妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

月組公演『グレート・ギャツビー』感想②

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


①の続きです。


映画版と宝塚版の大きな違いは、宝塚版
がミュージカルの舞台であることでしょ
う。
ミュージカルですから、歌があってダン
スがあります。


何といっても、月城かなとさんの歌う
「朝日の昇る前に」が秀逸です。
この歌は、何度も聴いたことはあるので
すが、やはり、物語の中で歌われると、
その歌詞の意味がしっかりと伝わってき
ます。


もう一つ、深く印象に残った曲がギャツ
ビーとデイジーがデュエットで歌う「入
り江がひとつだけ」です。
「もし僕が、海の神ポセイドンなら、二
つの岸を繋ぐガラスの橋造るだろう」の
部分の歌詞がとても気に入っています。
そんなガラスの橋が入り江にあって、二
人がガラスの橋を渡って会う姿が目に浮
かぶようです。


ダンスシーンの中でもギャツビー邸でギ
ャツビーとデイジーがペアを組み、タン
ゴを踊るシーンがとても素敵で好きです。
やはり、宝塚ならではの華やかな場面で
す。


ところで、この②の記事を書いていて気
づいたのですが、月城かなとさん演じる
ギャツビーがコートを羽織っていました。
①で書いたように、この物語はひと夏の
出来事。原作も映画もそうなっています。
ただ、真夏にコートを羽織る馬鹿はいな
いでしょう。
そうすると、宝塚版は、物語の季節も変
えていることになります。
ギャツビーにコートを羽織らせて格好良
く見せたかったから?でしょうか。


さて、登場人物の感想に戻ります。


デイジーのいとこのニック・キャラウェ
イを演じるのは、風間柚乃さん。
原作では、このニックの「僕は」の一人
称で語られているので、この物語の語り
手です。
映画版のディカプリオ主演版は、ニック
の回想録の形になっているので、ニック
は、語り手です。ロバート・レッドフォ
ード主演版もどう見てもニックが語り手
です。


ところが、宝塚版では、ニックが語り手
の枠からはみ出しているように見えます。
そもそも、人物相関図でも公演プログラ
ムでもニックが語り手とは書いてありま
せん。
公演プログラムの風間柚乃さんさんのコ
メントに「原作では、ニックは筆者とし
て登場しますが、今回はストーリーテラ
ーではありませんし、」と書かれていま
す。
宝塚版では、ニックは語り手役から解放
されています。
逆に、それだからこそ、宝塚版のニック
の役は難しくなっているように思えます。


ニューヨークの証券会社で働くために、
ニューヨーク郊外のウエスト・エッグの
貸家に引っ越してきたニック。隣には豪
邸が建っていますが、ニックが住むのは
家賃の安いコテージの方。そこの家賃は、
原作によると月額80ドル。
確か、ニックの証券会社での給料が月額
80ドルと言っていたような気がしますが
……。
どちらにしても、そのコテージへニック
が引っ越してくるところから、物語が始
まります。


最初は、謎の隣人であったギャツビーで
すが、ギャツビーの人間性に触れ、ニッ
クは次第にギャツビーに惹かれていき、
最後にはギャツビーの一番の理解者とな
ります。
そんなニックにギャツビーも心を開き、
自分の秘密を打ち明けます。


宝塚版では、ニックは語り手ではないの
ですが、元々は語り手であったため、ニ
ックの目を通して物語が展開していくと
ころがあります。
そんなニックを演じるのは難しいと思う
のですが、さすがに芝居巧者の風間柚乃
さんがニックを見事に演じています。


ニックは、デイジーのまたいとこであり、
それを知ったギャツビーからニックは、
ギャツビーとデイジーの再会の橋渡し役
を頼まれます。


ゴルフ初心者のニックがゴルフコンペに
出る羽目になったため、プロゴルファー
のジョーダンからレッスンを受けますが
全然様にならない、というちょっと笑い
を誘う場面もあります。


次は、灰の谷にあるガソリンスタンドの
経営者で、マートルの夫のウィルソン役
の光月るうさん。
配役を見た時には、この役を組長の光月
るうさんが演じるのか、と思いましたが、
舞台を観るとやはりベテランでなければ
務まらない役。光月るうさんか、専科か
らもう一人出てもらうか、だったでしょ
う。


妻のマートルをデイジーの運転する車で
轢き逃げされたウィルソンは、その復讐
への狂気に駆り立てられます。
そして、眼科医の看板を「神の眼」だと
言います。「神の眼」はすべてを見て知
っていると……。
そして、トムから車を運転していたのは
ギャツビーだと聞かされたウィルソンは、
拳銃でギャツビーを撃ち殺し、自分も自
殺します。


平凡で何の取り柄もなさそうなウィルソ
ンが、マートルの浮気に気づき、次第に
豹変していく様が光月るうさんによって
見事に演じられています。


ウィルソンとギャツビーが歌う「神は見
ている」は印象的な曲です。
ところで、なぜ、宝塚版ではウィルソン
だけでなく、ギャツビーもこの歌を歌う
のでしょうか?
それは歌詞に出てきます。
「神の眼は誤魔化せない 欺けはしない」
と……。


ウィルソンは、妻のマートルに浮気され、
裏切られます。ウィルソンは「神の眼」
にその正義を回復することを期待するの
です。
一方のギャツビーは、デイジーを守るた
めに、自分が車を運転してマートルを轢
き殺したことにします。
世間を欺くことに対するギャツビーの罪
の意識が歌われるのです。


さて、最後に、宝塚の今回の月組公演は、
三井住友VISAカード協賛公演ですので、
豪華で華やかな舞台となっています。
舞台セットも衣裳も素晴らしいです。
そんな公演が、宝塚大劇場でわずかだけ
しか上演されなたっかことは残念でなり
ません。
東京宝塚劇場公演は、無事、完走できる
ことを祈っています。
(本当に完走したら、ちょっと悔しいと
いうのが本音ですけどね)


①の記事です(↓)。