妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

永久輝せあさんの演技が光る、花組公演『冬霞の巴里』を観劇しました。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、花組公演『冬霞の巴里』を観に、梅田芸
術劇場シアター・ドラマシティへ行ってきました。


東上公演は、愛月ひかるさんの『マノン』以来、
久し振り。
席は19列目で、ちょっと遠かったのですが、舞台
は良く見えました。
右隣の人は、一昨日に続いて2回目の観劇とのこと
(その隣のお友達との会話の内容です)。
うらやましい~。
2回もチケットが取れたのと、2回も観劇に行ける
というのと2重の意味でうらやましいです。


さて、いつものとおり、公演解説とストーリーを書
いておきます。


公演解説です。


時は19世紀末パリ、ベル・エポックと呼ばれる都市
文化の華やかさとは裏腹に、汚職と貧困が蔓延り、
一部の民衆の間には無政府主義の思想が浸透してい
た。
そんなパリの街へ、青年オクターヴが姉のアンブルと
共に帰って来る。二人の目的は、幼い頃、資産家の父
を殺害した母と叔父達への復讐であった。父の死後、
母は叔父と再婚。姉弟は田舎の寄宿学校を卒業した後、
オクターヴは新聞記者に、アンブルは歌手となって暮
らしていたが、祖父の葬儀を機にパリへ戻った。怪し
げな下宿に移り住む二人に、素性の分からない男ヴァ
ランタンが近づいて来る。やがて姉弟の企みは、異父
弟ミッシェル、その許嫁エルミーヌをも巻き込んでゆ
く…。
古代ギリシアの作家アイスキュロスの悲劇作品三部作
「オレステイア」をモチーフに、亡霊たち、忘れ去ら
れた記憶、過去と現在、姉と弟の想いが交錯する。復
讐の女神達(エリーニュス)が見下ろすガラス屋根の
下、復讐劇の幕が上がる…!


ストーリーです。


 19世紀末のパリ。ベル・エポックと呼ばれる都市
文化の華やかさとは裏腹に、汚職と貧困が蔓延り、
一部の民衆の間には無政府主義の思想が浸透してい
たー。
 そんなパリの街へ、青年オクターヴが姉のアンブル
と共に帰って来る。二人の目的は、幼い頃に殺された
資産家の父オーギュストの死の真相を探り、復讐を果
たすことー。姉弟は、母クロエと父の弟ギョームが手
を組んで父を亡き者にしたと確信していたが、証拠は
なかった。父の死後間もなくクロエはギョームと再婚
し、二人の間にはミッシェルという息子も生まれた。
一方、オクターヴとアンブルは、母と叔父への疑惑を
胸に秘めたまま、田舎の寄宿学校へ入学、その後オク
ターヴは新聞記者に、アンブルは歌手となり自立した
生活を送っていたが、祖父の葬儀を機にパリへ帰って
きたのだった。
 オクターブとアンブルは、実家のヴァレリー家へは
戻らず、下町のうらぶれた下宿に住むことにする。そ
の下宿は、一風変わった住民達の溜り場だった。中で
もヴァランタンという一際謎めいた男は、場違いに身
なりの良いオクターヴに強い関心を示す……。
 祖父の葬儀の日、一家は久し振りに顔を合わせる。
パリ警視庁長官だったギョームは今では警視総監に上
り詰め、クロエは社交界の女王と謳われ華やかな生活
を満喫していた。ミッシェルは法学部の学生となり、
恋人であるグランジュ家の令嬢、エルミーヌとの婚約
が整っていた。義姉兄との久し振りの再会を心から喜
び、婚約者を紹介するミッシェル。その屈託のない笑
顔に、オクターヴとアンブルは自分達が父の死と共に
失ったものを見せつけられたように感じる。そして、
父の死を忘れ何事もなかったように振る舞う母と叔父
への復讐を改めて心に誓うのだった。
 カフェ・コンセールで働きながら、父の殺害に関わ
った人物と接触する機会を待ち続けていたアンブルは、
ついにその人物、父のかつての部下ブノアと出会う。
アンブルは美貌を武器に、今や大資産家となったブノ
ワに近づく。そんなアンブルを、オクターブは複雑な
心境で見詰めるのだった。
 深い夜の闇に包まれていくパリの街で、救いを求め
る姉弟を、復讐の女神達(エリーニュス)が静かに見
下ろしていたー。


さて、コメントです。


これは名作だと思います。


作・演出は、『龍の宮物語』の指田珠子先生です。
まだ、この『冬霞の巴里』で2作目ですが、将来が
楽しみな演出家です。
古代ギリシアの作家アイスキュロスの悲劇作品「オ
レステイア三部作」をモチーフに、見事な復讐劇を
創作しました。
なお、事前予習として「オレステイア三部作」につ
いて知っておく必要はありません。単なるモチーフ
であって、異なる物語です。


また、ミステリーの要素もあり、物語の進行につれ、
過去に隠されていた秘密が次第に冬霞の中からその
姿を現してきます。
オクターヴとアンブルの父親は、何故殺されたのか、
殺されなければならなかったのか。その真相を姉弟は
最後に知ることになります。
したがって、初めて観劇する方は、他の方のネタバレ
の記事は読まない方がいいと思います。


