妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

花組 全国ツアー公演『フィレンツェに燃える』ライブ中継を観て(感想①)

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、花組全国ツアー公演『フィレンツ
ェに燃える』『Fashionable Empire』の神
奈川県民ホールでのライブ中継を観に、映
画館に行ってきました。
前の方が少し空席があったけれど、大体、
席は埋まっていたという感じでしょうか。


まず、公演プログラムより『フィレンツェ
に燃える』のストーリーです。
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フランス革命に端を発する激動の余波がヨ
ーロッパ中に広がり、イタリアで国家統一
運動の機運が高まり始めていた頃……。
フィレンツェの貴族、バルタザール侯爵家
の長男アントニオ(柚香光) は、常に家の
ことを第一に考える品行方正な青年だった。
対照的に次男のレオナルド(水美舞斗)は、
自由奔放な熱血漢で、巷の人々との付き合
いを通じて国家統一運動への関心を抱くよ
うになり、父である侯爵の不興を買ってい
た。正反対の二人だったが、レオナルドは
聡明でノーブルな兄を敬愛し、アントニオ
もまた弟の軽薄に見える言動の内に秘めら
れた情熱と行動力を愛し、二人は強い兄弟
愛で結ばれていた。


ある日、侯爵家の遠縁にあたる亡きクレメ
ンティーナ公爵の妻パメラ(星風まどか)
が、バルタザール侯爵(高翔みず希)に招
かれてフィレンツェにやってくる。元は酒
場の歌姫で、親子ほど歳の離れた公爵の四
度目の妻となって貴族の列に加わったパメ
ラに、フィレンツェの貴族たちは冷ややか
な視線を注ぐ。しかしパメラが時折見せる
血の吹きそうな眼に魅せられたアントニオ
は、自分を蔑む貴族たちに敢えて挑戦的な
態度を取る彼女を支えようと心に決める。
長い屈辱の日々を一人で耐え続けてきたパ
メラは、そんなアントニオの優しさに安ら
ぎを感じ、彼に惹かれていく。


アントニオからパメラとの結婚を考えてい
ると打ち明けられたレオナルドは、パメラ
という女は兄がいる穢れのない世界に生き
る人間ではないと猛反対するが、アントニ
オは聞く耳を持たない。兄の純粋な愛情が
破滅を招くことを恐れたレオナルドは、兄
のために彼女を奪い取ろうとパメラに近づ
く。アントニオを愛するようになっていた
パメラだったが、自分の存在が彼の一生を
台無しにしてしまうと悟り、レオナルドの
誘いに乗ってアントニオに愛想尽かしをす
るのだった。


パメラとの恋に破れ傷つくアントニオを見
るうちに、シュザンテ家のアンジェラ(星
空美咲)は、実は彼を愛していたことに気
づく。また、レオナルドは兄を救うために
パメラに仕掛けた恋が、実は本物であった
ことを自覚するのだった。


一方、クレメンティーナ公爵の死にパメラ
が関係しているのではと疑念を抱く男がい
た。パメラの元恋人で憲兵隊将校のオテロ
(永久輝せあ)。彼はパメラを追ってフィ
レンツェにやってきていた。それぞれの想
いが交錯する中、五月のカーニバルが始ま
る……。
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で、もう一度、愛知県公演を観に行く予定
ですので、出演者の個別感想は、その時に
書くとして、今回は、作品全体(脚本・演
出)に関する感想です。
他の方のブログを読むと、称賛の声が多い
ように思いますが、私にとっては、ちょっ
と残念な感じの作品になりました。
なお、毎度のことですが、残念なのは、脚
本・演出についてであって、出演者の演技
についてではありませんので、念のために、
予め、お断りしておきます。


作/柴田侑宏氏、演出/大野拓史氏で、19
75年の作品の再演ということで、一抹の不
安がありましたが、幕が上がる前の音楽の
時点で、予想通りになりそうなという予感
がしました。
いかにも大時代で、古き良き時代の「宝塚
作品」というイメージです。
この作品を47年も経って再演する意味があ
ったのか、甚だ疑問です。


まず、柚香光さんのヴィジュアルです。
口髭と顎鬚を生やしているのですが、せっ
かくの柚香光さんの美しい顔が台無しです。
一瞬、礼真琴さんの「モンテ・クリスト伯」
のビジュアルが頭をよぎりました。
公演プログラムに載っている47年前のアン
トニオ役の汀夏子さんは、髭を付けている
様子はありません。
せめて、口髭だけで良かったのではと思い
ました。


また、侯爵家の跡継ぎで「常に家のことを
第一に考える」アントニオが「血の吹きそ
うな眼に魅せられ」ただけで、酒場の歌姫
から貴族に成り上がったパメラに惹かれて
結婚まで決意するというのは、いかに、ア
ントニオが貴族のお坊ちゃんで世間知らず
といえども、軽率過ぎます。
ただ、そんな純粋培養のアントニオだから、
違う世界を生き抜いてきたパメラに心惹か
れたのかも知れません。
ただ、やはり、主人公のアントニオに感情
移入ができないというのは、この手の作品
としては問題だと思います。
なんとなく、『バロンの末裔』の双子の兄
を思い出しました。


アントニオに比べるとその弟のレオナルド
は、非常に分かりやすい人物です。
むしろ、こっちを主人公にして欲しかった
くらいです。
貴族の次男であるにも関わらず、情熱的で
自由奔放なレオナルドは、庶民の酒場にも
出入りし、巷の人々の感覚も生活もよく理
解しています。
だからこそ、パメラが兄を破滅に導く女
(ファム・ファタールですかね)であると
気づき、二人を引き離すためにパメラに偽
りの恋を仕掛けるのです。
しかし、自分自身がパメラの虜になってし
まい、パメラをヴェローナから追ってきた
憲兵隊将校のオテロの手から守ろうとしま
す。
この辺りは、本来は、主人公の役割だと思
うのですが……。


全体的に主人公のアントニオの印象が弱く、
むしろ、レオナルドの印象の方が強い作品
です。
大野拓史が言っている「カッコよさ」は、
むしろ、レオナルドの方にあるのかな、と。


この作品は、どの場面のどこに感動すれば
いいのでしょうか?
強いて言えば、最後の方の場面ですが、そ
こにはアントニオは登場しません。
公演解説に「1975年に雪組で上演され絶賛
を博した」とありますが、どこが絶賛され
たのか、甚だ疑問です。
当時は、宝塚では、こういう作品が斬新だ
ったのでしょうか?


こういう再演物って、いったい誰が演目を
決めるのでしょうね。
47年前の作品を今更、引っ張り出すほどの
ものでもなかったように思うのですが……。


なお、余談ですが、ショーと2本立てだと
十分知っていたにも関わらず、月組公演、
雪組公演と1本物が続いたせいだと思いま
すが、映画館では、なぜか1本物と勘違い
して、なかなか、第1幕が終わらないな、
と思って観ていました。そのうちに、どう
見ても、ラストの場面が出てきて、ようや
く、そう言えばショー付きだったわ、と思
い出しました。
なんか、最近、危なくなっているんじゃな
いかと……。


さて、②に続きます。