妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

真風さんが『カジノロワイヤル』で退団しない理由に反論する。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


ある方がブログで「真風涼帆さん「カジ
ノ・ロワイヤル」が退団公演ではない3
つの理由」という記事を載せていました。


私は、真風さんが『カジノロワイヤル』
で退団する可能性は、7~8割くらいか
な?と思っていて、2~3割くらいは、
退団しない可能性もあるかなと思ってい
るのですが、その方の退団しないという
理由には少々疑問を感じます。


その理由というのは、次の3つです。


①一本物での退団は、ネバセイ初演以来
 ない。
②退団公演は「別れ」を連想させるもの
 になるが、ボンドの「はじまりの物語」
 である。
③退団公演はあて書きが基本だが、あて
 書きではない。


まず、①の理由ですが、これは「最近は」
ない、ということで、元宙組の和央よう
かさんは、2006年7月に『NEVER SAY G
OODBYE―ある愛の軌跡―』で退団して
いますし、元月組トップスターの彩輝直
さんも2005年5月に『エリザベート』で
退団しています。
したがって、劇団の方針とか特別の理由
があればともかく、今後も絶対ないとい
う断定はできないでしょう。


②の理由は、さらに根拠が弱いです。
ジェームズ・ボンドの原作は、12の小説
と2つの短編小説集です。『カジノ・ロワ
イヤル』は、その第1作です。


宝塚で順番に上演していくというならば
ともかく、どれか1作となれば、やはり
第1作の『カジノ・ロワイヤル』という
ことになるのではないでしょうか?
トップの退団作品のタイトルや内容が
「終わり」を連想させる作品が多いとの
ことのようですが、必ずしも、そうでは
ありません。
例えば、元花組トップスターの明日海り
おさんの退団作品は、『A Fairy Tale -青
い薔薇の精-』で、終わりというより「再
生」を思わせるような作品です。


③の理由は、一応なるほどと思うような
内容です。
そこの部分を引用してみます。
==================
しかし前述のとおり、ジェームズ・ボン
ドはイギリスの国民的ヒーローであり、
世界的に人気のキャラクターです。
すでに確固たるイメージがあるキャラク
ターを元に書き下ろす場合は、「あて書
き」と言わないのが普通だと考えます。
繰り返し映画化、ドラマ化が行われてい
る「金田一耕助」シリーズや、今春地上
波やCSなどで一挙放送された「金田一
少年の事件簿」シリーズを思い起こして
いただけると、イメージしやすいのでは
ないかと思います。
あれらは「あて書き」とは呼ばれません。
逆に早霧せいなさんの退団公演「幕末太
陽傳」のように、映画や舞台がすでにあ
っても、ある程度自由な解釈が許されて
いる作品は、あて書きと呼べるのではな
いでしょうか。
「カジノ・ロワイヤル」は、映画「007」
シリーズがヒットを飛ばし続けても、な
かなか映像化の許可が下りませんでした。
1962年のシリーズ開始から、2006年まで
映像化を待たなければならなかったので
す。(それ以前に別の会社で2回映像化さ
れています)
それだけ厳重に管理されている作品です
から、真風さんに寄せて作り上げるのは、
難しいでしょう。

現代風に設定をアレンジした映画版と異
なり、時代背景を変えずに舞台化するこ
とからも、原作に忠実である可能性が高
いと思います。
==================

もっともらしい理屈ですが、よく読むと
論理が破綻しています。
「それだけ厳重に管理されている作品」
がなぜ、女性だけが演じる宝塚歌劇団で
の舞台化が許可されたのでしょうか?
しかも、ミュージカルにしてしまってい
ます。とても「原作に忠実」になるとは
思えません。
現在、宝塚大劇場で上演されている『Hi
GH&LOW』もオリジナルを宝塚風にアレ
ンジしています。
『カジノ・ロワイヤル』も当然、宝塚風
にアレンジされて、真風涼帆版ジェーム
ズ・ボンドになるだろうという事は想像
に難くありません。


映画版のジェームズ・ボンドは、男優で
ある(男役ではありません)という制約
があります。次のとおりです。
==================
『007』シリーズのプロデューサーであ
るバーバラ・ブロッコリも昨年、「ジェ
ームズ・ボンドはどの人種にも当てはま
りますが、彼は男性なのです」と次期ボ
ンドについてVarietyにコメント。「男性
キャラクターを女性に演じてもらうこと
に、そこまで興味がありません。女性は
もっと奥深い存在なのです。わたしたち
は、新しい女性キャラクターを生み出す
べきだと思うんです」とダニエルと同様
の考えを明かしていた。
==================
つまり、女性がジェームズ・ボンドを演
じるということは、少なくとも映画版で
はこれからもあり得ないことになります。


※余談ですが、舞台化もされている漫画
『憂国のモリアーティ』には、男装した
女性のジェームズ・ボンドが出てきます。
その実体は、アイリーン・アドラーの変
装です。


しかも、映画版では、ジェームズ・ボン
ドは、基本的に(例外はありましたが)
英国人俳優が演じています。
この方が言われるように「ジェームズ・
ボンドはイギリスの国民的ヒーロー」だ
からです。
次回作から俳優が変わることになります
が、候補に挙げられているのは、すべて
英国人の男優です。
むしろ、映画版の方が原作に忠実です。


以上見てきた通り、この方が主張する
「真風涼帆さん「カジノ・ロワイヤル」
が退団公演ではない3つの理由」は、必
ずしも十分な根拠ではないという事です。


ただ、忘れてはならないのは、最後は真
風涼帆さんご本人の意思だということで
す。
『カジノ・ロワイヤル』で退団しない可
能性だって十分あります。
ただ、それは、上の3つの理由ではない
と思います。上の3つの理由は、過去そう
だったというだけで、真風さんの意思が
考慮されていません。
そこが最大の欠点です。


真風さんがいつ退団したいのか、どの演出
家の作品で退団したいのかの2点が重要で
はないかと思います。


私の意見は(↓)です。