妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

感動の名作!!花組公演『二人だけの戦場』観劇感想。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、花組公演『二人だけの戦場』を
観劇に、GWの大混雑の中、梅田芸術劇
場メインホールまで遠征してきました。


16時30分開演の公演ですから、ライ
ブ中継、ライブ配信、ブルーレイ収録の
あった公演です。


これは、女性客の皆さん(宝塚の客は、
ほとんど女性客ですが)には、心にグ
サグサ突き刺さる作品だったのではない
でしょうか?まさしく感動の名作でした。


私の席の周りでは、泣いている人は見か
けなかったのですが、他の方のブログを
読むと、やはり、泣けるようです。


多分、終わりの方のシンクレア(柚香光
さん)とライラ(星風まどかさん)の二
人が別れる場面と、15年後に、この二
人がサナトリウムで再会する場面が、一
番泣けたのではないでしょうか?


さて、GWといえども、祝日ではあって
も日曜日ではなかったので(何で、今回
日曜日にしなかったのか、しかも、何で
大阪公演なのかという疑問はありますが)、
配信を観れなかったという方も多いので
はないでしょうか?


ということで、観れなかったという方も
考慮に入れて、いつも通り、公演プログ
ラムからストーリーです。
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 連邦政府が統治する旧ルコスタ自治州
クロイツェル基地で起きた「上官殺害事
件」の裁判が行われる。被告人の名はテ
ィエリー・シンクレア少尉(柚香光さん)
……。
 事件が起こる一年前、自治州では連邦
からの独立を目指す気運が高まり、連邦
軍基地と自治州の少数民族は、いつ戦闘
状態に入ってもおかしくなかった。
 そんな時、このクロイツェル基地に二
人の新任士官が配属される。士官学校を
優秀な成績で卒業しながら、敢えて辺境
のクロイツェル基地への赴任を志願した
シンクレアと、友人のクリフォード(永
久輝せあさん)。中央の政治に遠い自治
州の安定こそ連邦の繁栄につながると判
断し、任務への情熱を持つシンクレアだ
ったが、ある時ノヴァロ(綺城ひか理さ
ん)ら、連邦兵士たちに絡まれていたラ
イラ(星風まどかさん)という娘を助け
たことから彼の人生は大きく変わってい
く。聡明で美しく、自由奔放な少数民族
の娘であるライラとシンクレアはたちま
ち惹かれ合うもの感じ、それが激しい愛
に変わるのに長い時間はかからなかった。
ライラの父シュトロゼック(高翔みず希
さん)は旧ルコスタ州議会の議長、兄の
アルヴァ(希波らいとさん)は独立を目
指す闘士であった。
 一触即発の連邦軍とルコスタ民族の緩
衝材になっていたのが、シュトロゼック
と基地の司令官であるハウザー大佐(凛
城きらさん)の親交であった。だが無益
な争いを避けようとする両者の思惑も、
民族の主権を奪われた人たちには通じな
かった……。
 シンクレアはお互いの違いを認め合い
ながら、平和に暮らしてゆけるようにな
ることを願っていたがー。
==================
この作品は、1994年の初演ですから、29
年前の作品ということになります。それ
でいて古臭さを感じさせないのは、現代
にも通じる戦争と普遍の愛をテーマにし
ているからでしょう。
また、シンクレアを被告とする軍事裁判
とその裁判の被疑内容の「上官殺害事件」
に至る経緯が交互に語られ、それぞれが、
次第に緊迫感を帯びていくという物語の
構成も見事です。


ところで、私は、雪組宝塚大劇場公演観
劇の真っ最中で(次で3回目)、頭が殆
どそっちに行ってしまっているため、こ
の『二人だけの戦場』の舞台は、一体、
どこだったっけ?と思っていたのですが、
架空の連邦国家だったんですね。道理で
思い出せないわけです。


ただ、ユーゴスラビア紛争(1991年から
2001年まで)の頃、ということなので、
連邦国家であったユーゴスラビア社会主
義連邦共和国がモデルなんだと思います。


統一国家である日本に住む私たち日本人
には、連邦国家というのは、ちょっと、
分かりづらいですね。


ただ、連邦国家でなくても、少数民族が
独立しようとする多民族国家はいくつも
ある訳で、そういうのを見ると、なんと
なく分かるでしょうか。


ところで、『二人だけの戦場』というタ
イトルを見た時に、「二人だけ」となっ
ているので、主人公とヒロインが孤立無
援で戦場(または、それに似た状況下)
で、奮闘したにも関わらず、最後には、
力尽きて死ぬ、みたいなストーリーを連
想したのですが、全然、違いましたね。