オクターヴとアンブルの復讐の物語に絡んでくるのが、
アナーキスト(無政府主義者)のヴァランタン達です。
一部の富裕層と多数の貧民たちが暮らす19世紀末のパ
リで、貧民を虫けらのように扱う富裕層に対して憎悪
の念を抱き、殺戮を繰り返すヴァランタン達。


オクターヴは、ヴァランタン達が隠れ家としている下宿
に住むことによって関りを持ってしまいます。
ヴァランタン達の存在が、この物語にさらに暗い影と
緊張感をもたらします。


曲もまた、素晴らしく、この作品のダークな雰囲気に
見事にマッチしています(主に、永久輝せあさんが歌
うのですが)。


配役です。(公演プログラムに記載のものを一部変更
しました)


オクターヴ:永久輝せあ
(物語の主人公。父親を殺され、その復讐を誓う。新
聞記者)


アンブル:星空美咲
(オクターヴの姉。オクターヴとともに父親の復讐を
図る。カフェ・コンセールの歌手)


ジャコブ爺:一樹千尋
(下町の下宿の住民の老人。以前はヴァレリー家の主
治医だった。)


クロエ:紫門ゆりや
(オクターヴとアンブルの母親。オーギュストの死後、
義弟のギョームと再婚した。誇り高い人物。)


サラ・ルナール:美風舞良
(下宿の女将。食堂もやっているらしい。家賃を支払
わない人には容赦しない。)


オーギュスト:和海しょう
(オクターヴの亡父。百貨店経営で財を成した実業
家。幼いオクターヴには優しい父親だったが……。)


ギョーム:飛龍つかさ
(オクターヴの叔父。オーギュスト亡き後のクロエ
の再婚者。警視総監)


ヴァランタン:聖乃あすか
(下宿の住民。正体はアナーキストで、オクターヴ
に接近してくる。)


ミッシェル:希波らいと
(ギョームとクロエの息子。法学生で誠実な人物。)


カジミール・ブノワ:峰果とわ
(大資産家。クロエ、ギョームとともにオーギュスト
を殺した人物。)


シルヴァン:侑輝大弥
(医学生。ヴァランタンの仲間)


エルミーヌ・グランジュ:愛蘭みこ
(ミッシェルの婚約者)


モーリス:海叶あさひ
(オクターヴの同僚の新聞記者)


シャルル:美空真瑠
(新聞売りの少年)


少年 オクターヴ:初音夢


少女アンブル:湖春ひめ花


主な出演者の感想です。(あまり詳しく書くと
ネタバレになるので)


永久輝せあさん
愁いを帯びた表情が堪りません。グッズ売り場
で写真を売っていたので、買ってしまいました。
父親を殺害した(子供の時に姉と一緒に母親と叔
父とブノワの密談を聞いてしまいます)3人に対
する復讐心を強く抱きながら、復讐に迷いもある
心の葛藤を見事に演じています。
永久輝せあさんが花組のトップになると、ダンサ
ーである柚香光さんがトップの今の花組と雰囲気
が大分変わるのではないかと思います。
「芝居の花組」になったりして……。
さすがに主役で、歌う場面が多いのですが、割合
難しいと思える曲を歌いこなしています。


星空美咲さん
105期生でヒロイン役に抜擢です。星組の詩ちづる
さんと同期になります。
105期生とは思えないしっかりした演技です。今回の
作品のヒロイン役を得たことで、今後の注目株(将来
のトップ娘役候補)です。歌う場面は少なかったです
が、これならば、十分でしょう。


聖乃あすかさん
ちょっと危険な香りのするアナーキスト役です。
大分、濃いメイクをしていて、精悍な顔つきになっ
て、配役を事前に見ていたから分かりましたが、そ
うでなければ、すぐには分からなかったのでは、と
思います。
さすがに100期の優等生。難しい役をこなしています。
こちらも歌う場面は少ないですが、安定した歌唱力で
す。
本公演ならば、水美舞斗さんの役でしょう。


紫門ゆりやさん
専科からやってきて、まさかの女役です。
優しい顔立ちですので、女役も似合いますが、今回は、
上流階級の貴婦人役で少し高慢な役です。が、さすが
のベテラン、見事な演技です。
歌はなかったと思います。


飛龍つかささん
悪役です。飛龍つかささんの悪役は、あまり記憶がない
のですが……。
口髭をつけていて、ちょっと貫禄があります。
警視総監の雰囲気が良く出ていました。
こちらも歌はなかったように思います。


希波らいとさん
上流階級のお坊ちゃん役です。
希波らいとさんの演じるミッシェルとその婚約者のエル
ミーヌが善人役でこのダークな物語に唯一明るさをもた
らします。
ただ、貧困層からすると上流階級に属するこの二人は本
当に善人なのか?という疑問を抱かせます。
本公演では、聖乃あすかさんの役でしょう。それだけに、
比べてしまうのですが……。
歌はあったと思います。あまり記憶にないので、まあ無
難だったのでしょう。


和海しょうさん
オクターヴとアンブルの父親役です。亡霊として登場か
オクターヴの幼少期の想い出の中で登場します。オクタ
ーヴに対してはいつも優しい微笑みを浮かべていますが
……。
歌はなかったと思いますが、セリフはあります。


今回は、『TOP HAT』組と二手に分かれたことにより、
下級生まで役が付いていて、セリフのある人も結構いまし
た。


『TOP HAT』は、明日観劇に行きます。