妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

「演技者専属契約」(雇用契約)と「出演契約」(業務委託契約)の違いー調査チームの調査報告について⑥

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


調査チームの調査報告書と遺族側代理人
弁護士の話には、法律用語がいくつか出
てきますので、それについて、解説した
いと思います。


なお、私は、会社勤務時代に18年ほど、
法務部門に在籍していて、法律にある程
度詳しい、ということを、予め、お伝え
します。(全くの素人ではないというこ
とです)


前にも同じような記事↓を書いているので
すが、記事の趣旨が異なりますので、改
めて述べたいと思います。


まず、調査チームの調査報告書の10ペー
ジには、次のようなことが書かれていま
す。
==================
ア 出演契約と業務時間
 劇団は、入団から5年間は劇団員との
間で1年ごとの「演技者専属契約」(雇
用契約)を締結する一方、入団6年目以
降は基本的に1年ごとの「出演契約」
(業務委託契約)を締結する。劇団員は、
前者の場合には労働者、後者の場合はタ
レント(個人事業主)と扱われていたた
め、劇団は、故人の「労働時間管理」を
行っているわけではなかった。
==================
ここで、なぜ、劇団と劇団員との間の契
約の話を持ち出しているかというと、
「雇用契約」には、労働基準法の適用が
あり、「業務委託契約」では、劇団員は
「個人事業主」であるので、労働基準法
の適用がないという違いがあるからです。


もう少し、詳しく説明すると、「雇用契
約」の場合は、労働基準法32条の適用が
あり、労働時間の上限が定められている
のに対し、「業務委託契約」では、フリ
ーランスであるため、労働時間の上限が
ない、ということです。


フリーランスであれば、極端な話、1日
24時間働いてもいいことになります。


それは、フリーランスの場合は、自分で
働き方ー働く場所、働く時間などーを自
由に決めることが出来るからです。


ところが、宝塚歌劇団の劇団員の場合、
働く場所、働く時間を自由に決められる
訳ではありません。


これが、遺族側代理人が「形式上は歌劇
団と出演契約を結ぶフリーランスだが、
指示従う立場で事実上の労働契約」だと
主張している理由です。


調査チームの調査報告書では、上記のア
に続き、イとして次のようなことを述べ
ています。
==================
イ 出演契約の性質及び活動時間
 上記アで述べた劇団の業務時間の管理
に関する考え方は、入団7年目の故人が労
働者(労働基準法 9 条)に該当しないこ
とを前提とするが、故人の出演契約にお
いては労働者性を肯定する方向の事情と
否定する方向の事情のいずれも存在して
いる。本報告書は、本件事案が発生した
事実関係及び原因の調査をすることを主
眼としているため、以下では、出演契約
の法的性質は措き、故人の出演契約上の
業務及びこれに関連する活動に費やした
時間(以下「活動時間」という。)を把
握する方針で検討することとした。
==================
太字にした箇所において、調査報告書は、
出演契約の法的性質の判断を放棄してし
まっています。


そして、出演契約であるという前提で、
「活動時間」を把握しています。


これが、この調査報告書の報告した残業
時間と遺族側代理人の主張する労働契約
を前提とした残業時間に大きな隔たりが
ある理由です。


私見ですが、今の劇団員の働き方を見る
限り、そして、今後、劇団員の働き方を
改革するためには、劇団員全員「雇用契
約」として、時間管理をしっかりやる
(例えばタイムカードを導入する)必要
があると思うのですが、「宝塚歌劇団の
今後の対応について」には、そんなこと
は書いてないですね。
(なお、「業務委託契約」で「個人事業
主」とされると、↓に書いたように税法上
のメリットはあります)


最後の所にこう書いてあります。


 自主稽古の実態を把握し、公式稽古の
スケジュールを見直すとともに、劇団施
設への入退館時間の短縮といった物理的
な対策をも検討する。


これで、過重労働が本当になくなるので
しょうか?


なお、調査報告書では、「タレント(個
人事業主)」
と書いてありますが、これ
は、確認した上で書いているのでしょう
か?


まず、「業務委託契約」を締結する場合
には、相手方(劇団員)が「個人事業主」
である必要があります。


そして、「個人事業主」とされるために
は、税務署に対して個人事業の「開業届」
を提出する必要があります。


「個人事業主」とされると、一定の控除
が適用される青色申告が利用できます。


問題は、税務署に対して劇団員が個人事
業の「開業届」を提出しているかどうか
です。


これについては、調査報告書にも書いて
ありませんので、よく分かりません。


ただ、遺族側代理人は、「フリーランス」
だとしています。


まあ、どっちにしても、大した違いはな
いので……。