「厳しい指導」と「パワハラ」とは違うのでは……?
今晩は、壽々(じゅじゅ)です。
今回の宝塚歌劇団での「いじめ」「パワ
ハラ」問題に関して、「厳しい指導」も
必要なのでは、という意見を見かけまし
た。
前回は、「いじめ」と「パワハラ」の違
いについて述べましたが、今回は、「厳
しい指導」と「パワハラ」との違いにつ
いて、述べてみます。
まず、宝塚歌劇団は、観客からチケット
代を取って、公演を実施するのですから、
プロの集団のはずです。
「プロ」ということであれば、「厳しい
指導」を受けるのは、当然のことでしょ
う。
演出家の蜷川幸雄氏のように、灰皿を投
げつけないにしても(本人曰く、当たら
ないように投げていた)、演出家が厳し
い指導をするのは、演出家としては、当
然ですし、宝塚歌劇団のように上級生と
下級生がいるような集団であれば、上級
生が下級生を厳しく指導することも、当
然のことだと思います。
宝塚歌劇団生は、「プロ」として、舞台
に立っているのですから。
同じことは、例えば、歌舞伎の世界や落
語の世界でも言えるでしょう。
芸の道を究め、その芸を観客に披露する
のですから、厳しい指導を受ける当然だ
と思います。
ただ、「厳しい指導」と「パワハラ」と
は、違います。
もう一度、「パワハラ」に関する厚生労
働省の定義を見てみます。
厚生労働省の定義では、「職場のパワー
ハラスメント」とは、「職場において行
われる①優越的な関係を背景とした言動
であって、②業務上必要かつ相当な範囲
を超えたものにより、③労働者の就業環
境が害されるものであり、①から③まで
の3つの要素を全て満たすものをいい
ます。」とされています。
①は、どちらにも当てはまります。
「厳しい指導」も「パワハラ」も優越的
な地位にある者が行うからです。
問題は、②の「業務上必要かつ相当な範
囲」を超えているかどうかです。
この点について、厚生労働省は、次のよ
うに述べています。
==================
「業務上必要かつ相当な範囲を超えた」
言動とは
社会通念に照らし、当該言動が明らかに
当該事業主の業務上必要性がない、又は
その態様が相当でないものを指します。
● 例
・業務上明らかに必要性のない言動
・業務の目的を大きく逸脱した言動
・業務を遂行するための手段として不適
当な言動
・当該行為の回数、行為者の数等、その
態様や手段が社会通念に照らして許容
される範囲を超える言動
この判断に当たっては、様々な要素(当
該言動の目的、当該言動を受けた労働者
の問題行動の有無や内容・程度を含む当
該言動が行われた経緯や状況、業種・業
態、業務の内容・性質、当該言動の態様
・頻度・継続性、労働者の属性や心身の
状況を総合的に考慮することが適当です。
その際には、個別の事案における労働者
の行動が問題となる場合は、その内容・
程度とそれに対する指導の態様等の相対
的な関係性が重要な要素となることにつ
いても留意が必要です。
==================
なお、「労働者」となっているのは、こ
れが「職場のハラスメント」に関する定
義だからであって、「労働者」でなくて
も「パワハラ」の定義は同じです。
具体的に、どんな行動が「パワハラ」に
なるのか、というのは、例えば、相手に
対して「こんな簡単なこともできないの
か」といったひどい暴言を吐くとか、必
要以上に大声で長時間叱責し続けるとい
うようなケースは「パワハラ」に該当す
るとされています。
週刊文春に書かれているような言動を上
級生が行っていたとすれば、間違いなく
「パワハラ」に該当するでしょう。
自分は厳しく指導しているつもりでも、
それが度を過ぎると、あるいは指導の枠
から外れると「パワハラ」になることに
は注意すべきでしょう。
それは、時代が変わったからというので
はなく、本来の在り方になったというべ
きでしょう。