妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

星組公演『ディミトリ』登場人物別感想③(ジャラルッディーン、アン・ナサウィー)

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


今回は、物語の冒頭に登場するジャラル
ッディーンとアン・ナサウィーについて
です。


瀬央ゆりあさん演じるジャラルッディー
ンと天華えまさん演じるアン・ナサウィ
ー は、セットで出てきますので、一緒に
書きます。


二人の登場場面は、物語の後半、ディミ
トリ(礼真琴さん)とルスダン(舞空瞳
さん)の間に王女タマラ(藍羽ひよりさ
ん)が誕生し、成長した後の場面です。


舞台が暗転し、再び、明るくなると、銀
橋にジャラルッディーンとアン・ナサウ
ィーが登場。舞台には、ホラズム兵がい
ます。


そして、ジャラルッディーンが見渡しな
がら一言「良い風だ」。
格好いい~!!
もう、主人公をディミトリでなくて、ジ
ャラルッディーンにしたいくらい、ジャ
ラルッディーンが格好いいです。


瀬央ゆりあさん、ホラズムの帝王の風格
がぴったりです。


モンゴルに父母も妻も殺され、国土を奪
われたホラズム帝国の帝王ジャラルッデ
ィーンがモンゴルへの反攻の拠点と狙い
定めたのがジョージア王国でした。
できれば、戦わずして無傷でジョージア
王国を手に入れたいジャラルッディーン。
アン・ナサウィーにルスダンに送る文書
を書くよう依頼し、ナサウィーは名文を
書くことを受け合います。


ところで、余談ですが、ホラズム帝国は
どこにあった国なのでしょうか?
ウィキペディアによると、「アム川下流
域ホラズムの地方政権として起こり、モ
ンゴル帝国によって滅ぼされるまでに中
央アジアからイラン高原に至る広大な領
域支配を達成したイスラム王朝(1077年
 - 1231年)」とあります。
したがって、ジョージア王国からは南西
方面にあった国です。


ジャラルッディーンからの求婚の申し込
みを拒否したルスダンは、ホラズムと戦
うことを決意します。
しかし、ホラズム軍によってジョージア
軍は壊滅状態になります。


この後、ジャラルッディーンが登場する
のは、ディミトリとルスダンが夫婦喧嘩
をしてディミトリが古城に幽閉された後
ですが、それでは、その間、ジャラルッ
ディーンは何をしていたかというと、占
領地で反乱が起きたため、その平定に向
かっています。ただ、舞台ではその説明
がなかったと思います。


さて、古城に幽閉されたディミトリの許
へ副宰相アヴァク・ザカリアン(暁千星
さん)の配下がやってきて自決を迫りま
す。逃げだそうとしたディミトリに副宰
相の配下が剣で斬りつけ、ディミトリの
腕に傷を負わせます。


そこへ、アン・ナサウィーを伴い、長槍
を持ったジャラルッディーンが登場~!!
副宰相の臣下二人を一瞬のうちに倒して
しまいます。
なんで、この人は、登場の度に一々格好
いいんでしょうね。
そして、ディミトリの父親のエルズルム
公(大輝真琴さん)の依頼を受けてディ
ミトリを救うためにやってきたこと、そ
して、ディミトリに対してアマン(平安)
を約束します。
「余と共に来るがよい」とジャラルッデ
ィーンはディミトリに言い、ディミトリ
は臣従することを誓います。
アン・ナサウィーは「陛下は美しい若者
に目がない」と皮肉を言っています。


ところで、このアン・ナサウィーを演じ
る天華えまさんのナサウィー役が中々、
良く似合っています。
お金と主君を深く崇敬するナサウィーの
ジャラルッディーンに対する態度が帝王
の偉大さをさらに感じさせているように
思われました。
やはり、演技が上手いです。


さて、いよいよ、ホラズムの大軍がジョ
ージアの王都トビリシに押し寄せます。
市門はホラズムに味方するトビリシのイ
スラム教徒によって開かれ、トビリシを
護っていたジョージア兵は瞬く間に斬り
殺されます。
ジャラルッディーンは、抵抗をやめ、信
仰をイスラム教に改めると誓う者は救い、
拒むものは斬殺させます。


これを残虐だと思う人がいるかもしれま
せんが、それは、キリスト教徒側から見
た話。同じようなことをキリスト教徒も
やっているのは、昔も今も変わりがあり
ません。
この物語がキリスト教国とイスラム教国
が聖地エルサレムを巡って争っていた時
代の話であったことを忘れてはならない
でしょう。


ディミトリは、愛する人々とトビリシを
取り戻すために、ジャラルッディーンの
不在時とホラズム軍の弱点を書き記した
手紙を書いて伝書鳩でルスダンへ送りま
す。


ディミトリの送った手紙によって、ジョ
ージアはトビリシを自らの手に取り戻し
ます。


さて、ディミトリ最期の場面は、ディミ
トリ③と同じなのですが、ここは、ちょ
っと原作のセリフを書いてみます(舞台
とほぼ、同じですので)
==================
使者「トビリシが奪われた際に、幾つか
奇妙なことがございました」「ジョージ
ア軍はこちらの布陣を知り尽くしていた
ようで、内通者がいたとしか考えられな
いのです」


ジャ「余は、憶測に基づいてものを言う
のは好きでない」「ルーム・セルジュー
クの王子よ。安心して食事を続けられる
が良い。貴公が内通者であるという証拠
が無い」「どうした、ナサウィー。食が
進んでいないな」


ナサ「憶測に基づいてものを言うのは、
このナサウィーも好みません」「そのた
め、ご報告申し上げるべきか迷っていま
した。実は以前に、ルーム・セルジュー
クの王子が密かに伝書鳩を飛ばしておい
でのところを見てしまいました。鳩がい
ずこへ向かったかまでは、ナサウィーめ
は存じませんが」


ジャ「なるほど」「そういうことだそう
だが、貴公が違うと言うのなら、余はそ
れ以上疑うつもりは無い。余の友なる王
子よ、言いたいことを言うが良い」


ディ「帝王には、長い間過分なご厚意を
いただき、御礼申し上げます」「帝王の
お考えに間違いのあろうはずもありませ
ん。お疑いはまさしく正しいのです」


ジャ「そうか。残念だ」「衛兵。反逆者
だ」


ディ「帝王のお手を煩わせるには及びま
せん。じきに効いて参ります」


ナサ「何を……!何をお飲みになったの
です?」


ジャ「余が、確かに見届けた」「ジョー
ジアとホラズムに二重の裏切りを働いた
貴公のことを、後の世の人間は悪く言う
だろう。だが、貴公があくまでもジョー
ジアの王配として生きたこと、このジャ
ラルッディーンが見届けた


ディ「帝王……、どうかいつまでも……
ご健勝で……」
==================
内通者がいる、という緊迫の場面から、
ディミトリが息絶えるまでの場面、そし
て、そのディミトリにジャラルッディー
ンが言うセリフ(太字部分)が見事です。


舞台でも、瀬央ゆりあさん、礼真琴さん、
天華えまさんによる渾身の演技が見事で
感動的でした。
この場面で終わってもいいくらいですが、
原作は、ルスダンが主人公ですので、も
う少し続きます。


次は、ジョージア王国の副宰相アヴァク・
ザカリアンの予定です。