妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

花組100周年を飾るのに相応しい作品『元禄バロックロック』全体感想

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


今回は、先日、無事宝塚大劇場公演を完走した花組公演
『元禄バロックロック』の全体の感想についてです。


今回の公演は、三井住友VISAカード シアターの冠公演で、
花組100周年に相応しい絢爛豪華な舞台になりました。


また、新鋭演出家谷貴矢先生の宝塚大劇場演出デビュー
作です。
谷貴矢先生は、2016年の花組バウホール公演『アイラブ
アインシュタイン』で演出家デビューです。
わずか5年で花組100周年の宝塚大劇場公演の演出を手掛
けることになりました。


結果は……、大成功だったと思います。


忠臣蔵という歌舞伎や講談、小説、映画、TVなどで広く
取り上げられ、ほとんどの人が良く知っている江戸時代
からの伝統ある物語をベースにしながらも、作品の設定を
鎖国のなかった国際都市エドとしています。


これで作品は「赤穂浪士VS.吉良上野介」のストーリを基調
としながら、バロック文化が華やかな国際都市エドにおいて
物語が展開するという物語の自由度がぐっと増しました。


そして、実際の元禄時代の江戸とは全く様相の異なるパラ
レルワールドを創り出し、そこへタイムトラベルというSF
の仕掛を組み込んでいます。


このタイムトラベルという仕掛けがこの物語の中核となっ
ています。


タイムトラベルで一般的なのは、タイムマシンです。
タイムマシンに乗って人が未来や過去に行くか、タイムマ
シンは残って中に人だけがタイムトラベルするというのが、
一般的かと思います。ラベンダーの香りというのもありま
した。


今回は、時計です。
時間を巻き戻す道具が時間を測る時計というのは、分かり
やすくて、いいアイディアだと思います。


そして、時計作りの天才としてのタクミノカミ、その時計
の設計図を奪って、幕府転覆を謀る人物がコウズケノスケ
という設定にしました。
コウズケノスケの陰謀を知ったタクミノカミは、エド城内
でコウズケノスケに斬りかかるというところから物語は始
まります。


さて、主人公は元赤穂藩の藩士で時計職人のクロノスケと
コウズケノスケの隠し子のキラという、いわば敵同士です。
この二人が恋に落ちるという、いわば「ロミオとジュリエ
ット」的な要素を盛り込みました。


そして、クロノスケとキラが出会うのが、賭場ラッキーこい
こい。ちょっと、ふざけた名前ですが、賭場というよりカジノ。
さいころ賭博ではなく、真ん中にルーレットのようなものが
あって、白か黒かに賭けるというもの。分かりやすくていい
です。


とにかくストーリーが分かりやすく出来ていて、?と思うと
ころがほとんどありません。
一旦、本来あった世界(キラとクロノスケが初めて出会った
世界)に戻るのですが、そこへの転換もスムーズです。
補足説明は、タクミノカミがやってくれます。


そのくせ、この先どうなるんだろう?という見せ場もあって、
観客を物語の中にぐいぐい引き込んでいきます。


戦闘場面もあって、クロノスケ、クラノスケ、コウズケノスケ
が、格好良く戦うというファンサービスもあります。


キラは、クロノスケから預かった時計の設計図をもとに時間を
遡ることのできる時計を完成させて、クロノスケが討ち入りで
死ぬという運命を変えようとします。
しかし、何度やっても成功しません。
これも、タイムトラベルの話では、よくあるパターンです。
自分自身の死や自分の恋人の死を回避しようと過去へ戻るのに、
そこの部分だけは変えることができないというものです。


この作品では、結局、クロノスケは時計を川に投げ捨て、自分
たちの力で争いを終わらせようとします。


ここで、将軍ツナヨシを単に「生類憐みの令」を制定した人物
ではなく、すべての争いごとを嫌うという人物に設定したこと
が活きてきます。


このツナヨシに母親のケイショウインを通じて依頼することに
より、赤穂浪士とコウズケノスケとの争いを止めることに成功
します。


赤穂藩はタクミノカミの弟ダイガクを後継者として再興します。


そして、物語はハッピーエンドで終わります。クロノスケも赤穂
浪士もコウズケノスケも死にません。
タクミノカミは生き返りませんが、最後の場面にいないところを見
ると赤穂藩の再興で成仏したのでしょう。
タクミノカミとダイガクは、聖乃あすかさんが一人二役ですので、
最後の場面に登場するのは無理ですが……。


そして、キラを始めとする登場人物の絢爛豪華な衣裳、華やかな
舞台セットも見ものです。


名作とは言えないかもしれませんが、観劇後はハッピーな余韻に
浸ることができます。


さて、来年1月は、東京宝塚劇場でいよいよこの作品が開幕します。
お正月に観劇するのに相応しい豪華絢爛なお芝居とショーをお届
けすることになるでしょう。