妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

一人だけど、独りじゃない!!『INTO THE WOODS』大阪公演を観劇しました。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、ミュージカル『INTO THE WOODS』を観に、
梅田芸術劇場メインホールへ行ってきました。


『INTO THE WOODS』観劇は、1月の東京日生劇場公
演に続いて、2回目。
日生劇場公演は、プレビュー公演でした。


で、演出が変わったかというと……、若干変わってはい
ましたが、物語の大筋までは変わってはいません。


で、今回は、前回の記事の続きを第2幕を中心にコメント
します。


ちょっと、物語の冒頭へ戻ります。


最初に、舞台の上手にひとつのベッドが置かれています。


まず、パン屋の夫がパジャマのようなもの(囚人服みたい)
を着て、下手から現れ、ベッドへと向かい、ベッドで横に
なります。何かに怯えているようなおどおどした様子です。


次に、ジャックが下手から現れて、同じようにベッドで横
になります。


最後に、シンデレラが現れ、これも同じようにベッドに横
になります。


これから、おとぎ話を聞く子供たち、という設定でしょう。


上手側から謎の男(ナレーター)が登場して、ベッドの脇に
立ち、童話の本を手にして「昔むかし、はるか遠い王国での
お話です。」とおとぎ話を語り始めます。


第2幕の冒頭も同じことが(パジャマは着ていませんが)繰り
返されます。


つまり、この物語が一つの「おとぎ話」であることを表して
います。


そして、最後の場面で、登場人物たちが「おとぎ話を読み聞
かせる時は気をつけて」と歌います。


おとぎ話の結末は、ハッピーエンドであるとは限らないから
です。


で、第1幕の最後の部分です。


登場人物のそれぞれが、自分の願い(I wish)を叶え、第1幕は
ハッピーエンドで終わります。


パン屋の夫妻は、魔女から呪いを解くために告げられた4つの
アイテムを苦労して集め、その赤い頭巾、黄色い髪、金の靴を
白い牛に食べさせます。ジャックが牛の乳を搾り、それを魔女
に飲ませると年老いて醜かった魔女が若く美しい女へと変身し
ます。


ところで、ここで周りから拍手が起きたのですが、私は苦笑し
てしまいました。
宝塚家劇の舞台と同じやり方だからです。
確かに、宝塚の舞台では、主役であるトップが登場した時には、
拍手が起こります。
一方、普通のミュージカルでは主役が登場しても拍手すること
は、ごく稀です。あの場面で拍手をするのは、普通のミュージ
カルではありえないことです。
歌を歌い終わった時に拍手をするのは、宝塚も普通のミュージ
カルも共通です。
逆に、普通のミュージカルにはカーテンコールがありますが、
宝塚の舞台では千秋楽でもない限り、カーテンコールはありま
せん。
それぞれにそれぞれのやり方があります。
今後も、望海風斗さんが出演するミュージカルを観劇するので
あれば、普通のミュージカルの観劇の仕方を知っておくべきで
しょう。
逆もまた同じです。一度、宝塚のショーのロケットの場面で変
なところから手拍子が始まったことがありました。宝塚を良く
知らない人が手拍子を始めてしまったのだと思います。


さて話を戻します。


第1幕の最後では、登場人物のそれぞれが、皆(ほとんど)その
願い(I wish)を叶えました。
パン屋の夫妻は子供を授かりましたし、シンデレラはフェスティ
バルに行くこと(途中で王子と結婚することに変わったようです
が)ができました。赤ずきんは狼に丸呑みされてしまいますが、
パン屋の夫に助け出され、無事、おばあさんのところへ行くとい
うお使いを果たすことが出来ました(プラスα)。ジャックは、
豆の木を登って巨人から金貨や金の卵を産む鶏を盗み出し、追い
かけてきた巨人は豆の木を切り倒して殺してしまい、裕福になる
ことができました。
ハッピーエンドです。


ところが、第2幕では、それが一変します。


ジャックが殺した巨人には妻がいて、その巨人の妻が、あの残っ
た1粒の魔法の豆が成長した木を伝って降りてきて、死んだ夫の
復讐のため、ジャックを引き渡せと要求します。


巨人の妻の要求に王国の人々は、大混乱。
魔女は、ジャックを探し出して巨人に引き渡さないと王国の半分
の人達が殺されてしまう、と主張し、ジャックを探しに行きます。
ジャックを巨人に引き渡すことに躊躇する人もいます。
誰でもいいから引き渡せ、という人もいます。
巨人から逃げ出そうとする人たちもいます。
てんやわんやの大騒ぎ。
そうこうしているうちに、巨人の妻により、次々と被害が起こりま
す。
赤ずきんの家もシンデレラの母親のお墓も巨人の妻によって踏みつ
ぶされます。お城も壊されてしまいます。パン屋の妻もジャックを
探しに100歩だけ進むという約束で森の中を行った先で、巨人が倒し
た木の下敷きになって死んでしまいます。ジャックの母親もお城の
執事の杖で殴られて死んでしまいます。etc.
最後に残ったのは、パン屋の夫、赤ずきん、シンデレラ、ジャック
の4人だけ。
第1幕でその願いを叶えた4人が、今度は、大切なもの(大切な誰か)
を失ってしまいます。
その4人は誰の責任でこうなったのか、言い争います。


パン屋の夫は、何もかも嫌になってそこから遠くへ行こうとします。
赤ん坊を置いて。
しかし、父親からどこへ行くのか、行く当てががあるのか、と問わ
れて元の場所へ戻ります。


そう、私たちは、どんなことが起きても自分の居場所から逃げ出す
ことなんて出来ないのです。


4人は、巨人を倒すための計画を相談します。
シンデレラは、小鳥たちに巨人の目を潰すことを依頼します。
そして、2つの塔の間に巨人を誘い込み、目を潰して、塔を倒し、
巨人を倒すことに成功します。


一人だけど独りじゃない。
人は皆、一人で生きていきますが、決して独りではありません。
力を合わせれば巨人のような巨大な災厄にも打ち勝つことが出来る
のです。


人は皆、誰かの犠牲に上に生きています。それが「人間の業」です。
しかし、だからといって、誰の助けも得られないというわけではあり
ません。


人は皆、「人生」という森の中で、願い、喜び、愛し、苦しみ、悲し
み、そして迷います。
「人生」はおとぎ話のようなハッピーエンドには、必ずしもなるとは
限りません。


しかし、人はこの厄介な「人生」という森から離れて生きてはいけま
せん。
だから人生という「森の中へ」戻って(帰って)行かざるを得ないの
です。


小説も音楽も映画も、それを読む人、聴く人、観る人によって受け取
り方は、様々だと思います。
このミュージカルも、観る人によって、作品から受け取るものは様々
だろうと思いますし、そういう作品なのだろうと思います。


でも、何かをこの作品から受け取って欲しい、と思います。


最後に、望海風斗さんは歌も上手いですが、今回の作品を観て、コメ
ディアンとしても行けると思いました。
『next to normal』のようなシリアスなミュージカルもいいですが、コ
メディ・ミュージカルも合うのではないでしょうか?


この『INTO THE WOODS』のような素晴らしい作品に巡り合えたこと、
それがミュージカルの醍醐味です。


↓前回の記事です。