少なくとも、シンクレアには、クリフォ
ードという友人がいるし、ライラには、
祖国ですから、父親や兄や仲間たちがい
る訳で、孤立無援でもなんでもないです。


語呂が良かったからでしょうか?『二人
の戦場』よりも『二人だけの戦場』の方
が響きはいいですからね。


さて、お話は、薄い幕越しにシンクレア
が作家(高峰潤さん)からインタビュー
を受けるところから始まります。


で、思うのですが、この場面って必要だ
ったのでしょうか?少なくとも、シンク
レアが銃殺刑を免れたことは、冒頭で分
かってしまうのですが……。
そこの部分は、どっちでも良かったのか
もしれません。


そして、物語は、シンクレアとクリフォ
ードたち、エリート士官たちが士官学校
の卒業を喜ぶ場面から始まります。


皆、白の士官学校の軍服を着ていて、格
好いいですよね。柚香光さんと永久輝せ
あさんの白軍服、素敵です。


そして、赴任地が決まるまでの間、思い
切り羽目を外そうと、士官たちは街へ繰
り出します。シンクレアたちが訪れた酒
場で踊っていたのが、ロマの娘ライラで
した。


で、「ロマ」って何?となりそうですが、
「ジプシー」と呼ばれていた民族の一つ
で、「ジプシー」が差別用語であるため、
今では、「ロマ」と呼ばれています。
確かに、最近は、「ジプシー」って、あ
まり聞かないですね。
「ロマ」は、定住地を持たない移動型の
民族です。それもあって、ユダヤ人と同
様に多くの迫害を受けてきました。「ロ
マ」の国家というのは、調べた限りでは、
現在も存在しないようです。


星風まどかさん、ちょっと野性的で自由
奔放で情熱的なロマの娘という役が良く
似合っていました。


優秀な成績で士官学校を卒業したにも関
わらず、連邦制に反対し、独立を目指し
て、テロ行為の続く辺境の基地への赴任
を希望したシンクレア。それは、国が平
和であって、一つに纏まるという自分の
理想を叶えるため。


そんなシンクレアに、奇しくも、貴族の
三男であるが故に、同じ基地に配属にな
ったクリフォードは、不安を感じます。


そして、法廷の場面。


スポットライトの当たった中央の被告人
席にシンクレアが背中を向けて立ち、台
が回転して正面を向きます。シンクレア
は、無言。


下手の上方には、検事(峰果とわさん)
が立ち、シンクレアの罪状を鋭く問い詰
め、銃殺刑を求刑します。


上手の上方には、弁護人として、友人の
クリフォードが立ち、シンクレアがいか
に国のためを思って行動したかを力説し、
情状酌量を求めます。


この軍事法廷のやり取りが緊迫に満ちて、
中々、観ていて面白いです。


永久輝せあさんの長台詞が見せ場です。


と、やっていくと長くなりますので、思
いっきりとばして、そのシンクレアが上
官を撃ち殺す場面。


その間に、シンクレアがライラと再会し
て、ロマの祭りもあって、二人は激しい
恋に落ちていくのですが……。
民族の違い、そして、立場の違いがその
恋の成就を妨げます。


ライラの父親のシュトロゼックと基地の
司令官のハウザー大佐(凛城きらさん)
は親交があって、平和裡に解決を図ろう
とするのですが、これに反発するのが、
クェイド少佐(航琉ひびきさん)。最後
には、ハウザー大佐に銃を向けたところ
をシンクレアに撃ち殺されます。


上官を撃ち殺したことに衝撃を受けて跪
くシンクレアを後ろから抱きしめるライ
ラ。柚香光さんの演技が見事です。


そして、シンクレアは連邦に戻るため、
ライラに別れを告げるのですが、この場
面がまあ長いこと。ここが、この物語で
一番大事な肝の場面ですから、長いのは
分かりますが、それにしてもね。ただ、
女性客にとっては、この場面が、突き刺
さるのではないかと思います。二人のセ
リフもね、中々いいです。


その後、シンクレアは、ルコスタの独立
を受けて、同様に独立しようとする他の
自治州との5年間の内戦の最前線に赴き
ます。


で、ここで、ちょっと疑問。
ルコスタについては、平和を望んだシン
クレアが、自ら志願して他の自治州の独
立を妨げる連邦軍の士官として最前線に
赴いて5年間も戦ったのは、どのような
心境の変化があったのでしょうか?その
辺が、描かれていなかったような気がす
るのですが……。


そして、下される判決。クリフォードの
弁護の甲斐もあって、死刑は免れ、無期
懲役に。
内戦中の負傷もあって、郊外のサナトリ
ウムで監禁されます。


そして、最初の場面。(多分)裁判から
15年後。
ルコスタ出身の作家がシンクレアとのイ
ンタビューを終えて、シンクレアの写真
を撮っている所へクリフォードに伴われ
た女性が姿を現します。
それは、ライラでした。
別れの時に、何十年経とうとも忘れず愛
し続ける、そして、生きて必ず会えると
誓った二人は、再び、生きて会うことが
実現したのです。👏👏👏!!


で、ここで、もう、涙腺の弱い方は、涙
が止まらないのではないでしょうか?


素晴らしい感動のラストです。


で、②に続く、のか?