壽々の雑記帳

観劇のコメントや日々の出来事・時事問題などについて綴ります。

月組公演『応天の門』について原作に基づいて紹介②ー「怪事件の解決」だけではない。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


①を書いたのが、去年の12月21日で1カ月
以上経ってしまいましたが、忘れていた
訳ではなく、何を書こうかと悩んでいま
した~!!


で、結局、決めたのが「怪事件の解決」
だけではない
、です。


なんとなく、『応天の門』は、菅原道真
と在原業平がバディとなって、昭姫らの
協力を得ながら都に起きる「怪事件」を
解決するというイメージが強いですが、
むしろ、怪事件解決の方が少なく、「人
助け」の話の方が多い、という感じがし
ます。


菅原道真は、菅原家という学者の家に生
まれ、その屋敷には、書庫があって、数
多の蔵書があります。
その書物を読んで、道真は、知識だけは
豊富なのですが、実際の経験に乏しいこ
とを思い知らされます。


道真は、厄介事に巻き込まれることを嫌
いながら、結局は、頼まれると嫌とは言
えず、人助けのために助力をすることに
なります。


また、最初は、「怪事件」であっても、
途中で、酷い目に遭ったり、辛い思いを
している人たちを助けるというパターン
もあります。


ちょっと、ネタバレになりそうな話は、
書けませんが、最初の「在原業平少将、
門上に小鬼を見る事」では、貴族から虐
待を受けている下女たちを道真と業平が
昭姫の協力を得て、助けるという話です。
最初は、行方知れずになった下女を「鬼
の仕業」と騒がれますが、その理由を知
った道真と業平は、昭姫の協力を得て、
「鬼退治」に乗り出すという話です。
なお、タイトルの「小鬼」は、道真のこ
とです。


また、第26話~第28話の「長谷雄、唐美
人に惑わさるる事」では、「怪事件」は、
起こらず、唐から亡命してきた、昭姫が
唐にいたときに仕えていた後宮にいた宦
官が誤って役人を殺めてしまったのを、
道真、業平、昭姫が協力して助けて、逃
がすという話です。


また、第14話は、訳あって道真が出奔す
る話ですが、明石で井戸水が涸れて、そ
れを村人たちが「山神様の祟り」だと言
って人柱を立てようとするのを、道真が
水脈を探し当てて救う、という話です。
この話での道真のセリフです。
「正しいことを知っていても誰も聞かね
ば意味がない。人を動かすことが出来る
のは、責任をとる覚悟のある者だけです。
そしてその判断が正しくなくては人が死
ぬ。私は権力などに興味はありません。
面倒事は嫌なんです。でも、……私には
何も出来ないことが憎い。」


だから、道真は自分が書物から得た知識
を使って、知恵を振り絞って、時には必
死で人を救おうとするのです。


書物で得た知識を何のために使うのか?


『応天の門』は、ただの「怪事件の解決」
の話だけではない、また、藤原氏対反藤
原氏の権力争いだけの話でもありません。


そこに、道真の書物から得た知識を他の
人を助けるために使うという話が入るか
ら、道真というこの話の主人公の人物の
在り様をくっきりと浮かび上がらせてい
るのだと思います。