妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

月組公演『応天の門』感想③ー登場人物別感想

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


②の続きになります。


その前に、他の方のブログを読んでいる
と、登場人物の名前の誤字が多いですね。
「良和」→「良相」、「元経」→「基経」
です。
原作を読んでいないからでしょうか?


後、舞台が続編があるような終わり方に
なっているという感想が多いですが、こ
れは原作の方がまだ、連載中だからでは
なく、話を盛り過ぎた結果でしょう。
原作では、道真たちが応天門の内に棲む
鬼たち(藤原良房、基経)と闘うことは
ありませんし(むしろ関りになるのを避
けている)、実在した道真は、藤原氏
(基経の息子の時平)によって、太宰府
に流罪となって、そこで死んでいます。
むしろ、鬼たち(藤原氏)との闘いに敗
れた形の最期です。
ですから、最後に、「鬼たちとの闘いは、
始まったばかり」という、ちょっと、正
義感満載の勇ましい話で終えたかったの
だと思いますが、やはり、ちょっとやり
すぎでしょうね。


さて、登場人物別感想に入る前に、私と
しては、配役は、逆で、在原業平が月城
かなとさん、菅原道真が鳳月杏さん、で、
藤原高子を海乃美月さん、というのが良
かったのですが(これなら、トップコン
ビの恋愛要素も入りますし)、まあ、道
真が主人公ですから仕方がないですね。
ただ、月城かなとさんの業平も見たかっ
たかな、とは思います。


まずは、この人。清和帝を演じた千海華
蘭さん。
配役を見た時には、驚きました。
下級生の娘役さんが演じるものと思って
いましたが、まさかの千海華蘭さん。
13歳の清和帝ができるのか?と思ってい
たのですが、千海華蘭さんの童顔で何と
かなっていました。
しかも、お芝居が上手くて、いかにも原
作の清和帝のイメージそのままです。
この配役は、大正解でしたね。
なお、清和帝が「……たも」と言うのを
そんな言葉遣いをするのか、と疑問を呈
している方がみえますが、原作でも清和
帝が良く使っている言葉遣いです。


さて、主人公の菅原道真役の月城かなと
さん。
原作の菅原道真は、こんないい男
ではないのですが、三白眼が似合ってい
ました。ちょっと、突っ慳貪なものの言
い方も道真らしいです。
ただ、原作よりも傲岸不遜な態度という
か……。(特に、最後の清和帝に説教す
る場面)原作の道真は、もう少し、謙虚
で自分が書物で得た知識ばかりで何も知
らないことを嘆きます。原作は、その葛
藤する道真の様がいいのです。
このあたりは、演出の方の問題だと思い
ますが……。
昭姫とは、恋愛要素ゼロですね。昭姫か
らは「喰えないお坊ちゃん」と言われて
いますから。
やっぱり、月城さん、お芝居は上手いで
すよね。道真役では、ちょっと、もった
いない気がしますが……。
ところで、原作では、道真は、昭姫から
「お坊ちゃん」呼ばわりされるのは、最
初の2回だけで、後は、「道真様」と呼
ばれています。
昭姫よりは、確実に年下なので、「お坊
ちゃん」で間違いないのですが……。
では、「喰えない」は、どこから出てき
たかというと、道真が高子姫と会った感
想で「想像以上に喰えない姫君だな」と
思う箇所から引用したのかと思います。


次は、在原業平役の鳳月杏さんです。
下の色男役がよく似合います。原作より
は、プレイボーイ感は薄めた感じです。
冒頭で六条に住む人妻と会った帰り道の
場面はありますが、全体としては、高子
姫一途のような……。
道真より20歳年上で、貴族社会での経験
の長い業平が、本来なら、道真の暴走を
止めるべき立場ですが、止め切れていま
せん。それに、1回出会っただけで、「百
鬼夜行」の取調べの協力を道真に依頼す
るというのは、ちょっと、話を端折り過
ぎです。
業平が藤原氏に関わるのを避けているの
は、自己保身のためでなく、父親の阿保
親王(平城帝の第一皇子)が権力争いに
巻き込まれて死んでいるからです。
その辺を描かないでいるというのは、ど
うだろうか、と思います。
最後に、道真に頭を下げて協力を依頼す
るなんてことはないのでは……。
左近衛権少将ですから、もう少し、上級
貴族(平城帝の孫です)らしさ、大人感
が欲しいところですが、演出の都合上で
しょうか。
検非違使の長なのに、検非違使の國道に
も嘗められているような……。
主人公の道真を上げた分、業平を下げて
しまったように感じるのですが……。
ところで、業平が道真に頭を下げて協力
を依頼するのは、原作では、別の場面。
業平が伴大納言のために、悪夢を見ない
で眠れる薬を昭姫の店で手に入れようと
する場面です。そっちのエピソードをこ
っちの場面で使おうとするので、なんか
ちぐはぐになっています。そっちの場面
で、道真が「私が拗ねてるだけみたいじ
ゃないですか!」と業平に言っています。


