妻が宝塚ファンで……。

ミュージカル観劇や日々の時事問題などについて綴ります。

和希そらさん主演の雪組公演『双曲線上のカルテ』を観劇しました。

今晩は、壽々(じゅじゅ)です。


昨日は、和希そらさん主演の雪組公演
『双曲線上のカルテ』を観劇に、大阪は
シアター・ドラマシティまで遠征してき
ました。


まだ、夏休みなんですね。
新幹線には、家族連れが結構いました。


まずは、公演プログラムからストーリー
です。
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 イタリアのナポリ近郊にある個人病院、
マルチーノ・メディカル・ホスピタルに
勤務するフェルナンド・デ・ロッシ(和
希そらさん)は、外科医として優れた腕
前を持ち、かつては大学病院で将来を嘱
望されていた。その彼が約束されたエリ
ート・コースを捨て、なぜ民間の個人病
院で生きる道を選んだのかーその経緯は
謎に包まれていた。
 今も外科医として第一線で活躍し、患
者からの信頼も篤いフェルナンドだが、
夜勤中の飲酒行為や女性との火遊びを繰
り返す姿が問題視されていた。特に、医
師としての理想に燃えるランベルト・ヴ
ァレンティーノ(眞ノ宮るいさん)は彼
に反発し、何かにつけて衝突していた。
一方、院長の愛娘で秘書を務めるクラリ
ーチェ・マルチーノ(野々花ひまりさん)
は、フェルナンドの良き理解者として、
批判的な同僚たちから彼を守っていた。
そして、危険な男と知りつつも彼の魅力
に心を奪われていく……。
 新人看護師のモニカ・アッカルド(華
純沙那さん)もまた数少ないフェルナン
ドの理解者の一人だった。はじめは彼の
奔放な言動に戸惑っていたものの、共に
仕事をするうちに恋心を抱くようになっ
ていく。そんなある日、連日の疲労から
手術室で失神しかけたモニカはフェルナ
ンドに助け起こされる。次の瞬間、モニ
カの動揺をよそに、フェルナンドは彼女
を抱き寄せた。モニカは突然の抱擁に驚
きつつも、自分しか知り得ないフェルナ
ンドの温かさに幸せを見出そうと彼に身
を委ねるのだった。だが、この時はまだ
フェルナンドの突然の行動が、人知れず
抱える苦しみから来るものだとは知る由
もなかったー。
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(以下、ネタバレあります)
縣千さんの休演は残念でしたが、生真面
目で堅物のランベルト役には、眞ノ宮る
いさんが良く似合っていました。
これが、縣千さんになるとどうなるんだ
ろう、と想像してみましたが、ちっと、
大分、雰囲気が変わりそうです。


フェルナンドは、多発性骨髄腫という難
病に冒されていました(書いちゃいまし
た)。多発性骨髄腫は、血液細胞の一つ
である「形質細胞」ががん化することで
起こるがんであると説明されています。
今でも、生存率の低い病気です。


しかも、フェルナンドが気が付いた時に
は、かなり、進行した状態。


だから、優れた外科医としての手腕を持
ちながら、民間の個人病院で勤め、夜勤
中に酒場に行ったり、女性たちと遊んだ
りしているのです。


ただ、患者と向き合うフェルナンドの姿
勢は、真剣そのものです。


『蒼穹の昴』の順桂のように、心に暗い
陰を持ちながらも、情熱と優しさも併せ
持つこのフェルナンドという役が和希そ
らさんに良く似合います。


曲もストーリーに合った曲で、和希そら
さんの感情のこもった歌声の魅力を十分
に引き出しています。


フィナーレで和希そらさんが裸足で踊る
ソロダンスは、圧巻です。


やたらと患者が出て来るのは、病院が舞
台で医師が主役ですから、仕方がないの
ですが、よくも、皆、病気になるものだ
とあきれてしまうほどです。


そのように、患者が次々と現れても、そ
れぞれの患者に寄り添おうをするフェル
ナンドの姿は印象的です。
例え、患者がマフィアであっても。


第1幕では、胃がん末期状態のピザ職人
チェーザレ・サルディ(桜路薫さん)の
物語が中心に描かれます。


胃がんであることを患者に告知すべきだ
とするランベルトに対して、フェルナン
ドは、本人はそれを望んではいないと反
論します。そして、チェザーレとその妻
ボーナ・サルディ(杏野このみ)には、
胃潰瘍だと告げています。


フェルナンドは、チェザーレの希望する
ままに胃潰瘍の手術をします。


一度は、回復したようにみえたチェザー
レの症状は悪化し、遂に、亡くなります。


夫の死後、初めて、夫の病気の真相を知
った妻のボーナは、フェルナンドをなじ
りますが、チェザーレは家族に遺書を残
していました。


そこには、死を悟ったチェザーレの家族
への感謝の言葉が綴られていました。
この場面、ちょっと、感動的です。


何日か経った後、再び、病院を訪れたボ
ーナは、孫から、こんなことを聞かされ
ます。


天獄の入り口では二つの質問がされると
いうこと。
それは、「お前は自分自身の人生に喜び
を見出せたか?」と「お前は他人の人生
に喜びを与えたか?」で、おじいちゃん
は、ちゃんと、答えられただろうかと心
配します。


この二つの言葉は、物語の終盤にも出て
きます。
他の方のブログを読むと初演にも出てき
たらしいので、石田昌也氏のこだわりが
あるのでしょう。


「どう生きるか」「どう生死にかかわる
か」がこの作品のテーマですが(「歌劇」
8月号対談・インタビューより)、この
物語の医療現場で起きる様々な出来事は、
そのことを深く考えさせてくれます。


さて、誰にも病気のことを話せないが故
に、深い孤独感と絶望感を抱いていたフ
ェルナンドの前に現れたのが、新人看護
師のモニカでした。


明るく純真で、疑うことを知らないモニ
カにフェルナンドの心は安らぎを覚え、
ふとした拍子にモニカを抱きしめてしま
います。


そして、フェルナンドは純真な心を持つ
モニカに好意を持ち、モニカも患者に真
摯に向き合うフェルナンドに好意を持ち、
二人は恋に落ちます。


しかし、それは、決して交わることのな
い双曲線(ちょっとだけ、交わったのか
?)のような恋。二人は、再び離れてい
く運命にあったのです。


最後は、ちょっと意外な終わり方をしま
すが、その前のフェルナンドのモニカに
話すセリフに伏線があります。


どっちにしても、ハッピーエンドには、
なりようがないのですが、案外、観た後
の感じは、重苦しくはないです。
(泣いている人はいましたが)


最後の場面の一面のヒマワリがとても綺
麗で、ちょっと、内容はネタバレになる
ので書けませんが、ちょっといい場面で
す。


華純沙那さんが、純真だけれど芯の強い
モニカを演じて好演。歌もなかなか。
今後の活躍が期待されますが、106期生で
上に105期生の音彩唯さんがいるので、さ
てどうなるか。


モニカと同じく、フェルナンドに好意を
持つクラリーチェ役を演じる野々花ひま
りさんは、もう、雪組別格娘役的存在に
なって、歌と演技で存在感があります。


前回の『ライラックの夢路』に引き続い
ての拗らせ役です。
ただ、この人も病気(しかも骨髄移植の
必要な難病)になってしまい、フレデリ
ックとある人物の助けによって助かりま
す。


舞台が病院で、主役が余命僅かな医師で
作品のテーマが「どう生きるか」「どう
生死にかかわるか」と聞くと、なんかシ
リアスで重そうな感じを受けますが、演
出がいいのだと思いますが、見応えのあ
る作品になっています。