妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

月組公演『応天の門』の主要登場人物について紹介②ー「菅原道真」

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


今回は、『応天の門』の主人公の月城か
なとさん演じる菅原道真について、紹介
します。


まず、ウィキペディアの記事から引用し
ましょう。
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文章生。長谷雄からは「菅三殿」(菅原
家三男の意)、屋敷の女房からは幼名の
「阿呼さま」と呼ばれている。普段は冠
を被っているため隠れているが、病で亡
くなった兄・吉祥丸に負わされた傷痕が
額にある。
学問に秀で洞察力もあるため、業平に度
々事件への協力を頼まれている。おびた
だしい数の書籍を父・是善と共に所蔵し
ている。権謀術数はびこる都の政に嫌気
が差し、遣唐使として大陸に渡ることを
目標に精進している。一度聞けば大抵の
ことを記憶するなど秀でた才を持ち、大
学寮にはほとんど通っていない。貴重な
書物・墨に目がない。人と馴れ合うこと
が嫌いなため、屋敷に閉じこもりなこと
が多い。また、年若いため貴族社会の理
不尽さには憤りを感じている。リアリス
トで物の怪・怨霊などの迷信は全く信じ
ていない。厄介事に巻き込まれるのを嫌
い常に相談者へ突っ慳貪な対応をとるが、
頼られることや尊敬されること感謝され
ることに対しては度々喜びを隠し切れな
いでいる。相手の心理を汲み取り応じる
優しさもある。
兄の死の原因となった藤原家を憎んでい
る。是善に抗議するために数日間断食し
たり、現実逃避のために出奔したりする
など頑固で行動的なところもある。
普通の貴族と違い民衆とも分け隔てなく
接するが、家柄のせいで下級貴族や貴族
でない人間からは特別視されてしまい葛
藤している。
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ずいぶん長い人物紹介ですが、ちょっと
解説が必要かと思います。


まず、「文章生」です。「もんじょうし
ょう」と読みます。
原作の単行本の第1巻に解説が載ってい
ます。
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この時代、貴族が学ぶべき学問が定めら
れていて、そのトップに位置するのが
「紀伝道(きでんどう)」なのです。紀
伝道は中国の歴史と漢文とを学ぶ学科で、
教員は2名の文章博士。学生は文章生
20名、擬文章生20名(文章生の予備
生)という構成になっていました。
多くは貴族の子弟が試験(大学寮の寮試)
を受けて合格すると、擬文章生になりま
す。勉学を積んだ擬文章生がまた試験
(式部省の省試)を受けて合格すると、
文章生になります。このとき、成績優秀
者は、給料学生と呼ばれて、給料が支給
されました。また特に優秀な2名が文章
得業生になり、秀才試(方策試・対策と
も)を受験する資格を得ます。これは方
略策(国家戦略)を作成させる試験で、
優秀な答案を作成した者は官職に任じら
れ、栄達への道が開かれたのです。
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ということです。


この『応天の門』に登場する菅原道真は、
文章生ですので、実際の菅原道真に照ら
し合わせると、18歳~23歳の間の話
であるということになります。
なお、この『応天の門』は、東京大学史
料編纂所教授の本郷和人氏が監修してい
ますので、創作部分もかなりありますが、
かなり、史実に沿った作品になっていま
す。


学友である紀長谷雄から「菅三殿」と呼
ばれるのは、菅家の三男であるためで、
上の二人の兄はこの物語の時点では、既
に死んでいます。
ただ、宝塚の配役に吉祥丸(瑠皇りあ)
という菅家の長男が出てくるので、その
時の話は、宝塚の舞台で出てくるようで
す。


「兄の死の原因となった藤原家を憎んで
いる。」と書いてありますが、第14話の
「道真、明石にて水脈を見る事」では、
業平から「藤原が憎いか?」と訊かれ、
「…憎いのは藤原じゃありません。父
でもない。私には何も出来ないことが憎
い。」と答えています。


その後も、ちょっと、?です。
「数日間」とは原作には見当たりません
し、「現実逃避のために」道真は、出奔
したのでしょうか?ちょっと、執筆者の
主観が入っているような……。


なお、原作漫画の単行本では、冒頭で
菅原道真を、
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学者を多く輩出する菅家の子息。文章生
という宮中で学問の研究をする職につい
ているが、もっぱら自宅の書庫にひきこ
もり唐からの書物を読みふけっている。
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と紹介されています。


以前の記事(↓)で「『応天の門』は、
文章生である菅原道真と検非違使を率い
る菅原道真がバディとなって、昭姫らの
協力を得ながら、「百鬼夜行」などの京
の都に起きる怪異事件を解決するという
お話」と書きましたが、原作では、必ず
しも、この二人が一緒に事件を解決する
という訳ではなく、菅原道真だけの場合
もありますし、在原業平だけの場合もあ
ります。


在原業平がほとんど登場しない話として、
宝塚の公演解説にも出てくる「百鬼夜行」
があります。
これは、原作漫画の第18話、第19話の
「京に妖の夜行する事」という話に出て
くるのですが、訳あって、業平は、道真
とちょっと気まずい仲になっていて、代
わりに藤原常行(ふじわらのときつら)
という人物が関わります。
なぜ、この人物なのかは、以前の記事
「月組公演『応天の門』原作漫画第1巻
~第4巻を読みました~!!」(↓↓)の
中に書いてありますので、ご参照くださ
い。


また、ウィキペディアで、「貴重な書物
・墨に目がない。」と書かれているのは、
おそらく、原作漫画の第7話、第8話の
「藤原高子屋敷の怪の現れたる事」で、
道真が藤原高子に呼ばれて、相談を受け
る時に、「一本御書所の山海経」という
唐より渡来の一点物の原書と唐墨(中国
で産出された墨)の「松煙墨」(松の枝
や根を材料として作った墨)の一級品に
釣られて高子の依頼を引き受ける事を指
していると思われます。
なお、この話にも業平は登場はしますが、
関与はしません、というより関与できま
せん。理由は、(↓↓)の記事の藤原高子
の所に書いてあります。
したがって、業平は、代わりに菅原家に
仕える白梅に頼みます。


なお、原作では、道真の許婚として、島
田宣来子が登場するのですが、配役とし
て名前が出ていないので、宝塚の舞台で
は登場しません。
また、島田宣来子の父親で道真の師でも
ある島田忠臣も配役として名前が出てき
ません。
島田忠臣は、「百鬼夜行」に深い関りが
あるのですが、この人抜きで舞台の方は、
どうするんでしょうね。