妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

一之瀬航季さん主演のバウホール公演『殉情』を観劇しました。

今日は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、一之瀬航季さん主演の『殉情』を
観に、宝塚バウホールへ行ってきました。


今更、谷崎潤一郎「春琴抄」なんて、どう
なのか、と思っていましたが、現代風にア
レンジされていて、結構、面白かったです。


帆純まひろさん主演の方も観たかったので
すが、残念ながら、こちらは落選。
一之瀬航季さん主演の方だけでも当選して
良かったです。
両方観に行った方もみえるようですが、ど
うやったら、両方観れるのか訊いてみたい
です。


まず、公演プログラムからストーリーの紹
介です。
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 現代の大阪、下寺町の墓地で、マモルと
ユリコは二つ寄り添うように建てられた春
琴と佐助の墓石を見つける。そこへ郷土史
研究家の石橋が現れて、「春琴抄」につい
て語り始めるー。
 時は明治初頭。佐助が薬問屋鵙屋へ奉公
に上がったのは十三歳の時。鵙屋の次女お
琴の目は、既に光を失っていた。佐助は琴、
三味線の稽古に通うお琴の手曳きを日課と
しており、彼女の美しさ、音曲の才能を崇
拝する忠実な下僕であった。お琴は師匠春
松検校に認められ、“春琴”という号を与え
られる。相弟子で芸者のお蘭は春琴の才能、
器量、家柄を妬み、悔しがるのであった。
 佐助は、春琴への思慕から夜中にこっそ
りと三味線の稽古を始める。暗闇での稽古
は、唯一佐助が春琴と「闇」の世界を共有
できる、喜びに満ちた時間であった。だが、
それも大番頭に見つかり、佐助は大目玉を
食らう。ところが、意外にも春琴の助け舟
が入り、以後、佐助は春琴から直接指導を
受けることになった。春琴の指導は峻烈を
極め、いじめの様相を呈してくるようにな
る。傲慢な春琴の叱声を浴びても一言も逆
らわず、深く慕い続ける佐助を見て、鵙屋
夫婦の安左衛門としげは、二人の縁組を考
えるのだった。実は、春琴も心うちでは佐
助を愛していたのだが、素直に振舞えなか
ったのだ。
 お琴の師匠として看板を出した春琴の元
には、前々から春琴に好意を抱いていた大
店の若旦那利太郎も弟子入りした。ある日、
利太郎は梅見の宴に春琴を招待し、その席
で春琴に言い寄ろうとするが、逆に突き飛
ばされてしまう。さらに、春琴は謝りに来
た利太郎に厳しい稽古をつけ、撥で眉目を
殴りつけた。二度までも怪我を負わされた
利太郎は激怒し、捨て台詞を残して帰って
しまう。その夜、何者かが春琴宅へ忍び込
み、就寝していた春琴は顔に煮え湯を浴び
せかけられ、大火傷を負う。
 美しかった春琴の顔に火傷の痕が残った。
この傷跡を佐助だけには見られたくないと
言う春琴の言葉を聞いた佐助は、自らも盲
目となり、春琴と同じ世界で生きようと決
心するー。
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さて、物語は、現代の大阪で、ユーチュー
バーのマモルとユリコが春琴と佐助の墓を
訪れ、郷土史研究家の石橋から「春琴抄」
の話について聞くところから始まります。
どうやら、マモルはYouTubeで「春琴抄」
の物語を発信するつもりの様子。
今更、「春琴抄」の話をYouTubeで発信し
て誰が読むのか?と思ったのですが、原作
(実はインターネットで原作全部が読めま
す)では、冒頭、語り手が大阪市内下寺町
の浄土宗の某寺にある春琴のお墓を訪ねる
ところから始まります。
今回の演出では、この語り手を二人の若い
ユーチューバーに置き換えたということな
のでしょう。


ただ、この三人が冒頭だけでなく、物語の
途中にも最後にも出てきて、何かサブスト
ーリーになっていきます。
この演出は、ちょっと、人によって意見が
分かれそうです。


ただ、全体としては、オリジナルの物語を
メインとしながらも、踊りなどを現代風に
アレンジしていて、あまり、古臭さを感じ
させません。
また、敵役の利太郎役の峰果とわさんが、
アドリブで笑いを取ったりしていて、シリ
アスなこの物語の場を和らげてくれていま
す。


で、感想ですが、帆純・朝葉バージョンは
観ていないので比較はできないのですが、
佐助役の一之瀬航季さんは、ちょっと、優
しい顔立ちで、笑顔が可愛くて、春琴の苛
めにも笑顔で耐え抜き、心の底から春琴を
慕う佐助役にはぴったりだと思いました。
歌もこれだけ歌えれば十分だと思います。
佐助の春琴に対する心のこもった歌でした。
今後の一之瀬航季さんの活躍に期待です。


一方の春琴役の美羽愛さん。
可愛いらしい顔立ちで、目を開ける場面が
あるのですが、艶やかでした。
ソロで歌う場面があるのですが、まあまあ
というところでしょうか。
ただ、春琴ですから、もう少し嗜虐的なお
芝居をしないと、この作品の内容が伝わっ
て来ないのでは、と感じました。
そのあたりは、まだ、これからという感じ
がします。


あとは、安左衛門役の羽立光来さんとしげ
役の美風舞良さん。いかにも大店の主人夫
婦という感じが良く出ているのですが、な
にかおっとりしている感じで、だから、娘
があんな我儘に育ってしまったんだ、と思
ってしまいました。


最後に、利太郎役の峰果とわさん。
先に書いたように、アドリブで客席を盛り
上げてくれます。さすがに達者な演技力で
飛龍つかささんの抜けた穴は、この人が埋
めてくれそうな気がします。期待していま
す。


ところで、原作では、春琴は、明治十九年
十月十四日歿、行年五拾八歳。
佐助は、明治四十年十月十四日歿、行年八
拾三歳、となっています。
ただし、モデルはいたみたいですが、実話
ではありません。