妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

星組公演『1789-バスティーユの恋人たち-』(感想③)ーマリー・アントワネット

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


登場人物別の感想になります。


今回は、有沙瞳さんが演じるマリー・ア
ントワネットになります。


前回の月組公演では、トップ娘役の愛希
れいかさんが準主役ということで、マリ
ー・アントワネット役でしたが、今回は、
トップ娘役の舞空瞳さんがロナンの恋人
のオランプ役、この公演で退団する有沙
瞳さんがマリー・アントワネット役とい
うことで、まともな配役になりましたし、
それぞれの役が似合っていたと思います。


マリー・アントワネットは、前回公演
(東宝版も含めて)の準主役からは、幾
分後退した感はありますが、それでも存
在感があります。(元々がそういう作品
なのでしょう)


巨大なルーレットに乗っての登場は、お
やビックリですが(前作もこうでしたっ
け?)、庶民の辛苦そっちのけで、賭け
事や豪奢な暮らしに興ずる姿は、まさし
く、マリー・アントワネットです。


しかも、国王ルイ16世に愛想を尽かして、
スウェーデンの将校フェルゼンと危ない
火遊び。


ところが、病弱だった王太子が死に、こ
れは、道ならぬ恋に溺れた自分への罰に
違いないと自分を責めます。


で、第2幕になってからのマリー・アン
トワネットが???です。


革命が起きそうになって、貴族たちが国
外へ亡命しようとしている中、マリー・
アントワネットは、フェルゼンの申し出
も断り、ルイ16世の「君はオーストリ
アへ帰るかい?」との問いに対して、
「私はフランスの王妃です。フランス王
妃として陛下と共に生きて参ります」と
答えます。


観客の恐らくかなりの人は、この後、ル
イ16世とマリー・アントワネットがオ
ーストリアに逃亡しようとしたこと(ヴ
ァレンヌ事件)を知っています。


この史実と劇中のマリー・アントワネッ
トのセリフとが一致しないのです。


フランス版でも同じ内容なのかは、分か
りませんが、これは観ていて違和感を感
じます。


有沙瞳さんのマリー・アントワネットが
歌も演技も素晴らしいだけに、なんとな
く少し残念な気がします。


ただし、この作品を『ベルサイユのばら』
のようなフランス革命を題材とした虚構
の物語ととらえるなら(つまり、後にな
って国外逃亡を図るなんてことはやらな
い)、このマリー・アントワネットの印
象は、大きく変わってきます。


フエルゼンの申し出を毅然とした態度で
断り、ほかの貴族たちが国外に逃亡しよ
うとする中、フランス王妃としての責務
を果たすため、国王と共にフランスにと
どまることを決意します。


王太子の死も革命をも、神の下した罰と
して受け入れます。


そして、オランプに対して、「恋をして
いるのでしよう」と、優しく言葉をかけ、
ロナンの元へ向かえるようオランプに暇
を出します。


白い質素な服を身につけていますが、佇
まいは、まさしく「フランス王妃」です。


おそらく、演出家の意図としては、こち
らの見方が正しいのでしょう。


ただ、今後も、このマリー・アントワネ
ット像でいいのかは、疑問の残るところ
です。


まあ、そんなことは抜きにして、今回は、
有沙瞳さんの素晴らしい歌と演技を味わ
うということが大事なんでしょうね
この公演が有紗瞳さんの宝塚最後の公演
になるのですから。