妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

雪組公演『ライラックの夢路』とは、結局、どういう作品だったのか?

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


先日は、『Lilac(ライラック)の夢路』
『ジュエル・ド・パリ!!』のライブ配信
を妻と一緒に観たのですが、お芝居の
『ライラックの夢路』の感想を訊いたと
ころ、結構、面白かったとのこと。


確かに、『〇〇〇・〇〇〇〇〇』のライ
ブ配信の時は、面白くないと言って居眠
りしていたのに、今回は、ちゃんと起き
ていました。


今回の『ライラックの夢路』は、他の方
のブログの感想を読むと結構、辛口批評。


私には、結構、面白かったので、この感
想には首を傾げていました。


ただ、なんとなく分かったのは、この作
品は宝塚作品の王道からは外れている、
ということ。


この作品は、男役トップの主人公がいて、
娘役トップのヒロインがいて、様々な障
害(身分差だとか親や仲間が敵同士だと
か戦争があって引き離されるとか)に遭
って、結局は、幸せに結ばれるか、それ
とも天国で結ばれるか、という作品では
ありません。


私たち夫婦は、9年前の宝塚100周年から
宝塚の舞台を観始めるまでは、他の舞台
や映画を中心に観てきました。


そうすると、恋人二人のラブロマンスな
んてものは、そういう舞台や映画を意識
して観に行かない限り、そんなには、出
てきません。


つまり、宝塚の作品は独特の世界なので
す。


今回の『ライラックの夢路』の演出は、
外部演出・振付家の謝珠栄氏で、いわゆ
る座付き演出家ではありません。


それでも、元宝塚OGなのですから(何
と首席入団)、少しは、宝塚作品に寄せ
れば良かったと思うのですが、今回も、
我が道を行ってしまいました。


で、途中で私が思ったのは、これはNHK
のドキュメンタリー番組で好評だった
『プロジェクトX』ではないかと……。


「ドイツで鉄道産業を興すぞ!!」を
「黒部ダムを作るぞ!!」とか「新幹線
を走らせるぞ!!」に置き換えると、ま
さに『プロジェクトX』です。


そして、何と、私と同意見のブログの記
事を見つけました。
演劇ジャーナリストの中本千晶氏の「プ
ロジェクトX」的に楽しむのがおすすめ、
宝塚歌劇雪組公演『Lilac(ライラック)
の夢路』
です。


冒頭部分を紹介すると、
==================
 現在、東京宝塚劇場にて上演中の雪組
公演『Lilac(ライラック)の夢路』は何
とも不思議な作品だ。
 19世紀前半のドイツにおける鉄道建
設の始まりを描いた物語である。ドロイ
ゼン家の長男ハインドリヒは「ドイツの
人々のために鉄道が必要」との信念のも
とに奔走する。そんな彼の周りには、資
金調達、行政、メディア、そして技術者
といった、その成功を左右する力を持っ
た人々が集まってくる。降りかかる問題
は解決されていき、鉄道事業の実現に向
けて一歩また一歩と近づいていく。
 いつものタカラヅカのつもりで観てい
ると、誰に感情移入していいか分からず
面食らう。話の進みも速いので、ついて
いくのも大変だ。そこで気持ちを切り替
え、ドキュメンタリーを見るときの構え
で観始めると、テンポ感の良さが心地良
くなってきた。成功体験を描いたドキュ
メンタリーだと思えば、予定調和的な大
団円展開も納得である。自分も一緒にな
って夢の実現を追体験できるのが、むし
ろ心地良い。

 つまり『ライラックの夢路』は「プロ
ジェクトX」もしくは「情熱大陸」だと
思って観たら、なかなか面白いのである。
(中略)
 作品の多様さはタカラヅカの醍醐味で
もある。出演者たちの健闘に拍手を送り
ながら、この異色作を楽しみたいと思う。
==================
これが『ライラックの夢路』の正当な評
価だと思います。

なお、この作品にも、一応、恋愛要素は
あります。

長男のハインドリヒとエリーゼ、そして、
次男のフランツとディートリンデです。

どうも、ハインドリヒがエリーゼに、い
きなり「好きだ」というのがお気に召さ
ないようですが、いきなり言っている訳
ではありません。

鉄道事業を起こすことを目指すハインド
リヒと当時のドイツでは女性では難しい
ヴァイオリニストを目指すエリーゼとは、
夢を叶えるべく困難に立ち向かっていく
という共通点があります。

エリーゼの夢の方は、男性社会の厚い壁
にぶつかって、破れてしまいますが、次
は、父親の鋳鉄を使ったアクセサリー作
りへと目指す夢を変えます。(これは、
仕方がないでしょう。何といってもなれ
ないものはなれないのです。)それに、
ハインドリヒがアドバイスを与えてくれ
ます。

一方で、エリーゼは、ハインドリヒを演
奏会に連れて行きます。そこで、ハイン
ドリヒは多くの人の手によって、演奏会
という一つのものを創り上げるのを目に
します。鉄道事業も同じだと思うのです。

そして、二人は、お互いの誇りを持って
生きようとする姿に共感し、次第に惹か
れあっていきます。(作品解説にもそう
書いてあります)

ね、突然じゃないでしょう?

こちらの方がメインではないかと思うの
が、次男のフランツとディートリンデの
こじらせ恋愛。


「自尊心が高すぎると愚かなプライドで
しかない」とフランツに指摘されて、別
れを告げられてしまいます。

そのフランツの愛を取り戻すべく、エリ
ーゼのペンダントを買い取って、鉄道会
社設立に寄与します。

最後に、ハインドリヒが「お金が少し足
りない」というのは、事業そのもののお
金ではなくて、株式会社にしたので、出
資金が足りない、ということなのでしょ
う。

それが、ディートリンデがエリーゼのペ
ンダントを買い取ることによって、エリ
ーゼが株主になり、不足していた出資金
が補充されたという事ではないかと思い
ます。

何となく、パズルのピースを上手く組み
合わせて、ラストに持っていったという
作品に思われます。

それが、見方によっては、都合よくいき
すぎに見えるのでしょう。

エピソード詰め込み過ぎで、歌の場面が
(夢人は結構登場するのですが、他の人
の歌の場面が)短いのとせっかくの大劇
場公演でもっと群舞の場面があっても良
かったのではないかとか、不満な点は多
々ありますが、「これぞ宝塚」という作
品ばかりでは、進歩がないと思うのです
が……。