妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

『冬霞の巴里』そんなに難しい話ではないと思うが……。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


永久輝せあさん主演の『冬霞の巴里』。
どうも皆さんの感想を読んでいると、バ
ラバラという感じがします。


そんなに難しい話ではないだろうと思う
のですが、ただ、少しわかりづらいのかも
しれません。


まず、公演解説に「古代ギリシアの作家ア
イスキュロスの悲劇作品三部作「オレステ
イア」をモチーフに」と書いたのがまずか
ったと思います。


「オレステイア」は単なる「モチーフ」な
のに「オレステイア」との比較をしてしま
った人達がいました。


『冬霞の巴里』は、「オレステイア」とは、
時代設定も作品のテーマも異なる物語です。
単なる復讐譚ではありません。


まず、時代設定を見てみましょう。
19世紀末のパリです。
公演解説には、「時は19世紀末パリ、ベル・
エポックと呼ばれる都市文化の華やかさとは
裏腹に、汚職と貧困が蔓延り、一部の民衆の
間には無政府主義の思想が浸透していた。

と書いてあります。


時々、この公演解説は何を言いたいのか、
と思うことがあるのですが、少なくとも
「ベル・エポック」は不要だと思います。
ただ、「ベル・エポック」が出てくるこ
とで、19世紀末の中でももうすぐ20世紀
を迎える時代設定であることは分かりま
す。
※1900年の第5回パリ万国博覧会はその一
 つの頂点であった、とされています。


その頃のフランスは、第三共和政の全盛期
(1879-1914)であることは分かるのです
が、パリの街がどうであったかまでは、あ
まりよく分かりません。
この時代に関連する作品も探してみたので
すが、『アルセーヌ・ルパン』くらいしか
出てきませんでした。


ただ、革命(内乱)や大きな戦争でもない限
り、大きく世の中が変化するとも思えません
ので、この頃のパリは、一部の富裕層(それ
も貴族とそうでない者とに分けられていま
す)と富裕層に搾取される大多数の貧困層か
ら成り立っていただろうと思われます。


そして、富裕層側が主人公オクターヴの父親
を始めとするヴァレリー家の人々、貧困層側
がアナーキストのヴァランタンを始めとする
サラ・ルナールの営む下宿屋の住人達です。


この社会階層の対立構造の中に復讐譚を織り
込んだのが、『冬霞の巴里』であろうと思い
ます。


上演時間が二時間というのも少し短かったの
かもしれません。
それで話が分かりづらくなった面もあるかと
思います。


ところで、以前にも書いたように、この話は
ミステリー要素があり、話が進むにつれ、真
相が分かってくるところが面白いと思うので
すが、ライブ配信を観た人がネタバレの感想
を書いてしまった(しかも御丁寧にラストの
場面のセリフまで書いている)のは、いかが
なものかと思います。


まだ、東京公演が明日から始まるというのに
……。