妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

曲とストーリーが良かった!!宙組公演『バロンの末裔』ライブ中継を観て③

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


「宙組公演『バロンの末裔』ライブ中継を観て」の続きです。


「雉撃ちの丘」のラスト部分からです。


エドワード(真風涼帆さん)とキャサリン(潤花さん)が「愛の
地獄」とかなんかやっているところへ、羊飼いのヘンリー
(亜音有星さん)がやってきて、雨が降ってきそうだと言って、
雨宿りに二人を自分の家に招き入れます。


亜音有星さん、103期生ですが、「シャーロック・ホームズ」で、
新人公演初主演。今回もいい役をもらいました。今後の注目株だ
と思います。


ヘンリーの家には父親のジェラルド(穂稀せりさん)と妹のレイ
チェル(栞菜ひまりさん、ボールトン家のメイドと一人二役) が
一緒に住んでいます。


ヘンリーが暖炉に薪ではなく、石炭をくべるのを不審に思ったエド
ワードは、ヘンリーにこの辺りでは暖炉に石炭をくべるのか、と訊
きます。ヘンリーは石炭の鉱脈があるので、このあたりの住民は
皆、石炭を使うのだと答えます。
そこへ、ヘンリーの父親のジェラルドが出てきて、エドワードに
1枚の権利書を見せます。それは、ローレンスとエドワードの二人
の父親の先代の男爵が領地の住民に石炭の採掘権を与えるというも
のでした。


これは切り札になると考えたエドワードは、その権利書をジェラル
ドから預かります。


さて、場面はボールドンキャッスル。
銀行の頭取のウィリアム(瑠風輝さん)が秘書のブリンクリー
(鷹翔千空さん)を伴い、ボールトン家を訪れます。エドワード
は借金は、会計士のローバック(秋音光さん)と銀行が共謀して
兄のローレンスを陥れたものだと主張しますが、ウィリアムは
そんな証拠はないと突っぱねます。そこで、エドワードは、ジェ
ラルドから預かった石炭の採掘権の権利書をウィリアムに見せて、
これで借金を返済できるとウィリアムに主張します。
ウィリアムは事前に父親から石炭の鉱脈のことを知らされていた
こともあり、やむを得ず、これを認めます。


しかし、エドワードは新たな提案をウィリアムにします。
それは、ボールトン家の屋敷と領地はそのまま残し、ボールトン
家をホテルとして改装するという案でした。
先代の意志を継ぎ、愛する故郷の土地を炭鉱の町にすることを嫌
ったからでした。
男爵家の末裔として、領地とそこに住む人々の暮らしを守ること、
それがエドワードの最大の願いだったのです。


②でこの作品には二つの軸があると書きました。
一つは、キャサリンを巡る双子の兄弟の愛の三角関係。
もう一つは、代々受け継がれてきた男爵家の領地とそこに住む
人々に対するエドワードの想い。


この作品は、後者がメインストーリーであると私は思います。


私は、エドワードが貴族の末裔としてその領地とそこに住む人々
を愛し、守り抜く、その姿にこそ感銘を受けました。


ノーブレス・オブリージュという言葉があります。
身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務が
あるという意味です。


エドワードは、自分が生まれ育った土地とそこに住む人々を愛するが
ゆえに、男爵家(バロン)の末裔としての責任と義務を果たそうとし
たのではないでしょうか?


さて、終盤の場面です。


ボールトンキャッスルは、ホテルに改装され、オープニングを祝う舞
踏会が開催されています。ローレンスはオープニングの挨拶をする
ことになっています。銀行の頭取のウィリアムの姿もあります。屋敷
の使用人は皆、ホテルの従業員になっています。羊飼いのヘンリーも
ボーイとして雇われたようです。


そして、ホテルのテラス。喧騒から逃れ一人佇むエドワードの前にキャ
サリンが姿を見せます。別れの前に、と自分のネックレスをエドワード
に渡すキャサリン。エドワードはお返しに、これはインドで買ったもの
だから誰も知らないと、自分の指輪を抜き取ってキャサリンの指に嵌め
てあげます。


そして、ラスト。
雉撃ちの丘でエドワードは、愛する人々の幸せを願いつつ、明日に向かっ
て歩み始めます。


穏やかな余韻を残して、物語は幕を閉じます。


「愛の地獄」がメインの作品ではないけれど、ハッピーエンドでもない
けれど、曲もストーリーも良く、後味のいい作品だと思います。