藤原基経役の風間柚乃さんです。基経と
いう目的のためには手段を選ばない冷酷
さを持ちながら、どこか陰のある人物を
演じる演技がやはりこの人は上手いです。
ただ、原作と比べると非情さがやや弱い
のは、これも演出のせいでしょう。
もう少し、この基経という人物像を丁寧
に描いてこそ、対極にいる道真の怒りが
伝わるのではないでしょうか。
ただ、道真との関係を丁寧に、とブログ
に書いている方がみえますが、原作では、
道真との直接の関係は、あまり描かれて
いないので、これは無理でしょう。実際
に、道真と基経が直接会って、吉祥丸の
漢詩の続きを教えてもらう場面は、カッ
トされていますし……。


次は、昭姫役の海乃美月さんです。今回
は、道真との恋愛要素ゼロの役ですが、
きっぷが良くて、面倒見のいいお姐さん、
という昭姫の感じはよく出ています。
唐から来た元後宮の女官ということで、
遣唐使に憧れる道真に「大切なのはどこ
で生きるかではなく、共に生きる人の心
を知ろうとすること」だと諭すのですが、
全然、道真には効果なしですね。
『応天の門』を菅原道真と在原業平のバ
ディものと受け止められているようです
が、唐の知識と市井の事情に精通した、
この昭姫を加えて、3人で「怪事件」を
解決すると言った方が、より正確ではな
いかと思います。
なお、チラッと出てきたのですが、「昭
姫」というのは、中国の三国時代に実在
した女流詩人の名前です。昭姫は、その
女流詩人の名を名乗っているのです。
なお、実在した昭姫の詩は、こんな内容
です。
「天災い國乱れて 人に主無く 唯だ我
が命薄くして 戒慮に没す」
昭姫が匈奴にとらわれた自分の運命を嘆
く詩の一部です。


次は、白梅役の彩みちるさんです。
こんなに白梅役が似合うとは思っていま
せんでした。
髪の毛がボサボサで、アワアワ、バタバ
タしている様子が原作の白梅そのまま、
っていう感じです。
やはり、娘役NO.2だけはある演技力です。


次は、藤原常行役の礼華はるさんです。
バウホール公演主演も決まっていますが、
この作品でもいい役です。
妹大好きお兄ちゃんです。
(弟大好きお兄ちゃんというのもいまし
たが……。『BONNIE & CLYDE』)
しかも、妹の多美子は、良房、基経の裏
をかいての帝への入内ですから、命を狙
われてもおかしくない。そこで、検非違
使でもない道真の所へ多美子を守るよう
に依頼に行く?のは無理があるような……。
最後の場面で、応天門の内に棲む鬼たち
が影の形で登場しますが、4人というこ
とは常行も入っている?常行もやはり藤
原ということか?というのが、最後だけ
ではなく、途中でも出ると、なお、良か
ったのですが……。
ちょっと、妹思いのいい人みたいな感じ
になっちゃっています。
それと、原作通りでなくてもいいから、
顎鬚は止めた方が良かったのでは?なん
か無精髭みたいで……。


次は、紀長谷雄役の彩海せらさんです。
おバカな紀長谷雄役ということで、期待
したのですが、ちょっとその辺が足りな
いというか……。
白梅役の彩みちるさんとセットみたいな
扱われ方で、彩みちるさんに、さすがに
負けているという……。これは、ちょっ
と気の毒でしたね。


次は、藤原高子役の天紫珠李さんです。
原作のイメージが強いせいか、今一つ、
天紫珠李さんが高子姫役に似合っていな
いという感じを受けました。
3回目は、双眼鏡でじっくり見たのです
が、やっぱり、合っていない。
原作で、道真が「想像以上に喰えない姫
君だな」という感想を持つ高子姫の気の
強さと、気位の高さが伝わってきません。
月組娘役NO.3ですが、この役が出来ない
とトップ娘役は難しいのでは?


最後は、吉祥丸役の瑠皇りあさんです。
道真の回想場面で登場ですが、顔も端正
で歌もまあまあ上手い。
103期生ですから、彩海せらさんの1期下
ですが、今後、上がって来る可能性も。
ちょっと、注目したいと思います。