんな役を見せてくれるの
か、楽しみです。


そして、もう一人の女性。
銀行頭取フンボルト( 奏乃はるとさん)
の娘ディートリンデ(野々花ひまりさん)。
次男フランツの恋人なのですが、父親の
フンボルトは貴族の承継者であるハイン
ドリヒとディートリンデを結婚させよう
とします。


で、このディートリンデの行動がまた謎
です。フランツを愛しているのに、その
自尊心が高すぎる故に(?)、三男のゲ
オルグを妬むヴェーバー少佐(久城あす
さん)を利用して、ドロイゼン家の悪い
噂を流したり、ハインドリヒとエリーゼ
が連れ立って歩くのを銃で狙わせたりす
る?


そして、そんなディートリンデが、最後
には、鉄道会社運営の資金がわずかに不
足している時に、エリーゼが作った鉄の
ペンダントを買い上げて、ドロイゼン家
の鉄道事業を支援する?


最後は、めでたしめでたしですが、この
ディートリンデの自尊心(愛しているの
はフランツであって、ハインドリヒでは
ないのに)とその後の心境の変化がよく
分かりません。


野々花ひまりの演技は、さすがですが、
物語がどこか破綻しているような……。


というところで、所々、?と思う場面が
あるのですが、それは、ただいま、東京
宝塚劇場で絶賛上演中の『カジノ・ロワ
イヤル』も同様ですし、他の作品でもツ
ッコもうとすれば、結構、ツッコミどこ
ろはあるので、この作品だけにケチをつ
けるのも、いかがなものか、と思います。


余り、細部にツッコまないで、物語を全
体として見れば、それなりに楽しめる作
品だと、私は、思います。


で、多分、②に続きます。