妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

ライブ中継を観ました。星組公演『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』観劇感想③

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、星組公演『Le Rouge et le Noir~
赤と黒~』のライブ中継を映画館で観ま
した。


生でも1回観劇しているので、2回目と
いうことになりますが、映画館は、大画
面・迫力のサウンドである程度、生の舞
台を再現できるのですが、これを配信で
観たらどんな感じになるのでしょうか?
ちょっと、気になりますね。


さて、曲が素晴らしくて、出演者の歌と
演技力が卓越していれば、こういう良質
のミュージカルが出来上がるんだとつく
づく思いました。
今の礼真琴さん率いる星組の選抜メンバ
ーだからこそ可能となった作品なのだと
改めて感じました。


ただ、前回の月組公演で観た後の後味の
悪さは、今回の作品でもやはり感じまし
た。


その理由は、何よりもジュリアンが裁判
で述べたように、持たざる貧しい者とし
て生まれた者がすべてを得ようとしたが
故に受ける「理不尽さ」がジュリアンを
破滅へと導いていくことにあるのだろう
と思います。


王政復古時代のフランスにおいて、一部
の貴族とブルジョワジーだけが、富と名
声を享受する時代にあって、貧しい平民
出身であること自体が、そして、そのよ
うな者が「愛」を得ようとしたことが
「罪」であるかのように思えます。


ウィキペディアの『赤と黒』の記事を読
むと、「当時フランスを支配していたブ
ルボン朝復古王政により抑圧された社会
と、王政復古により復活した旧来の支配
階層に対する作者スタンダールの批判が
込められていた。」と書かれています。
そのような社会にあって、ジュリアン・
ソレルとルイーズ・ド・レナールとの間
の「愛」そのものが許されざるものであ
ったのでしょう。


ただ、ウィキペディアに載っている原作
のあらすじとは、少し内容が違うように
思われます。


今回の作品で、何より、不可解なのは、
レナール夫人が取る行動。


ジュリアンに対する片思いの癖に、ジュ
リアンとレナール夫人とが互いに愛する
ようになったのに嫉妬して、二人の関係
をムッシュー・ド・レナールに密告する
女中のエリザ(女の嫉妬って怖い)。こ
のエリザの行動が全ての発端になります。


密告状を受け取ったムッシュー・ド・レ
ナールは、夫人を呼びつけて問い詰めま
すが、レナール夫人は、自己保身を図る
ため、その内容を否定し、ジュリアンを
レナール家から追放するように冷たく言
い放ちます。


それだけでなく、今度は、ラ・モール侯
爵の一人娘マチルドと結婚したジュリア
ンについて、ムッシュー・ヴァルノの書
いた「ジュリアンは、良家の妻や娘を誘
惑しては出世の踏み台にしている」とい
う内容のラ・モール侯爵宛の手紙に署名
してしまいます。(ちょっと、正確では
ないかもしれません)


二度もレナール夫人に裏切られたジュリ
アンは、憤りの余り、レナール夫人に銃
を向け、発砲。
銃弾は、逸れてレナール夫人の肩に当た
り、夫人は一命を取り留めます。


牢獄にいるジュリアンの許へレナール夫
人が訪ねてきて、手紙は本心ではなく、
今でもジュリアンを愛している、と告げ
ます。
それを聞いたジュリアンは歓喜し、死刑
を受け入れることを決意します。


なんなんだ、この展開は?と思いません
か?
実は、原作にも柴田侑宏版にも、レナー
ル夫人の取った行動の説明部分があって、
もう少し、説得力があるのですが、今回
のフランス版はその部分がなくなってい
ます。


上演時間の関係で、カットされたのか、
それとも、元々のフランス版になかった
のか、どちらでしょうね。


ところで、ジェロニモがレナール夫妻を
上から操り人形のように操っている場面
があったのですが、ジェロニモに操られ
ていたのは、レナール夫妻だけでしょう
か?


ジェロニモは、劇場の支配人で、この物
語は劇中劇。単なるストーリーテラーで
はない気もしますが……。