妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

やっぱり凄い!!星組公演『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』観劇感想②

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


感想①の続きです。


まず、公演プログラムからストーリーで
す。
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 古く寂れた芝居小屋。座長風の衣装を
身にまとったジェロニモ(暁千星さん)
が登場し、200年経った今も色褪せない
物語の幕開けを告げる。それは、流れる
血のように赤く、深い影のように黒い、
普遍の愛で彩られた物語ー。
 ナポレオンが没し、再び王政復古とな
った頃のフランス。東南部の小都市ヴェ
リエールに貧しい製材業の息子として生
まれたジュリアン・ソレル(礼真琴さん
)は、繊細な神経と聡明な資質、そして
強い自尊心をそなえた美しい青年であっ
た。ナポレオンを崇拝するジュリアンは、
立身出世をし、富と名声を手に入れると
いう強い野望を秘めていた。そんな彼の
もとに、町長であるレナール家の家庭教
師の話が舞い込む。レナール(紫門ゆり
やさん)は、貧民収容所の所長ヴァルノ
(ひろ香祐さん)と何かにつけて競い合
っており、子供達に家庭教師を付けるこ
とで彼と差をつけたいと考えたのだ。
レナール家の人々は、家庭教師としてや
ってきたジュリアンが予想外に初々しく
素朴であることに驚いたものの、聡明な
彼をすぐに気に入り、信頼と尊敬の眼差
しを向けるようになっていく。
 レナールには信心深い貞淑な妻ルイー
ズ(有沙瞳さん)がいた。恋を知らずに
結婚したルイーズは、周りの男達とは違
うジュリアンに今までにはない胸のとき
めきを覚える。ジュリアンもまた彼女の
情熱と美しさに次第に心奪われていくが、
上流社会への嫌悪感や敵対心を拭いきれ
ず葛藤する。ある時ジュリアンは意を決
し、敬愛するナポレオンが敵に対峙する
ように、ルイーズを征服するべく彼女に
愛を告げる。ジュリアンの愛をルイーズ
も受け入れ、心から想い合う二人だった
が、やがて二人の仲を密告する手紙がレ
ナールのもとに届く。レナールに問い詰
められたルイーズは、体面を保つべく、
ジュリアンに冷たい言葉を投げつけて家
から追い出してしまうのだった。ルイー
ズの中に見つけた光を失ったジュリアン
は、傷心のままパリへと向かう……。
 パリへ出てラ・モール侯爵(英真なお
きさん)の秘書となったジュリアンは、
有能な仕事振りで侯爵に重用されるが、
貴族達の堕落ぶりに憤慨していた。かつ
てヴァルノの屋敷で知り合った歌手のジ
ェロニモは、ジュリアンにラ・モール侯
爵の一人娘マチルド(詩ちづるさん)と
新しい恋のゲームをしてはどうかと勧め
る。マチルドは、父が結婚相手にと推す
青年貴族達に物足りなさを感じ、退屈な
日々を過ごしていた。偉大な英雄であっ
た先祖ボニファス・ド・ラ・モールのよ
うに燃え上がるような気高さを持った男
性を求めるマチルドは、ジュリアンにそ
の姿を重ね合わせ、試しに彼を誘惑する。
恋の駆け引きをするうちに、情熱的に愛
し合うようになっていくジュリアンとマ
チルド。はじめは反対していたラ・モー
ル侯爵も、遂に二人の結婚を認める。マ
チルドとの結婚により、ジュリアンはか
ねてから望んでいた地位と名誉を手に入
れることになったのだ。いよいよジュリ
アンの立身出世への扉が開かれたかに思
えたのだが……。
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私は、前回の月組愛知公演の『赤と黒』
を観劇しているのですが、それと比べる
と歌が増えた分、やや説明不足になった
かな、と思います。


一番大きなのは、何で貧しい製材所の息
子だったジュリアンが聖書をラテン語で
諳んじてみせるだけの学識を得て、レナ
ール家の家庭教師に採用されたか、とい
う点です。


