妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

どちらの結末がいい?『NEVER SAY GOODBYE』と『ロバート・キャパ~魂の記録』。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


宙組公演『NEVER SAY GOODBYE』。
皆さんの感想を読むと好評のようです。


ただ、前回の公演の感想ですが、このよ
うな批判的な意見もあります。


2012年の『ロバート・キャパ~魂の記録』
に対する感想なのですが、そのまま引用し
ます。(ちょっと長いです)


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「ロバート・キャパ~魂の記録」 原田諒


そのまま「Never Say Good-bye」(以下
NSG)です。
もともとNSGがキャパをモデルにした作
品だから当然なんですが、被る。
同じ宙組だし(NSG出ていた人多いし)、
衣装同じだし・・・
ですが! 結末はこちらのほうが断然好
きです。


「キャパ」では、アンドレ(キャパ)が
最後までカメラだけで戦います。
戦士じゃないから、銃は取りません。愛
用のカメラだけを持って戦場にでる。
「NSG」ではジョルジュは途中でカメラ
を棄て銃を手に戦うのです。
大絶賛しているNSGですが、そこが私に
は非常に引っ掛かっていたの。
・・・スペイン人義勇兵に「お前はカメ
ラもってウロウロしてだけだろ、俺達は
命かけてるんだ!」みたいなことを言わ
れて、「俺はカメラで戦ってるんだ」と
応えるのかと思いきや「そうだな、俺に
も銃を」とか言い出して、カメラ置いて
銃を持って戦場にでたから、びっくりし
たのだわ。挙句に戦死するし。
は?アンタ何しに行ったん???って気
分になったラストシーンだった・・。
他がすばらしかったので、絶賛は変わら
ないけど、ここだけ引っ掛かってた。


それが!「キャパ」ではクリアになって
る♪嬉しい。原田先生、分かってる!!
アンドレは最後までカメラで戦ったの。
それでこそキャパだわ!


ゲルダとの関係も。「キャパ」ではゲル
ダが戦死し、キャパが生き残る。
NSGとは逆の関係。これも良かった。
カメラで真実を伝えると誓い行動してい
る主人公を描くなら、こちらのラストだ。
人生の、魂の伴侶を失ってさえも、誓い
どおり行動し続ける・・それが「男」だ。
見るものに強烈に訴える人生なんだよ。
恋人を残して戦死しては駄目だ。
最愛の人を失っても、まだ進み続けるの
が君の使命なんだ!


というわけで。私はものすごく感動しま
した。ラストは本気で泣けました。
ゲルダが生前に書いた原稿を読む声はア
ンドレに聞こえたでしょう。(←ここか
ら泣く)
アンドレの実も蓋も無い激しい慟哭・・・
そしてそれを乗り越えた旅立ち。
素晴らしいラストシーンでした。(その
背景と照明がまた最高に素晴らしく)
フィナーレが不要だと思えるほどの、爽
快感。


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残念ながら、私は、「ロバート・キャパ
~魂の記録」の方は、観ていませんが、
どちらのラストがいいかは、何となく好
みの問題かな、とも思います。
ただ、問題が一つあります。


『NEVER SAY GOODBYE』のジョルジュ
は、ロバート・キャパをモデルにしている
とはいえ、架空の人物です。
したがって、ラストで死んでも問題ありま
せん。
逆に、ロバート・キャパと同じ行動をする
なら、わざわざ別物語にする必要もないこ
とになります。


一方、ロバート・キャパ(本名は、フリー
ドマン・エンドレ)は実在の人物です。
スペイン内戦で殺してしまうわけにはいき
ません。
スペイン内戦後も戦場カメラマン、報道写
真家として活動を続けます。


ただ、ロバート・キャパについては、その
名が有名になった写真「崩れ落ちる兵士」
が戦闘状態を撮影したものではなく、当時
エスペホにおいて行われていた演習を撮影
したものだ、という指摘があります。※



2012年12月発行の『文藝春秋』にノンフィ
クション作家の沢木耕太郎が発表した「キ
ャパの十字架」(のち2013年2月に単行本
として刊行)、および、2013年2月3日放送
のNHK総合「NHKスペシャル 沢木耕太郎 推
理ドキュメント 運命の一枚〜“戦場”写真 最
大の謎に挑む〜」で、「写真が撮影されたと
される日の前後ではこのエスペホ周辺地域で
の戦闘行為が無かったこと」、「ボルトの位
置から、兵士の携行している小銃が弾薬未装
填(つまりそのままでは撃てない)の状態で
あること」などから、この「崩れ落ちる兵
士」は戦闘状態を撮影したものではなく、当
時エスペホにおいて行われていた演習を撮影
したものだ、と指摘した。
また、パートナーのゲルダが「崩れ落ちる兵
士」が雑誌に掲載されて有名になる直前に戦
場で事故死してしまったため、キャパは本物
の戦場で撮影をしたこともない自分に2重の
「引け目」を感じることになり、その心理的
な負債を少しでも減らすために、後の人生で
彼は命を顧みずに本物の戦場へと出て行かざ
るを得なくなったのではないかとも推測して
いる。


また、「崩れ落ちる兵士」の真の撮影者は、
その使用されたカメラからロバート・キャパ
ではなく、ゲルダ・タローであったと指摘さ
れています。


上掲のブログの筆者がものすごく感動した作
品は、残念ながら、真実を描いているとは言
えないようです。


実在の人物をモデルにした作品は、このよう
なリスクがあるということでしょう。


ただ、『NEVER SAY GOODBYE』のラスト
には、私からも少し注文があります。
それは、ジョルジュがあまりにもあっさり死
んでしまうことです。
最後に、ヴィンセントが「ジョルジュ~!」
と叫んで終わりますが、第1幕のラストが盛り
上がって感動的であったのに比較すると盛り
上がりに欠けるように思います。
それこそキャサリンがジョルジュの死を知っ
て、慟哭するとか、そのくらいのことはあっ
ても良かったのではないか、と思いました。