妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

柚香ルドルフが良く似合う、花組公演『うたかたの恋』小柳バージョン・感想②

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


前回の続きの記事になります。


ちょっと、感想をランダムに。


他の方の感想も読もうとしたのですが、
あまりなくて、中には、?と思える感想
もあって、参考にならず。


で、私独自の感想になりますが、大丈夫
かな~。


まず、柚香光さんの、あのポスター画像
にある白い軍服姿が、本当に似合ってい
ました。この作品は、柚香光さんが演じ
るための当て書きではないか、と思うほ
どです。


そして、星風まどかさんが演じる男爵令
嬢マリー・ヴェッツェラがいかにも清純
で可憐で。星風まどかさんは、こんな演
技も出来るのだと……。
宙組トップ娘役から花組トップ娘役に組
替えしてきた経緯はともかく、柚香光さ
んの相手役が星風まどかさんで本当に良
かったなと思いました。


そして、マリーがほとぼりが冷めるまで、
トリエステの叔父の所へ預けられている
間のザッシェルの店の場面。
ルドルフが自暴自棄になって、乱れた服
装で、ーそれがまた似合っているー何と
拳銃を鏡に映った自分の姿に向けてーと
いうことは観客席に向けてー一発撃って
次に自分ののど元に拳銃をあてて、今に
も引き金を引こうとするところへ、マリ
ーが駆け込んできて……。
いや、この場面、緊迫しましたね。
柚香光さんの狂気に満ちた演技が凄いで
す。


「名作とは言え、古臭い」という感想を
書いている方がみえますが、この方、前
作以前の作品を観ていないのでは?
小柳潤色・演出で『うたかたの恋』は、
新たに生まれ変わったと思います。


最初のルドルフとマリーの場面。次のウ
ィンナ・ワルツの場面。これがあるから、
その次のドイツ大使館での最後の舞踏会
の場面が活きると思うのですけど……。


そして、水美舞斗さんの語り手も必要最
小限だと思います。特に、邪魔になると
は思われませんでした。


微笑みながらも、どこか陰のある皇太子
ルドルフ。リストもそうでしたが、こう
いう役を演じると柚香光さんは上手いな、
と思います。


その皇太子ルドルフの自室に招かれたマ
リー。その質素さに驚きながらも、部屋
を見て回ります。ルドルフの机の上には、
髑髏と一丁の拳銃。


髑髏は、その前のブルク劇場でハムレッ
トが手に持っていたもの。
ここで、ハムレットを読んだこともない、
舞台を観たこともない私は、?となるの
ですが、どうもこれは、『ハムレット』
の第五幕第一場で出て来る墓掘りが取り
出す道化のヨリックのしゃれこうべ。
この場面のハムレットと墓掘りのやりと
りです。ホレイシオは、ハムレットの腹
心の友。
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ハムレット 誰かな。
墓掘り しようもねえ野郎だよ。ぶどう
酒をひと瓶おいらにぶっかけやがって。
こいつあね、だんな、いいかね、だんな、
ヨリックのしゃれこうべですぜ、王さま
お抱えの道化の。
ハムレット これが?
墓掘り そうよ。
ハムレット 見せてくれ。ああヨリック!
 よく知ってたんだ、ホレーシオ。冗談
の種の尽きない男でね、面白いのなんの
って。よくおぶってもらったものだ。そ
れが、ぞっとするな、この姿は。吐きそ
うだ。何度もキスしてやった唇がこのへ
んについていたわけか。もう皮肉は飛ば
さないのか? 悪ふざけや歌や、満座を
沸かせた頓智のひらめきはいまいずこ?
おまえのにやにや笑いをまねするやつも
いないのか、がっかりだな、あごが落ち
てしまって。母上の部屋へ行って教えて
やってくれ、おしろいを1インチの厚さ
に塗ってもそのうちこうなりますよと、
笑わせてやってくれ。なあホレーシオ、
訊いていいか。
ホレーシオ 何でしょう?
ハムレット アレクサンダー大王も土の
中ではこんな感じか?
ホレーシオ ですね。
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この場面については、こんな解釈が、
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この世の手に余るものをあれこれ考えて
も仕方がない、ヨリックの髑髏を手にし
てハムレットはあるがままそのままの死
を実感し、命の限界を受け入れたのです。
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だとすれば、髑髏も、護身用だとルドル
フがマリーに説明した拳銃も、マイヤー
リンクへと結びついていきます。


そして、最後の場面。マイヤーリンクで
二人は最期を迎えます。


前回、観た星組公演では、紅ゆずるさん
演じるルドルフがマリーを拳銃で撃とう
として、何度もためらうのですが(ここ
だけ覚えています)、今回は、ルドルフ
は、ちょっとだけためらいはするものの、
すぐ、銃口をマリーに向けます。
そして、舞台は暗転し、2発の銃声が響
きます。


どちらの終わり方がいいのか、好き好き
だと思いますが、今回は、ややドライか
な、と……。


また、ハプスブルク家の紋章の双頭の鷲
がハプスブルク家の象徴として、幾度も
現れます。
ルドルフとマリーは、死によってのみ、
その双頭の鷲の呪縛から逃れることがで
きたのだ、と思います。
それが、冒頭のルドルフとマリーが、最
後に、双頭の鷲のように体を反らせて、
両腕を広げる場面だと、私は思うのです
が……。