柴田侑宏氏の脚本では、その部分が描か
れていて、ジュリアン(珠城りょうさん)
は、最初は、軍人(つまり軍服の赤)に
なって、立身出世を目指そうとしますが、
ナポレオンの没落によってそれは叶わず、
代わりに聖職者(つまり僧服の黒)にな
って、栄達を目指すために、司祭のシェ
ラン(颯希有翔さん)に就いて、ラテン
語を習得します。
ですから、レナール夫人の前で聖書をラ
テン語で諳んじることが出来たのです。


なお、「歌劇」の鼎談を読むと、フラン
ス版は、「全体的に暗くドロドロした雰
囲気、且つハードロックで宝塚のイメー
ジとはかけ離れた作品」なんだそうです。
それを谷貴矢氏の潤色・演出で宝塚に合
った、また、礼真琴さんに合った作品に
仕上げた手腕には、もう、凄い!!とし
か言いようがありません。
むしろ、柴田侑宏氏演出版の重くて暗い
イメージが無くなったように思います。


ただ、決して明るい作品ではありません。
最後は変わりませんから。


ですから、星組全員が出演している訳で
はないですが、宝塚の総力が結実した作
品かな、と……。パワフルです。


さて、鼎談では、礼真琴さんのジュリア
ンのイメージは、「クズ」なんだそうで
す。
「クズ」と言えば「クズ」なんでしょう
ね。少なくとも、現在の人から見ると、
共感できる人物には描かれていないです。
それは、他の登場人物も同じです。
これは、200年前の王政復古時代のフラ
ンスの物語です。
そうして観ると、ちょっと、見方は変わ
るのかなと……。
ただ、200年経っても、この作品で描か
れた人の「愛」は、不変でしょう。


ジュリアンとレナール夫人との恋愛は、
まだ、純粋なところがあって、炎の色の
「赤」。
ところが、そのレナール夫人に背かれて、
マチルドの愛を踏み台にして、ジュリア
ンが自分の野心を叶えようとする愛の色
は「黒」。


ただ、貧しい平民のジュリアンが、美貌
で、才能があるがゆえに、その野心を満
たすために、「愛」をも踏み台にしての
し上がろうとする姿を礼真琴さんは、見
事に演じています。


しかし、思い通りに物事は運ばず、ジュ
リアンは破滅へと導かれていきます。
そのきっかけは、レナール夫人が署名し
た一通の手紙。二度も裏切られたジュリ
アンは、憤りを抑えきれず、レナール夫
人に銃口を向けます。
一発の銃声。そして、暗転。


で、完全にネタバレになるので、ここで
ストップ。

明日は、ライブ配信、ライブ中継があり
ますからね。
私も、ライブ中継を観に映画館へ行く予
定です。

ところで、この作品は、「ロック・ミュ
ージカル」です。
公演プログラムで、演出家の谷貴矢氏は、
「一見闘いの終わった世界での、「世界
と私」の様々な闘いの話。なるほど、ロ
ックだな。」と書かれています。

「世界」は大袈裟ですが、この作品は、
ジュリアンと王政復古時代のフランス社
会、そこに生きる人々との「闘い」の話
なのでしょう。
だから、ロック・ミュージックと合うの
だろうと……。

谷貴矢氏の話は、こう続きます。

「だが、それは勝手に気づいた訳ではあ
りません。そう思ったのは「『ロックオ
ペラ赤と黒』と礼真琴」の取り合わせを
聞いてからでした。礼真琴は間違いなく
闘いの人です。あの才能の裏に、どれだ
けの努力と葛藤があったのか。つい押し
付けてしまう期待と責任に、どんな闘い
で応えてきたのか。見えない、見せない
からこそ愛さざるを得ません。だからこ
そ、「『ロックオペラ赤と黒』と礼真琴」
の取り合わせに、双方向の強い因果関係
を感じたのです。
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この言葉を嚙みしめて、さて、明日はラ
イブ中継・配信です。