壽々の雑記帳

観劇のコメントや日々の出来事・時事問題などについて綴ります。

『応天の門』この場面が??だ!!(感想②)ーストーリーを変え過ぎでは?

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


①の続きになります。


まず、幼き日の藤原基経(手古)が菅原
道真の兄の吉祥丸から教えてもらった漢
詩が出てきますので、この話から始めま
す。


字幕も何にも出ないので、???ですが、
原作通りであるなら、こういう唐の李白
の詩です。
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余に問う 何の意ぞ 碧山に棲むと
笑って答えず 心自ずから閑なり
桃花流水 杳然として去る
別に天地の人間に非ざる有り
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意味は、
「「どういう気持ちでこんな緑深い山奥
に住んでいるのか」人が私に尋ねる。
私は笑うばかりで答えない。
心はどこまでものびのびしている。
桃の花びらを浮かべ、水はどこまでも流
れていく。
ここは俗世間とは違う、別天地だ。
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基経は、吉祥丸からこの詩の前半だけ教
えてもらい、続きを別の日に教えてもら
うはずでしたが、吉祥丸の死で教えても
らえなかった、という回想の場面です。


原作では、基経は、道真から後半を教え
てもらうのですが、その場面はなかった
ですね。


回想の場面は、他に二つ出てきます。
この吉祥丸が藤原国経、遠経兄弟の飼っ
ている唐犬に咬まれて狂犬病で死ぬ場面
と在原業平と藤原高子が駆け落ち未遂す
る場面です。
どちらも、ほぼ、原作通りです。


犬はどうするのかと思ったら、声だけで
した。
さすがに、牛はどうしようもなくて、在
原業平は貴族なのに牛車を使わず、徒歩
で夜歩きですし、「百鬼夜行」も車を人
が押してました。


で、舞台が原作と大きく違う場面で、?
と思った場面を紹介します。


まず、菅原道真が在原業平の制止を振り
切って、「百鬼夜行」の黒幕を突き止め
てしまうことです。
原作では、藤原氏が関係していると、業
平は疑っていますが、証拠がない。「百
鬼夜行」の一味の一人を捕らえますが、
道真が逃がしてしまいます。
舞台とは、反対です。で、結局は、その
証人も黒幕の手の者によって殺され、事
件は、闇に葬られてしまいます。(原作
第53話~第55話「都に馬頭鬼のあらわる
る事」)
そもそも、ここで黒幕が分かってしまっ
ては、原作は、後が続きません。(原作
では、黒幕が誰かは読者には分かるよう
に描かれています)
原作は、まだ、雑誌に連載中です。
原作を読んでいる私としては、宝塚の展
開は、思わず、えっです。


次は、「魂鎮めの祭り」の場面です。
道真、昭姫、長谷雄、白梅が踊り手にな
って踊るのは、ご愛嬌としても、ちょっ
と帝との距離が近すぎるのでは?しかも
帝は御簾なしです。
まあ、それは、舞台ですから仕方がない
のですが、ここで毒によって暗殺されよ
うとするのは、原作では、藤原多美子で
はなく、伴大納言です。
藤原基経は、毒によって反藤原勢力の伴
大納言を暗殺し、権力を藤原氏の手に握
ろうとするのです。
その薬師でも分からない、解毒薬もない
ご禁制の毒を手に入れて京まで運び込む
ために、基経は「百鬼夜行」を仕立てた
のです。
それを宝塚の舞台では、伴大納言を藤原
多美子に変えて、毒薬は多美子を守るた
めに藤原常行が代わりに飲んでしまいま
す。
ですから、①で書いたように、本来なら、
藤原氏対反藤原氏の話である原作が、藤
原氏の内部抗争のような話が中心になっ
てしまって、藤原常行・多美子兄妹を道
真たちが助ける、みたいな話になってし
まっています。
藤原氏対反藤原氏の権力争いという、原
作の肝心なテーマが舞台では抜け落ちて
しまっています。


最後は、何と鬼たちが捕まってしまうこ
とです。藤原多美子が乗っているものと、
道真たちが偽装した車を「百鬼夜行」の
一味が襲います。ここは、原作通りなの
ですが、何と検非違使と百鬼夜行の一味
との戦いになり、その中に、なぜか役に
立たない道真や白梅、長谷雄まで登場。
入り乱れての戦いの末、黒炎を始めとす
る百鬼夜行の一味は、検非違使に捕らえ
られます。
原作では、邪魔が入ったため、「百鬼夜
行」の一味は引き揚げてしまいます。
これ、どうするんだろう、と思っていた
ら、何と朝議に出席した道真が帝に、
「百鬼夜行」の一味は皆、流行り病で死
んだ、と報告します。で、本当はどうな
ったのかが分からないまま、お話は終わ
ってしまいます。
これには、さすがに、私も??????
です。まさか、基経の手によって、毒殺
されたわけでもないと思うのですが……。


他にも?と思った場面がいろいろありま
すが、それは別の記事で。


③に続きますが、登場人物別感想になり
ます。


ところで、最後に宮中を藁人形を持った
女官が歩いていたんですが、あれ、何な
のでしょうかね?
原作では、藤原多美子がまだ、自分の屋
敷にいるときに、床下に藁人形が打ち付
けられるのですが、これは多美子の入内
後の場面。今更、なにをしようと言うん
でしょうか?


↓前回の記事です。