妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

雪組公演『蒼穹の昴』キャスト別感想②(李春児・順桂)

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


今回は、キャスト別の感想の2回目です。


まず、雪組2番手朝美絢さん演じる李春児
です。
朝月希和さんの李玲玲と同じく、李春児の
少年時代からラストまで一貫して務めます。
したがって、最初の登場場面は薄汚れた、
いかにも極貧の生活といった格好です。


彩風咲奈さん演じる梁文秀を兄のように慕
っています。梁文秀は白太太から「そなた
は長じて紫禁城に登り、帝をお扶けする重
き宿命ぞ」と予言されたのに対して、李春
児もまた、白太太から「その手にあまねく
財宝を手にするだろう」と予言されます。


ところが、白太太の李春児に対する予言は
偽り。春児も玲玲も死ぬ宿命でした。それ
がつらくて言えない白太太は、春児に偽り
の予言をしたのです。


春児も白太太の予言が偽りと勘づきながら
も、自分の宿命を覆してやろうとします。
しかし、どうやって?
そこで、朝美絢さんが歌う「どうすりゃい
いのさ」の歌詞が胸を打ちます。
「おいらには昴の星がついている」ことを
信じて、春児は、天下のお宝を手に入れよ
うと決意します。


梁文秀と一緒に都に行った李春児は、文秀
と喧嘩別れをして、街をさまよい歩きます。
そして出会ったのは、かつて、紫禁城で宦
官として西太后に仕えていたという盲目の
胡弓弾きの安徳海(天月翼)。
その話を聞くうち、春児は何も持たない自
分が身を立てるには宦官になるしかないと
決意します。
それは「男」を捨てるという事。
原作では重要な場面ですが、残念ながら削
除されてしまいました。
まあ、ここは削除されるとは思ってました
が……。


さて、元宦官で紫禁城を追われた者達の集
まる富貴寺でかつての京劇の劇団で花形役
者であった黒牡丹(眞ノ宮るい)から、春
児は京劇の特訓を受け、黒牡丹からもう教
えるものはないと言われるほどに上達しま
す。


そして、遂に紫禁城への仕官が決まります。
富貴寺の人々に祝福される春児。その真っ
直ぐな気性と明るく優しい性格が皆から好
感を持たれていたのでしょう。そんな春児
に朝美絢さんがよく似合っています。


そして、紫禁城での光緒帝(縣千)の結婚
の儀の日、西太后の演目変更の命で騒然と
なる京劇の劇団は、京劇の経験がある李春
児に白羽の矢を立てます。
駆けつけた師の黒牡丹と共に「挑滑車」を
皇帝や西太后を始め、文武百官、女官達が
見守る中、李春児は見事に「挑滑車」を演
じて見せます。


この「挑滑車」の場面が素晴らしいです。
朝美絢さんと眞ノ宮るいの演技が見事で、
客席からも大拍手が起きていました。
特に、朝美絢さんは李春児として出番の多
い役の中で、これだけ京劇の練習をやって
きたというのは、本当に凄いと思いました。


そして、「挑滑車」の演技を西太后から称
賛され、李春児は西太后の側近になります。


白太太の予言の「昴」の宿命に従って、皇
帝に仕えるまで登り詰めた梁文秀と白太太
の予言が偽りと知りながら、「昴」の星が
自分に付いていると信じて、西太后の側近
にまでなる李春児。
対照的な二人の運命がこの物語で輝きを放
ちます。


最後の場面で日本に向かう梁文秀と李玲玲
に笑顔で手を振る春児の姿は感動的です。


「昴って、どれ?」と訊く春児に、知らん
のかい~!!と突っ込みそうになるのです
が、朝美絢さんの昴を見つめるキラキラし
た顔がとても素敵です。


次は、順桂役の和希そらさん。
順桂は、梁文秀に次いで第二等で科挙に合
格し、文秀ら改革派の仲間にになります。
ただ、他の人と違うのは、順桂は満州旗人
の出身であること。それゆえに満州旗人と
しては、最下層出身の西太后の専横を激し
く憎み、西太后を暗殺しようとします。


このあたりを和希そらさんの演技力と歌で
説明するのですが、それでも分かりづらい
のでは、と感じました。


また、公演プログラムには載っているので
すが、阿片窟で順桂が西太后を暗殺する爆
弾を受け取る場面も、分かりづらいように
思います。一応、原作通りなんですが……。
何か、順桂が阿片中毒になっているように
見えるんですが……。


また、科挙で主席の梁文秀と第二等の順桂
と第三等の王逸(一禾あお)の三人が「大
地の彼方へ」を歌う場面があるのですが、
一回目を観た時には、和希そらさんの声量
が他の二人より大きくてちょっとバランス
を欠いているように感じたのですが、二回
目の観劇の時には、大分、抑えているよう
に感じました。


確かに、和希そらさんの歌は上手いですが、
他の人と歌う時は、やはり、バランスが必
要かな、と感じました。
ソロで歌う時はいいんですけどね。
和希そらさんがソロで歌う「我に力を」は、
さすがです。


和希そらさんの雪組への組替えの成果が発
揮された作品になりました。